本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(372)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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金融システムにおけるダムの崩壊現象

現在の「世界的な金融混乱」の理由としては、「大膨張した世界のマネーが、10分の1の規模である実体経済へ流れ込み始めた事実」が、主な原因として指摘できるが、より詳しい状況としては、「蟻の一穴」だった段階から「数多くの穴が開くとともに、ダムそのものが崩壊を始めている段階」への移行が考えられるようである。また、「金融ダムから漏れ出したマネーが引き起こすインフレの大津波」に関しては、現在、「第二波の引き潮状態」から「第三波の大津波発生」への移行状態とも考えている。

そして、これらの動きに関して、大きな役割を果たしている「原動力」としては、やはり、「500兆ドル(約7京円)もの金利デリバティブ」が挙げられるものと思われるが、実際の展開としては、「デリバティブ全体のバランスシート」において、「資産項目の金融商品」が急激な減少を始めながら、一方で、「負債項目のデジタル通貨」においては、いまだに、「先進各国の中央銀行が、金融ダムの崩壊を防ぐために、国債の買い付けや金利の上昇を実施している状況」とも言えるのである。

つまり、現在でも、「時間稼ぎ」や「問題の先送り」が目論まれている状況とも言えるが、すでに始まった「デリバティブのバブル崩壊」については、「時間の経過とともに、より一層、金融大混乱の被害が増す状況」とも考えられるのである。別の言葉では、「金融界の大量破壊兵器」と呼ばれた「デリバティブ」に関しては、「時間が経てば経つほど、バブル破裂の衝撃が大きくなる事態」だけではなく、「人類史上、未曽有の規模となる大混乱の発生」も想定されるのである。

そのために、これから必要なことは、「コロナ発生の期間と波動」を参考にしながら、「今後、どれほどの大インフレが、どれほどの期間、世界を襲うのか?」を考えることであり、実際には、「約3年間に第7波前後にまで及ぶ可能性」だと想定している。つまり、「2021年から世界を襲い始めたインフレの大津波」に関しては、基本的に、「2024年前後に7波で終了する可能性」を考えているが、この時の問題点は、やはり、「先進各国において、第二次世界大戦以降、本当のインフレが発生しなかった事実」だと感じている。

より具体的には、「財政破たんが引き起こす金融システムの崩壊」が、「本当のインフレ(通貨価値の下落)」の原因でもあるが、この点に関して、現在、必要なことは、今回の「世界的な金融大混乱」が、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制」という通貨制度の破たんが、根本的な原因である事実を理解することである。(2022.7.22)

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お金と宗教、そして、政治家

7月8日に発生した「安倍元首相暗殺事件」については、大きな「驚き」を覚える状況でもあったが、その後の報道を吟味すると、今回の事件は、「東西文明の大転換」に関して、大きな意味を持つ可能性も考えられるようである。つまり、「富を追求する西洋文明」の末期において、実際には、「宗教までもがお金儲けの手段として使われた」という状況でありながら、「国民は、実情を知らされていなかった状態」だったものと感じられるのである。

別の言葉では、「国民自体が、お金の魔力によって、魂を奪われたような状態」のことだが、実際には、「カール・ポランニー」が指摘する「悪魔のひき臼」により、「目の前に存在するマネー」だけを重要視したものと思われるのである。つまり、「精神的な豊さよりも、金銭面での豊かさを望む状態」であり、実際のところ、「昨今の犯罪を見ると、ほとんどが、金銭的な目的が指摘できる状況」となっているのである。

また、この点に関して、大きな役割を持つのが、「選挙」であり、実際には、「ほとんどの政治家が、大衆迎合的な政策しか提示できない状況」となっており、その結果として、「財政赤字の解消」が不可能な状態となっているのである。別の言葉では、「金融システムが崩壊するまで、国家の借金が膨らむ状況」のことでもあるが、この点に関して、今回、最も悩まされた事実は、やはり、「簿外取引でのデリバティブ大膨張」だった。

つまり、ほとんどの国民に知らされない状況で、一部のメガバンクが、「シニョリッジ(通貨発行益)」を享受し、また、「GAFAMなどの米国企業が、デジタル革命の恩恵を受けた」という展開のことである。別の言葉では、西洋文明が指向する「富の時代」の最終段階において、「未曽有の規模でマネーの大膨張が発生し、借金漬けの経済成長により、地球環境までもが脅かされる状態」のことである。

そのために、今後の注意点としては、「どれほどの反動が訪れるのか?」を熟慮することでもあるが、今回の襲撃事件については、「このことを考えるキッカケの出来事」だったようにも思われるのである。つまり、「東洋学」が教える「数奇な事件」に関して、実情としては、「人智が及ばず、将来的に、事件の意味が理解される出来事」とも理解できるのである。より具体的には、東洋文明が指向する「唯心論の時代」が始まる可能性でもあるが、この点については、「西暦400年から1200年に、東洋でどのような社会が形成されたのか?」、あるいは、「11次元にまで発展した自然科学が、今後、社会科学に対して、どのような影響を与えるのか?」が参考になるものと感じている。(2022.7.23)

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ジンバブエの金貨本位制

過去20年あまり、激烈なハイパーインフレに悩まされてきた「ジンバブエ」は、7月に「自国の法定金貨の発行」に踏み切ったが、具体的には、「ビクトリアの滝の画像を持つ1オンス、22カラットの金貨」を、国民に向けて発売するというものである。別の言葉では、「1933年までのアメリカ」などで採用されていた「金貨本位制」のような通貨制度を目指す動きのようにも思われるが、現時点では、ほとんどの人が懐疑的な認識を持っている状況とも言えるようである。

より詳しく申し上げると、「ジンバブエのハイパーインフレ」については、「2008年9月に、4、890億%のインフレ率を記録し、買い物客は食料品を買うのに紙幣が詰まったゴミ袋を持ち歩いていた」というような状況だったものが、その後、「自国通貨を放棄し、米ドルを採用した」という展開にまで発展したのである。つまり、かつては、「南部アフリカの優等国・穀物倉庫」と言われたほど裕福だった国が、「独裁者の出現などにより、わずかな期間で、どん底にまで落ちた典型例」とも言えるのである

そのために、私自身としては、今回の「通貨制度の変更」に関して、大きな期待を抱いている状況でもあるが、実際には、「安定した通貨の発行」により、「実体経済」と「マネーの流通量」との関係性が修復される可能性のことである。つまり、過去のハイパーインフレを検証すると、ほとんどの場合において、「過剰な規模の通貨発行」が、主な原因であることが見て取れるのである。

しかも、「1971年のニクソンショック」以降は、「世界全体で、マネー大膨張の歯止めが効かなくなり、デジタル通貨が世界中に拡散された状況」だったことも理解できるのである。つまり、「世界全体が、ジンバブエのようなハイパーインフレの状態に陥る可能性」をはらんでいる状況のことだが、この点については、時間の経過とともに、より多くの人々が認識を深めている状況のようにも感じている。

具体的には、「中央銀行が破綻すると、どのような事態が訪れるのか?」を、多くの人々が真剣に考え始めた可能性のことでもあるが、実際に、現在では、「先進各国でハイパーインフレが発生する可能性」が高まっている状況とも思われるのである。つまり、「1991年のソ連」と同様に、「国債の買い手消滅」という事態に見舞われると、ほぼ瞬間的に、「ハイパーインフレの発生」が想定されるが、この点については、現在、「待ったなしの状態」となっているようにも感じている。(2022.7.27)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion12303:220820〕