本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(371)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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新たな資本主義を巡る議論

現在、「新たな資本主義」を巡る議論が活発に行われているが、この点に関して驚かされたことは、「株主と従業員のどちらを重要視すべきか?」という論争だった。つまり、「株式価値の最大化のためには、株主と従業員に、どのような利益配分を行うべきか?」という議論が、いまだに行われているが、このことは、「40年ほど前のアメリカ」や「200年ほど前のヨーロッパ」を彷彿とさせるような状況とも思われるのである。

具体的には、「プロレタリアート(労働者)」と「ブルジョアジー(資本家)」との関係性が議論された状況、あるいは、「1980年代に、日本的経営が、アメリカで見直された状況」のことである。つまり、現在は、「三次元の経済学において、禅問答が繰り返されている状態」のようにも感じられるが、実際に必要なことは、「時間とともに、世界情勢が、どのように変化するのか?」を考慮する「四次元の経済学」とも言えるのである。

より詳しく申し上げると、「商品と貨幣が、過去200年間に、どのような変化を遂げたのか?」を分析することでもあるが、実際のところ、「商品」に関しては、「一次産品」から「二次産品」、そして、「三次産品から金融商品へ」という展開となっていることも見て取れるのである。そして、この時に、最も注目すべきポイントが、「商品の変化に伴う実体経済の成長」であり、また、「どのような貨幣が、それぞれの段階で、どれだけ創出されたのか?」を考えることとも言えるのである。

別の言葉では、「過去200年間に、商品のみならず、貨幣の価値と形態が、大きく変化した状況」であり、また、「シニョリッジ(貨幣発行益)が、銀行預金や紙幣、あるいは、デリバティブの創出時に大量発生した可能性」を理解することである。そして、これから必要なことは、「過去数百年間に、資本(お金)が、なぜ、主義(最も大切なもの)と理解されるようになったのか?」の分析であり、また、「文明法則史学」を研究しながら、「これから、世界中の人々が、どのような価値観を持つのか?」を探求することだと感じている。

つまり、「不毛な堂々巡りの議論」を排除して、「経済学を、より進化させる努力」の必要性でもあるが、この点について、危機感を覚えることは、「人類そのものが、地球環境の変化で存在を許されなくなる可能性」であり、また、「このような状況下で、依然として、領土や資産の奪い合いが実行されている状況」である。つまり、現在、必要とされることは「軍事費の増強」ではなく、「環境対策への支出」であり、結局は、このことを実行した国々が、今後の「世界のリーダー」になるものと思われるのである。(2022.7.12)

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13兆円の賠償命令

「東京地裁は、7月13日、東電の旧経営陣に13兆円余りの賠償を命じた」という報道がなされたが、この点については、「驚き」とともに「ある種の違和感」を覚えたというのが偽らざる感想だった。つまり、「四人の旧経営陣は、最高裁で同様の判決が出た場合に、どのようにして賠償金を支払うのか?」という疑問を持ったのだが、実際には、「被疑者の自己破産により、国家が賠償金を負担する可能性」が高いものと考えられるのである。

より詳しく申し上げると、「廃炉にかかる費用」や「被災者への損害賠償費用」、あるいは、「除染などの対策費用」などについては、「東電や国家の負担により、すでに支払われた状況」とも言えるのである。別の言葉では、「誰が、実質的な責任を負うのか?」という点について、「国家や東電は、名を取って実を捨てた状況」とも思われるが、この点に関する問題点は、「今後、国家と国民との関係性が、どのように変化するのか?」だと感じている。

つまり、「国家の態度」としては、「今回の事故は、四人の旧経営陣に責任があり、国家には問題がなかった」というような状況とも思われるが、この点から危惧されることは、「今後、日銀などに、大問題が発生した場合に、どのような事態が発生するのか?」ということである。具体的には、すでに報道された「日銀の債務超過に関する懸念」であり、また、「日本がハイパーインフレに見舞われる可能性」のことでもあるが、仮に、最悪の事態が発生したとすると、「その時に、どのような処置が取られ、また、だれが責任を負うのか?」が気に掛る状況とも言えるのである。

そして、この点について、「過去100年間に、30か国以上で発生したハイパーインフレ」を検証すると、ほとんどの場合において、「国民の負担で、今までの借金を棒引きにする手法」が取られてきたことが見て取れるのである。つまり、「ハイパーインフレに見舞われた後に、黒田日銀総裁に、数百兆円もの賠償金を命じたとしても、すでに、後の祭りの状態」となっていることが理解できるのである。

そのために、今後の注目点は、「国民が、いつ、現在の金融政策の危うさに気付き、自分の預金を実物資産に交換し始めるのか?」ということでもあるが、この点に関して、現在、気になる事実は、「ドイツ銀行やJPモルガンなどの株価が、急落を始めている状況」である。つまり、間もなく、私が想定する「デリバティブの時限爆弾が破裂する時期」が近づいており、「このことを察知した人々が、銀行株を売却しているのではないか?」とも感じられるのである。(2022.7.14)

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座して死を待つ世界の金融システム

7月15日と16日に開催された「20ヶ国財務大臣・中央銀行総裁会議」に関して、「BIS(国際決済銀行)」が提出したレポートを読むと、現在の「世界の金融システム」は、まさに、「座して死を待つ状態」のようにも感じられた次第である。つまり、このレポートでは、「マクロ金融安定化フレームワーク(MFSF)」という「新たな概念」を紹介しながら、「世界的な金融情勢の波乱に関連するリスクにどのように対処するか?」を述べているが、実際には、「禅問答」のような内容となっていることも見て取れるのである。

より詳しく申し上げると、「MFSFは、金融、財政、マクロプルーデンス政策と為替介入や資本フロー管理策を全体的な枠組みの中で組み合わせたものである」とのことだが、実際には、「概念」にすぎず、「実施」の面では、いろいろな問題があるとも説明されているのである。別の言葉では、今まで、「金融政策」や「財政策」、そして、「マクロプルーデンス政策」という「金融システムの安定化を目論む政策」などが、個別で実施されてきたものの、現在では、「フレームワーク」という、全体的な方法でしか対処できなくなったものと理解されているのである。

そのために、この点を、「四次元の経済学」で分析しながら、対応策を検討すると、実際には、「2008年前後のGFC(金融大危機)」から発生した「デリバティブのバブル崩壊」への対処法が問題だったことも理解できるようである。つまり、「欧米のメガバンクが保有する大量のデリバティブ」に関して、今までは、「中央銀行のバランスシートを増やして国債を買い付け、超低金利状態を維持する方法」が取られてきた状況だったのである。

別の言葉では、今まで、「国民の預金」など「ありとあらゆる資金を借りて、市場の価格コントロールを目論む方法」が可能だったが、現在は、「中央銀行のバランスシートを増大させる手段」に関して、「紙幣の増刷」という古典的な方法しか残されていない状況とも理解できるのである。つまり、「デジタル通貨」が「実体経済」に漏れ出した結果、「金利やインフレ率の上昇」という変化に見舞われたために、現在では、「口先介入」や「大本営的な発表」でしか、問題の発生を遅らせる手段が存在しない状況とも言えるのである。

そして、後は、「金融界の大量破壊兵器」と言われた「デリバティブ」が破裂する瞬間を、世界全体が、固唾を飲んで見守っている段階とも思われるが、この点に関して、最も注目すべき事実は、やはり、「1971年のニクソンショック以降に創られた大量のデジタル通貨が、今後、使えなくなる可能性」だと考えている。(2022.7.21)

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本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion12273:220812〕