本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(362)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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日銀の混迷

最近、「日銀」に関する記事が、数多く掲載される状況となってきたが、この原因としては、「円安やインフレ率の上昇などにより、日銀の政策が疑問視され始めた状況」が指摘できるようである。あるいは、「日銀は政府の子会社である」という「安倍元首相の発言」のとおりに、「日銀の独立性が、完全に失われたことへの危機感」も存在するようだが、現時点で最も注目すべき記事は、「日銀の内田理事」による「長期金利の許容変動幅を引き上げることは、事実上の利上げである」という発言だと考えている。

つまり、現在の「日銀の混迷」については、すでに、「問題の先送り」や「時間稼ぎ」が可能な状況ではなく、間もなく、「国債の買い手不在」という、「1991年のソ連」と同様の事態に見舞われることを示唆した発言のようにも感じられるのである。別の言葉では、「短期金利は、ある程度、コントロールできても、長期金利はコントロール不能である」という事態が、間もなく、明らかになる可能性のことである。

より詳しく申し上げると、現在の「日銀のバランスシート」については、「総額が約738兆円」、そして、「国債の保有残高が約533兆円」であり、また、「国債買い付けの原資であり、しかも、国民からの借金である当座預金が、約562兆円」という状況となっているのである。そして、この点に関する、最も大きな問題点は、以前から指摘しているように、「短期借り、長期貸し」、すなわち、「短期資金を調達して、長期の投資を実践している状況」とも言えるのである。

つまり、「金融機関の破綻」、あるいは、「金融システムの崩壊」に関して、最も危惧すべき点は、「資金繰りの問題」であり、実際には、「金利が上昇した時に、どれほどの資金負担が存在し、また、どれほどの投資収入が得られるのか?」を考えることである。そして、この観点から、今後の「日銀の財政状態」を考えると、「内田理事の発言」のとおりに、「0.25%という長期金利の許容変動幅」を超えると、「日銀の資金繰り」に問題が生じ、「日銀が、唯一の国債の買い手だったような状況」が継続不能になるものと想定されるのである。

このように、現在の「日銀に関する記事」については、「日本国民」のみならず、「世界中の人々への警告」だと考えているが、実際のところ、「20年ほど前から始まった世界的な量的緩和と言われる状態」については、ほとんどの場合において、「日銀が、先導的な役割を担っていた」という状況であり、今回は、「紙幣の増刷」において、その役目を果たすことになるものと感じている。(2022.5.11)

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仮想通貨の取り付け騒ぎ

5月12日に発生した「仮想通貨の大暴落」、具体的には、「約4兆円もの時価総額を保有する韓国の仮想通貨ルナが、一夜にして、ほぼ紙屑の状態に陥った」という事件は、これから予想される「本格的な金融大混乱」に関する予兆的な事件であり、今後も、「デジタル通貨に関する連鎖倒産」が多発するものと感じている。そして、この理由としては、「デリバティブの大膨張」によって創り出された「大量のデジタル通貨」が、実質的に枯渇した状況、すなわち、「金融の逆ピラミッドにおけるメルトダウンがもたらした、さまざまなバブル相場の発生」により、世界の資金が使い果たされた状況が指摘できるようである。

より詳しく申し上げると、いまだに、「6京円以上もの残高」が存在する「デリバティブ」を保護するために、今までは、「中央銀行が国民の預金などを借り入れ、国債などの資産を買いつけることにより、超低金利状態が作り出されてきた状況」だったのである。しかし、現在では、前述の「デジタル通貨の枯渇」により、「中央銀行による新たな資金の創出」、具体的には、「紙幣の増刷」が求め始められているものと想定されるのである。

別の言葉では、「QE(量的緩和)」が終了し、「QT(量的引き締め)」が始まったと言われているが、実際には、「金融引き締めによる大恐慌」か、それとも、「紙幣増刷による大インフレ」かの選択を迫られている状況とも言えるのである。つまり、「金利やインフレ率の上昇」により、現在では、「大量に創られたデジタル通貨が、金融資産から実物資産へと移行を始めた状況」となっているが、この事実に関する問題点としては、「デリバティブのバブルを、どのようにして解消するのか?」が指摘できるのである。

具体的には、「デリバティブのバブル崩壊を止めようとする思惑」が、結果として、「デジタル通貨の枯渇」と「紙幣大増刷の需要」を産み出したものの、現在の「FRB」は、「1929年の大恐慌」と同様に、「資金流通量の急減」を放置した状況となっているのである。そして、この政策が導く結論は、「金融機関の大量倒産」であり、今回の「仮想通貨の取り付け騒ぎ」は、その始まりを知らせる事件だったものと考えられるのである。

そのために、これから必要とされることは、「中央銀行が、実際に、どのような行動をとるのか?」を注視することであり、具体的には、「デリバティブのバブル崩壊が、どれほどの混乱をメガバンクにもたらすのか?」、あるいは、「多くの金融機関が資金繰りに窮し始めた時に、どれほどの紙幣大増刷を実施するのか?」を見守ることであり、この点については、今後の数か月間で、はっきりするものと考えている。(2022.5.14)

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ゼロコロナ政策の問題点

3年目を迎えた「世界的なコロナ・ショック」は、現在、大きな転換期を迎えているものと思われるが、この理由としては、先進各国の多くが、いわゆる「ウイズコロナ政策」を実施し始めたために、間もなく、「集団免疫」が獲得されるものと思われるからである。つまり、「ワクチンの普及」と「実際の感染」の合計数が増えることにより、今回の「コロナウイルス」が、通常のインフルエンザのような状態になる可能性のことである。

ところが、この点に関する問題点は、ご存じのとおりに、「中国のゼロコロナ政策」であり、この理由としては、「14億の人民のほとんどが、いまだに、免疫を獲得していない状況」が指摘できるものと考えている。つまり、「ウイルスからの避難」という、当初、成功した方法を固持しているために、「今後、どのような方法で免疫を獲得するのか?」が、きわめて曖昧な状況となっているのである。

より具体的には、「このまま、ロックダウンの状態を維持するのか?」、それとも、「西側諸国と同様に、ウイズコロナ政策に変更するのか?」ということだが、この点に関する問題は、やはり、「習近平氏による独裁国家体制」だと感じている。つまり、現在の「ロシア」と同様に、「中国国民」は、「自由な行動が制限されるとともに、政府に対して逆らえないような状況」となっているのである。

別の言葉では、今後の世界情勢は、かつての「東西冷戦体制」が復活したような状態になるものと思われるが、このような状況下で予想される展開は、「ウイズコロナの西側諸国で、活発な経済活動が繰り広げられる可能性」であり、また、「ロシアや中国などの国々で、人民の不満が高まる可能性」とも想定されるのである。つまり、「権力の暴走」に対して、「国民の反発が高まる状況」のことであり、しかも、この時の注意点は、「目に見える暴走」だけではなく、「目に見えない暴走」だと考えている。

具体的には、「新型インフル」から「新型インフレ」への変化のことでもあるが、今までは、「コロナ・ショックによる実体経済への収縮効果」が大きかったものの、今後は、「デリバティブのバブル崩壊」、すなわち、「資金面における権力の暴走」が限界点に達した結果として、「新たなタイプのインフレ」が発生するものと思われるのである。つまり、「マネー経済の実質的な収縮効果」のことでもあるが、この時に発生する現象は、古典的なパターンである「紙幣の増刷による、実質的な通貨価値の激減」であり、また、「国家と国民との力関係の変化」だと考えている。(2022.5.15)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion12111:220611〕