東西冷戦構造の復活
2月24日に発生した「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻」から、現在では、「6ケ月目」を迎えているが、現時点で必要なことは、「この出来事が、世界情勢に対して、どのような変化をもたらしたのか?」を冷静に分析することだと考えている。つまり、この事件をキッカケにして、かつての「東西冷戦構造」が復活した状況や、あるいは、「この事実が、今後、両陣営に対して、どのような影響を及ぼすのか?」を推測することである。
より詳しく申し上げると、「1991年のソ連崩壊」により誕生した「現在のロシア」に関しては、現在、「中国」や「北朝鮮」などと同様に、「軍事的な独裁国家」となっているものと理解できるのである。つまり、「プーチンや習近平、そして、金正恩などが武力で支配する、きわめて異例な独裁状態」のことでもあるが、この点に関する今後の注目点は、やはり、「独裁者と国民との関係性」だと考えている。
具体的には、「隷従状態にある国民が、今後、どのような行動を取るのか?」ということだが、この点に関して、最も注視すべき国は「中国」であり、その理由としては、「中国国内における民間金融機関の資金繰り」が指摘できるものと感じている。つまり、現在の中国に関しては、30年ほど前の日本と同様に、「不動産バブルの崩壊」と「不良債権の残高急増」に見舞われている状況とも想定されるのである。
そして、このような状況下で問題視すべき点は、「中国共産党が、中国国内の金融システムを守ることができるのか?」ということであり、また、この時に、大きな意味を持ってくるのが、現在の「東西冷戦構造の復活」とも言えるのである。具体的には、「世界の金融システム」に関して、「資金的な分断」が発生する可能性のことでもあるが、特に注目すべき点は、「完全主義を目指す中国が、中国のメガバンクを、どのようにして救うのか?」ということである。
このように、「1990年代後半の西側諸国で発生した金融混乱」については、「東側諸国における資本主義化の動き」や「デリバティブの大膨張」などが引き起こした「超低金利状態などにより、「問題の先送り」が可能な状況だったことも理解できるのである。しかし、現在の状況を鑑みると、「すべてが逆行現象を始めた状態」となっており、そのために、今後は、「金利やインフレ率の急騰」、そして、「国家や中央銀行の資金ひっ迫」が「東西の両陣営で発生する可能性」が高まっており、その結果として、「国民の不満が抑えきれなくなる状況」も想定されるのである。(2022.8.2)
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CBDCの限界と問題点
「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」については、現在、「新興国のみならず、欧米諸国でも導入にアクセルを踏み始めた」と報道されているが、この問題を考える上で重要なポイントは、「CBDCの限界と問題点」を理解することだと考えている。つまり、「お金の性質」や「マネー膨張のメカニズム」からは、「CBDCに数多くの問題点が存在し、実現が不能になる可能性」も想定されるからである。
具体的には、最初に、「商品と通貨の関係性」が指摘できるが、このことは、「商品の誕生と成長が通貨の膨張を生み出すものの、その後、膨張した通貨が、インフレの発生に繋がる展開」のことである。また、「1970年代のスタグフレーション」に関しては、「ニクソンショックで生み出されたマネーが実物商品に殺到した」という状況だったものの、その後は、「1980年代の初頭に誕生したデリバティブという金融商品が、商品の大膨張と通貨の吸収という役割を担った展開」だったことも理解できるのである。
より詳しく申し上げると、「2008年前後のGFC(金融大危機)」までは、「金融界のブラックホール」や「金融界の仮想現実」とでも呼ぶべき状況下で、「大量のデジタル通貨が、デリバティブという金融商品で運用され、実物資産へ流れることがなかった状態」だったのである。しかし、その後の「量的緩和(QE)」は、「中央銀行が民間銀行から資金を借り入れて、国債の大量買い付けを実施した状況」であり、また、現在では、「紙幣の増刷でしか、資金の借り入れが実施できなくなった状態」に追い込まれているのである。
つまり、「コンピューターネットワークの中を流れることができない紙幣の増刷」については、あっという間に、「金融界の白血病」を引き起こす可能性があるために、現在、「デジタル通貨の大量発行」が計画されているものと想定されるのである。しかし、この時の問題点は、「大量発行された資金を吸収する商品が存在しない場合、既存の商品価格が暴騰する可能性」である。実際には、「商品の売り上げ増」という「実体経済の成長」が存在しないときに発行された通貨については、「紙幣」であろうが、「中央銀行のデジタル通貨」であろうが、結局は、「既存の商品価格を急騰させる効果」が存在するのである。
そのために、現在、問われていることは、「100年余りの歴史しか存在しない世界各国の中央銀行」の「存在意義」であり、また、過去100年間にわたり、「お金の謎」が解けず、また、「人々の欲望」もコントロールできない状況下で、「お金の魔力に囚われた人類が、どのような行動を取ってきたのか?」の「検証」だと感じている。(2022.8.3)
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中国政府の公的資本注入
現在の「中国不動産バブルの崩壊」に関しては、「30年ほど前の日本と同様のメカニズムでありながら、はるかに速いスピードで進行している可能性」を考慮しており、また、この点に関する注目ポイントは、「今後、何時、どれほどの公的資本が注入されるのか?」だと考えている。つまり、「日本」の場合には、「1990年前後に弾けた土地と株式のバブル」に関して、「1996年8月に、6850億円の公的資金が、住宅金融専門会社に投入された」という状況だったことも見て取れるのである。
しかし、現在の中国では、「2020年から21年に投じた2100億元に続き、3200億元の公的資本が、中小銀行に投入された」とも報道されており、このことから想定される事実は、「現在の中国で、きわめて速いペースで不動産バブルが崩壊している可能性」とも言えるのである。しかも、今後は、「民間金融機関の不良債権が、中央銀行や国家に移行する事態」を想定しているが、この点に関する注目ポイントは、「中国が、1991年のソ連の二の舞となり、世界の金融システムを崩壊させる可能性」だと考えている。
より詳しく申し上げると、「1990年代の西洋諸国」では、「金融システム」を守るために、「政府」が公的資本を投入したわけだが、その後の展開としては、ご存じのとおりに、「資本注入に歯止めが効かなくなるとともに、デリバティブの大膨張に依存した状況」だったことも見て取れるのである。つまり、当時の状況としては、「日本」のみならず、「欧米各国」までもが、「財政破綻の危機」に見舞われたわけだが、この窮地を救ったのが、前述の「デリバティブの大膨張」だったことも理解できるのである。
より具体的に申し上げると、「1990年代の後半から2008年前後にかけて、デリバティブの想定元本の合計金額が10倍以上にまで膨らんだ状況」となり、この結果として、「先進各国は、超低金利状態を享受し、また、デジタル革命の恩恵を受けた状態」だったが、今後の問題点は、やはり、「反動の規模が格段に増加する可能性」であり、また、「東西冷戦構造が世界の金融システムに悪影響を与える可能性」だと考えている。
つまり、今回は、「中国の不動産バブル崩壊が、世界の金融システムを根幹から揺るがす可能性」があるものと思われるが、このような状況下で、「中国やロシアが目論んでいることは、世界の覇権を米国から移動させること」のようにも感じられるのである。別の言葉では、「14億人の国民が、一人の独裁者によって統治されるとともに、ロシアなどと共謀して、世界全体を攻撃する可能性」のことである。(2022.8.5)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion12347:220902〕