本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(351)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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金融界のブラックホール

金融業に携わって、今年で46年目を迎えるが、この期間を振り返りながら、現在の「金利上昇」を考えた時、痛切に感じることは、「金融界のブラックホールが形成され、そして、蒸発している展開」のことである。つまり、この間において、私自身が最も注目したのは、「金融界の大量破壊兵器」と言われた「デリバティブ(金融派生商品)」であり、実際のところ、「金融のシステム」や「マネーの大膨張」を研究する上で、「デリバティブが、どのようにして成長していったのか?」は、決して、避けて通れない大問題だったのである。

しかも、過去20年あまりの期間は、「人類史上、稀に見るほどの世界的な超低金利状態」が形成された状況でもあったが、この事実を、現在の「量子力学」などが教える「ブラックホールの形成と蒸発」に当てはめると、「ぴったり当てはまるのではないか?」とも感じられるのである。つまり、「2008年前後のGFC(金融大混乱)」までが、「金融界のブラックホールが形成された期間」であり、その後の「量的緩和(QE)」については、「ブラックホールが蒸発する過程」だった可能性のことである。

別の言葉では、「金融の逆ピラミッド」が形成される過程で、「デリバティブの大膨張が大量のデジタル通貨を産み出した状況」だったものの、その後、「金融のメルトダウンが進展する過程で、さまざまなバブルが発生した展開」だったことも見て取れるのである。つまり、大量に創られた「デジタル通貨」が、「金利」を押しつぶした状況のことでもあるが、この結果として生み出された世界が、いわゆる「金融界のブラックホール」、すなわち、「金融面における仮想現実の世界」だったものと思われるのである。

より詳しく申し上げると、「世界的なコンピューターネットワークの形成」と「DX革命の進展」により、「人類は、未来の社会を垣間見ることができたのではないか?」と感じている。しかし、一方で、現在の問題点としては、「大膨張したマネー経済が産み出した『金融界のブラックホール』を、どのように処理するのか?」が指摘できるのである。別の言葉では、「11次元にまで発展した自然科学を、どのようにして、三次元の段階にとどまっている社会科学に応用するのか?」ということである。

そして、この時に参考になるのが、「仏教」などの「東洋の哲学」と「ミクロの物理学」との融合だと思われるが、実際には、「人間社会」と「大自然界」、そして、「神の世界」と思われる「法界(ほっかい)」とが、「どのように関係し、影響し合っているのか?」を考え、理解することである。(2022.2.16)

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糸とボタンのランダムグラフ

「文明法則史学の800年サイクル」や「東洋の60年サイクル」などを研究すると、「サイクルの前半と後半の劇的な違い」に驚かざるを得ないが、具体例としては、「実体経済」と「マネー経済」との違いが挙げられるものと考えている。つまり、「企業の売り上げとコストの関係」などと同様に、前半の、「実体経済の成長」や「売り上げの増加」であり、また、後半の、「マネー経済の成長」や「コストの増加」のことである。

より具体的には、「フロー」の性質を持つ「実体経済」と、「ストック」の性質を持つ「マネー経済」の違いが指摘できるわけだが、実際には、「意識」と「行動」との「タイムラグ(時間的なズレ)」が関係しているようにも感じている。そして、この点に関して、最近、たいへん興味深い理論に出会ったが、それは、「糸とボタンのランダムグラフ」というものであり、このことは、「自己組織化」と「エントロピー(無秩序化)」に関して、「どのようなメカニズムで発生するのか?」を説明したものである。

つまり、「数多く存在するボタンを、糸で結びつける実験」を行った場合に、「半数を超えた場合に、魔法が発生する事実」であり、実際には、「ほとんどがクラスター化する」という状況のことである。別の言葉では、「社会などの組織化」が終了し、その後の半分は、「エントロピーの法則」のとおりに、「複雑化」や「形骸化」などにより、「無秩序」の方向に向かう展開のことである。

そして、この点を「人類の歴史」に当てはめると、「西暦1200年から2000年までの西洋の時代」において、中間点の「西暦1600年前後」に、「人々の意識が『時は金なり』という思想に染まり始めた状況」だったことも見て取れるのである。しかも、この点に、私が考案した「心の座標軸」を合わせて考えると、現在の状況としては、「人々の意識が、すでに、目に見えないものに向かいながら、一方で、行動の面において、自分のためだけに向かっている状況」とも言えるのである。

このように、「人々の価値観」は、「心の方向性」で決まり、現在は、「1600年前と同様の状態」になっているものと考えているが、この点ついては、スチュアート・カウフマン氏の著書である「自己組織化と進化の論理」により、詳しい説明が可能なものと感じている。しかも、「経済学や心理学などの社会科学」に関して、大幅な次元上昇が可能な状況のようにも感じているが、実際には、「DXバブル」の時と同様に、「この点を理解した人々が、今後の成功者になるのではないか?」とも感じている。(2022.2.17)

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ニュートンからアインシュタイン以降の人々へ

「物理学」や「分子生物学」などの「自然科学」においては、現在、「11次元の世界」にまで研究が進んでいると言われているが、この点に関して、大きな役割を果たしたのが、「アインシュタイン以降の人々」だったようにも感じている。つまり、「マクロの物理学」においては、「ケプラーからニュートンへ」という言葉のとおりに、「天体の運行などを参考にしながら、重力の発見がなされた状況」だったことも見て取れるが、その後の展開としては、「アインシュタイン博士などの貢献により、5次元以降の段階への道が開かれ、実際の研究が行われている状況」となっているのである。

より具体的に申し上げると、「ミクロの物理学」に関する研究が、急速に進展したわけだが、このことは、「目に見える世界」から「目に見えない世界」へ、人々の興味と関心が移行している状況のようにも感じている。つまり、「ニュートン力学」では、「四次元の物理学」、すなわち、「時間の経過とともに、目に見える物質が、どのような変化を見せるのか?」が検証されたわけだが、その後の「量子力学」や「分子生物学」などでは、「目に見えない世界で、どのような力が働き、どのような変化が発生しているのか?」が研究され始めたものと考えられるのである。

別の言葉では、「仏教」が教える「法界(ほっかい)」と「ミクロの物理学まで含んだ大自然界」との関係性が、新たに研究され始めたものと思われるが、残念な点は、「自然科学」という「大自然界の研究」において、すでに、「11次元への次元上昇」が発生していながらも、一方で、「社会科学」という「人間社会の研究」においては、依然として、「3次元の世界分析」、すなわち、「切り取られた現状の世界で、どのようなことが起こっているのか?」を研究する段階にとどまっている状況とも言えるである。

そして、結果としては、「理論の無間地獄」とでも呼ぶべき状況、すなわち、「実体経済だけが議論され、オカネとモノとの関係性が無視された状況」となっているのである。  より具体的には、「正しい分析ができず、訳が分からない状況」のことでもあるが、すでに始まった「世界的な大インフレ」については、今後、「経済学を始めとした社会科学に対して、次元的な上昇を迫る効果」が存在するものと思われるのである。

つまり、「役に立たない理論の研究者」が淘汰され、「新たな現実の実践者」が姿を現し始める状況であり、実際には、「大自然と共生可能な経済学」、すなわち、「人類が生き延びるためには、どのような学問が必要とされているのか?」を考えることでもあるようだ。(2022.2.22)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11885:220326〕