本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(357)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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人間社会で最も大切なもの

今回の「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻」は、「人間社会で、最も大切なものは何か?」を考えるための、キッカケとなる事件の一つだったものと思われるが、実際には、「孔子」が教える「軍事力よりも大切なものは食料であり、また、食料より大切なものは信である」ということである。つまり、「人間社会」と「大自然界」の区別、すなわち、「人間」と「動物」の違いは、「他人を信じること」にあるものと考えられるが、今回は、「ロシア人とウクライナ人とが殺し合いを行った状況」だったのである。

別の言葉では、大量に存在する「兵器」を使用して、「同じ民族同士の大量虐殺」が発生したわけだが、この時に重要な点は、「命が失われたら、食料が役に立たなくなる事態」とも言えるのである。つまり、平和な時代には、「命の大切さ」が理解されず、「食料の方が、より重要だ」と考えがちになるものの、実際の戦争の場合には、「食料よりも、他人を信じる重要性」を認識せざるを得なくなる状況のことである。

このように、現在では、「世界中の人々が、信の重要性を認識し始めた状況」とも思われるが、この点に関して重要な事実は、「お金は信用を形にしたものだ」ということである。つまり、過去800年間の「西洋の物質文明」において、「マネーの大膨張」が発生したわけだが、現在では、根本の「信用」そのものが、完全崩壊の状態を迎え、すでに、本格的な大インフレの時期が始まったものと考えられるのである。

そのために、これから必要なことは、「文明の大転換期に、どのようなことが起こるのか?」を理解することであり、実際には、「マネーの遠心力」、すなわち、「マネーの大膨張に伴う文明社会の発展」を正確に分析することだと感じている。つまり、今後は、「マネーの実質的な大収縮」により、既存の常識が完全崩壊するものと考えているが、具体的には、「規模の経済学」などが反転期を迎える可能性である。

より詳しく申し上げると、「マネーの膨張期」には、「企業や国家の規模が大きくなる可能性」、すなわち、「市場経済化」が発生するものの、今後は、「人々の求めるものが物質から精神性へと変化する可能性」があり、その結果として、「1600年前と同様に、宗教などの組織が拡大するのではないか?」とも想定されるのである。つまり、既存の社会体制が崩壊し、大混乱に見舞われた人々は、「信頼できる人々と、小さな共同体を結成する可能性」が予想されるが、実際には、このことが、1600年前と同様の「東洋の精神社会」の始まりであり、また、その後、約800年間、継続する状況も想定されるのである。(2022.4.4)

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反グローバル化がもたらすコスト上昇

現在、世界的に発生している現象は、「反グローバル化がもたらすコスト上昇」だと考えているが、実際には、「1980年代初頭」から始まった「実体経済とマネー経済のグローバル化」に関して、急速な「巻き戻し」が起こっている状況のことである。つまり、最初に発生した「実体経済のグローバル化」については、「中国などの低賃金」を見込んで、「工場の移転」などが実施された状況だったことも見て取れるのである。

また、後半の「マネー経済のグローバル化」については、かつての共産諸国が資本主義化したことにより、世界的な「マネーの大膨張」が発生し、その結果として、「約20年にわたり、超低金利状態が形成された状況」のことである。別の言葉では、「デリバティブの大膨張」と「世界的な量的緩和(QE)」により、「世界の金融システムが、デジタル通貨によって独占され、資金面における調達コストの低下が発生した状況」である。

しかし、これから予想される現象は、最初に、「金利やインフレ率の上昇」という「マネー経済の反グローバル化」であり、その後、いまだに「約6京円」もの規模を持つ「デリバティブのバブル」が崩壊する展開である。つまり、「債券価格」の低下により、「デリバティブの保有が難しくなる状況」のことだが、実際には、「デリバティブを保有しているメガバンクが、今後、巨額の損失に見舞われる可能性」である。

そして、その後に予想される現象は、「インフレ率の急騰」により、「実体経済の反グローバル化」が顕著になる可能性でもあるが、実際には、「売り上げよりもコストの増加率が大きくなる展開」のことである。つまり、これからの投資において重要なことは、「どのような種類のマネーが膨張するのか?」に加えて、「どのような商品に資金が流れるのか?」の判断とも考えられるのである。

より詳しく申し上げると、「紙幣の大量発行」の結果として、「換物運動」が、急速に促進する状況のことでもあるが、この時の注目点は、「どのような企業の売り上げやコストが増えるのか?」ということである。つまり、「1923年のドイツ」や「1991年のソ連」などの、過去の「ハイパーインフレ」において見られたことは、最後に発生する「急激な価格上昇」の時に、通常のビジネスが難しくなる状況だったのである。別の言葉では、「20%以上のインフレ」に見舞われた状況下で発生する現象は、「売り上げの急減」と「コストの急増」であり、その結果として、「ほとんどの企業が、大幅な赤字に陥った」という状況のことである。(2022.4.5)

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円安の真因

現在の「市場の関心事」として、「急激な円安」が挙げられるようだが、この要因としては、やはり、「民間金融機関の機能不全状態」が指摘できるものと考えている。つまり、「信用乗数」という「中央銀行が出したお金が、何倍にまで、金融市場で増幅されたのか?」を表す数字が、現在では、「1180兆円(M2)÷685兆円(ベースマネー)=約1.72倍」にまで減少しているのである。

より詳しく申し上げると、ピーク時の1990年前後には、「約13倍」という状況だったものが、その後、徐々に減少していき、現在では、「中央銀行によるベースマネーが約685兆円」、そして、「民間金融機関による信用創造(マネーの創造)が約495兆円(1180兆円-685兆円)」という状況となっているのである。つまり、「市場に出回る資金」に関して、「多くの部分が、日銀の当座預金に吸い上げられて、国債の買い付けに回っている状況」であることも見て取れるのである。

別の言葉では、「日本の失われた30年」の根本原因として、基本的に、「民間部門に、資金が回っていない事実」が挙げられるが、実際のところ、「1000兆円の個人預金に、3%の金利を付けただけで、約30兆円もの資金が市中に出回る状況」が考えられるのである。しかし、実際には、「日本国家財政の破綻」を防ぐために、「超低金利状態」が継続された結果として、過去30年間の「日本の金融政策」の目的としては、「個人の預金を利用した政府の延命政策」だったものと理解できるのである。

このように、現在の「日本の国家体力」を図るバロメーターである「金利」と「為替」については、「金利」を抑えようとする努力の結果として、「信用乗数の低下」が発生している状況となっているのである。つまり、「民間部門の機能不全状態」が加速し、その結果として、「日本国家の信用」そのものが低下するとともに、「円安」が発生し始めているわけだが、今後の展開としては、「更なる円安の加速状態」も想定されるのである。

より具体的に申し上げると、「円安による輸入物価の上昇」が「金利上昇」に繋がり、その結果として、「日銀」や「日本の国家財政」に関して、「破綻の危機」が発生する可能性である。そして、このことは、「1991年のソ連」と同じような状態でもあるが、今回の問題点は、やはり、「金融界の白血病」という「紙幣がコンピューターネットワークを流れることができない状態」であり、その結果として、「現在のデジタル通貨そのものが、機能不全に陥る可能性」である。(2022.4.7)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion12007:220507〕