本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(392)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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景気悪化とハイパーインフレ

現在、「景気の悪化により、再び、デフレの時代が訪れる」というような意見が主流となりつつあるようだが、この点に関して、「過去100年間に、30か国以上で発生したハイパーインフレ」を検証すると、全く違った姿が見えてくるものと考えている。つまり、「1971年以前の西側諸国」と「1971年以降の中南米や東欧諸国」において、「景気の悪化」と「ハイパーインフレ」が同時に発生した状況のことである。

より詳しく申し上げると、「1971年以前の西側諸国」では、主に、「戦争などによる実体経済の落ち込み」が原因となり、「国家財政の破綻」が引き起こされたが、一方で、「1971年以降の中南米や登校諸国」では、「マネーの大膨張が引き起こした実体経済の変化」が、結果として、「税収の落ち込みと国家財政の破綻」を引き起こしたものと想定されるのである。つまり、どちらの場合にも、「通常の景気循環」ではなく、「金融危機が引き起こす国家の財政破綻」が「ハイパーインフレの主因」だった可能性のことである。

しかも、今回は、「過去20年余りのデリバティブとマネーの大膨張」により、「西側諸国の国家財政問題が、より一層、危機的な状況に陥る可能性」も想定されるが、実際には、「超低金利状態の維持により、国家の債務が異常な規模にまで膨らんだ状態」となっていることも見て取れるのである。別の言葉では、「インフレ率や金利の上昇により、債務の負担が急上昇し、資金繰りがひっ迫する可能性」のことだが、現在は、「誰が国債を買うのか?」までもが問題視されるような状況となっているのである。

つまり、「1991年のソ連で発生した事件」、すなわち、「国債価格の暴落とともに、あっという間に、国家の財政が破たんした展開」が、まさに、「世界全体で発生しつつある状況」のようにも感じられるのである。そのために、現時点で必要なことは、「景気が悪化すると、商品への重要が減少し、デフレの状態に陥る」というような意見を鵜吞みにするのではなく、反対に、「景気の悪化は税収減につながり、その結果として、資金繰りにひっ迫した国家が紙幣の増刷を始める可能性」を憂慮すべきだと考えている。

そして、そのような状況下で投資すべき対象としては、決して、「国債などの債券」ではなく、「衣食住」という「生活に必要な物資」にかかわる株式や、あるいは、「本来のマネー(お金)」とも言える「金や銀、そして、銅やプラチナなどの貴金属」だと考えているが、この点については、間もなく、「誰もがはっきりと認めざるを得ないような大事件」が発生するのではないか、と感じている。(2022.12.8)
 
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干支から見る2023年

2023年は「癸卯(みずのと う)」という暦になるが、「癸」については、「十干の最後」であり、また、「枯れた畦道」に象徴されるように、「世の中が、どのような状態になっているのか?」が、はっきり見えてくる状況を表わしている。そして、「十二支の四番目」に相当する「卯」については、「新たな門が開く状態」を表しているために、干支の二つを合わせて考えると、「多くの人々が、世界情勢を、はっきり理解する状況下で、全く新たな時代が始まる展開」が想定されるようである。

より詳しく申し上げると、「文明法則史学」が教える「800年に一度の東西文明の大転換」が明らかになる展開のことだが、実際には、今までの「唯物論」や「マネーの大膨張」などに象徴される「西洋の物質文明」が終焉し、今後は、「唯心論」や「精神的な余裕」などを主な価値観とする「東洋の精神文明」が始まるものと想定されるのである。別の言葉では、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊」と同様に、「グローバル化した世界共同体」とでも呼ぶべき状況が、「数多くの小さな共同体」へ分裂を始める状況のことである。

つまり、「人々の結び付き」を意味する「社会的な共同体」に関しては、最初、「血縁」などを基本として発生し、その後、徐々に、「共同体の統合」が発生したものと考えられるが、現在は、「デジタル通貨で結び付けられた、世界的な金融共同体」とでも呼ぶべき状況となっているのである。具体的には、「目に見えない金融ツインタワー」である「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務」がそびえたっていながらも、実際には、「9・11事件」のような展開が始まった状況のことである。

より具体的に申し上げると、「ゼロ金利やマイナス金利などにより、実体経済から隔離され、大膨張したマネー経済」が存在しながらも、「2022年にはっきりとした事実」としては、「デジタル通貨が紙幣に形を変えて、マネー経済から実体経済へと浸みだし始めた状況」とも言えるのである。つまり、「お金は、利益を求めて彷徨う」という言葉のとおりに、「金融商品よりも実物商品の方が、より大きな値上がりを示す展開」となったために、多くの人々が、実物資産への資金移動を始めたことが見て取れるのである。

別の言葉では、「何でもバブル」の状態を引き起こした「金融界のメルトダウン」が、現在では、「金融資産」から「実物資産」へ移行し始めているために、今後は、「1600年前の西ローマ帝国」を超えて、「人類史上、未曽有の規模で、世界的な大インフレが発生する展開」が想定されるものと感じている。(2022.12.10)
 
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世界都市の崩壊

シュペングラーの「西洋の没落」では、「西暦2000年以降に発生する世界都市の崩壊」が、明確に予測されており、また、この理由としては、「魂の退位と頭脳の支配」などが指摘されている。別の言葉では、「消滅した魂に代わる、魂の化石としての知能」により、「土地から生まれた有機体である文化」が衰退し、一方で、「固結から生じた機構である文明」が発展するとも述べられているのである。

そして、この説明については、「文明法則史学」が教える「西洋と東洋との文明交代」や「私が作成した心の座標軸」のとおりの状況であり、実際には、「マクロ的な心の方向性」が「目に見えるもの」に向かいながら、「行動」が「自分に向かっている状態」を表しているのである。また、このような状況下では、「文明法則史学」が教えるとおりに、「マネーの大膨張」と、その後の「世界都市の崩壊」が発生し、この著書では、その原因の一つとして、「機械的、都市的概念である民主主義者の存在」が指摘されているのである。

より詳しく申し上げると、私の「心の仮説」のとおりに、「心の方向性」に関して、「魂よりも頭脳が偏重される傾向」が強まったために、「西洋的な唯物論が、800年という時間をかけて、徐々に、人々の意識に浸透した展開」のことである。別の言葉では、「社会の結び付き」や「共同体の規模」に関して、「世界都市の完成」を意味する「グローバリズム」により、「西洋の物質文明」がピークを迎えた可能性のことである。

ただし、その後は、「西暦2000年前後から、デリバティブの大膨張と崩壊が始まった」という展開となり、このことは、「大膨張したマネーが、人類の意識を混乱させるとともに、固結した西洋文明という機構を崩壊させる役割を担っていた状況」だったものと考えられるのである。つまり、「シュペングラー」が指摘するとおりに、「西暦1800年前後には、すでに、このことが予測されていた状況」であり、この原因としては、「貨幣に支配された人類が、民主主義を強調しすぎた点」も挙げられているのである。

このように、現在は、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊時」と、ほとんど似たような状況となっているが、この点については、「未来予測学の先駆者」とも言える「シュペングラー」や「村山節」が指摘するとおりの状況とも言えるようである。ただし、今後の注目点は、やはり、「水素エネルギーや核融合などの技術的な進化」であり、また、「四次元以降にまで進化可能な社会科学の存在」とも言えるようであり、この結果として、今後は、「決して、悲観するだけの状況ではない展開」が予想されるようである。(2022.12.14)
 
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
 
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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