異次元金融緩和の後始末
「日銀による異次元の金融緩和政策」に関しては、現在、「政策の破綻」から「後始末の始まり」という段階に移行中の状況、すなわち、「国債の大量買い付けによる超低金利状態の維持」が難しくなるとともに、「国債価格の下落(金利は上昇)が進行中の状態」とも言えるようである。そして、この点については、「バーナンキ元FRB議長」が、以前に指摘したとおりに、「20年ほど前から、日銀が、量的緩和や超低金利政策などの金融政策において、先進国で主導的な役割を果たしてきた状況」であると考えている。
つまり、今後の「異次元金融政策の後始末」に関しても、日銀が先導的な役割を果たすものと考えているが、実際には、「金利の上昇に伴う、日銀の資金繰りの問題」、すなわち、「日銀が赤字に転落した時に、どのような方法で資本注入を実施するのか?」という方法論のことである。具体的には、「1998年に発生した長銀の破たん危機」の時に議論されたように、現在では、「日銀への資金貸付」ではなく、「日銀への資本注入」でしか、問題が解決できない状況とも想定されるのである。
より詳しく申し上げると、「金融システム」の観点からは、「1990年の日本バブル崩壊」で発生した「民間部門の不良債権」が、その後、「民間金融機関」に移行し、現在では、「日銀や政府が保有している状況」となっているのである。つまり、「不良債権問題の先送り」が実施されてきた状況のことであり、実際には、このことが、「日本の失われた30年」の根本的な原因だったものと考えられるのである。
別の言葉では、今まで、「1990年のバブル崩壊までに日本人が貯めてきた預金」などを利用して、壮大な規模での「時間稼ぎ」が実施されてきた状況でもあったが、同時に理解できることは、「日米欧の先進諸国において、未曽有の規模で、デリバティブのバブルが発生した状況」である。つまり、「政府の容認のもとで、民間金融機関が、大量のデリバティブを簿外取引で積み上げた状況」のことでもあるが、この結果として発生した事態は、「大量のデジタル通貨が産み出した超低金利やマイナス金利の状態」だったことも見て取れるのである。
しかし、現在では、「デリバティブの崩壊が引き起こした金融のメルトダウン」が、「実物資産」にまで行きついたことにより、「インフレ率や金利の上昇」、あるいは、「中央銀行と政府の資金繰りを、どのようにして賄うのか?」という問題が発生しており、そのために、今後は、「未曽有の規模での紙幣大増刷」が危惧される状況だと考えている。(2023.1.16)
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「量的緩和」という名の「金融引き締め」
「黒田日銀総裁」の任期終了直前になって、ようやく、「異次元金融緩和の問題点」が議論され始めたが、この点については、「2001年から始まった量的緩和」にまで、原因を遡る必要性があるものと考えている。つまり、私が以前から指摘しているとおりに、「日銀の量的緩和」は、実際のところ、「金融引き締め」であり、この理由としては、「従来の準備預金を当座預金に名称変更し、残高を大膨張させた事実」が挙げられるのである。
より具体的には、「1990年に発生した株式と不動産バブルの崩壊」で発生した「不良債権」を処理するために、「政府と日銀は、ゼロ金利政策を実施し始めた」という状況だったものと思われるのである。そして、この時に発生した変化は、「財政赤字や貿易赤字などに悩まされていたアメリカが、急激に、デリバティブの残高を膨張させ始めた事実」であり、この結果として、その後、「世界全体が、超低金利状態の恩恵を受けることができた状況」だったことも見て取れるのである。
つまり、「金融界のブラックホール」とでも呼ぶべき状況が作り出されるとともに、「デリバティブが創り出した大量のデジタル通貨が、世界全体に広まっていった」という展開のことである。別の言葉では、「貨幣の質が低下することにより、貨幣の量が急増した状況」のことでもあるが、実際のところ、「これほどまでのマネーの大膨張は、未曽有の規模であり、辛うじて、1600年前の西ローマ帝国が参考になる状況」とも言えるのである。
そのために、今後の展開としては、「民間金融機関が簿外(オフバランス)で保有する、約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「世界に存在する約330兆ドルの債務残高」という「目に見えない金融ツインタワーが崩壊する事態」を想定しているが、この点に関して考えられることは、「過去20年以上の日本の実質的な金融引き締めが、今後、日本人に好影響を与える可能性」のようにも感じている。
つまり、「失われた30年」が意味することは、「1980年代のバブルで生み出された大量のマネーを吸収しながら、雇用を維持することにより、日本人の健全な精神状態を保つことができた可能性」だったようにも感じられるのである。別の言葉では、「崩壊の時代を耐えながら、次の創業の時代に備えていた可能性」であり、実際には、これから想定される「ハイパーインフレの危機」に対して、「20年前から準備を始めていた可能性」のことでもあるが、この点については、「少子高齢化への対応」とともに、今後の「日本人の行動変化」に期待している次第である。(2023.1.17)
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習近平の方針転換
現在、世界的に注目を浴びている出来事の一つが、「習近平の方針転換」とも思われるが、実際には、「ロシアと距離を置きながら、欧米に近づこうとする態度」であり、また、「戦狼外交を弱めながら、国内経済の回復を図ろうとする態度」である。別の言葉では、「軍事力と資本力を背景にして、世界の覇権国家を追求する態度」から、「国内の評判を気にしながら、自分の地位を保とうとする態度」へ転換中の状況のことでもあるが、この時に必要なことは、やはり、「習近平とプーチンの歴史的役割」を考える必要性である。
より詳しく申し上げると、「共産主義や社会主義とは、いったい、何だったのか?」を、根本から考えることであり、実際には、「ケプラーやニュートンなどから始まった自然科学の発展」が、その後、「社会科学の発展を促した可能性」のことである。別の言葉では、「シュペングラー」の主張のとおりに、「文明の発展過程における紆余曲折の可能性」の結果として、「史的唯物論」、すなわち、「資本主義の崩壊後に共産主義の時代が訪れる」という誤った認識を、「プーチンや習近平が信じ込んだ可能性」である。
つまり、今回の「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻」については、「軍事力や資本力による他国への帝国主義が、どれほど時代錯誤的な思想であるか?」という点を、世界的に知らしめる効果があったものと考えられるのである。また、「ロシアの失敗」を見た「習近平」は、結果として、「共産党の政治体制そのものが、民主主義的な経済発展を阻害する可能性」に、ある程度、気付かされた状況とも思われるのである。
別の言葉では、「中国4000年の歴史が証明する易姓革命の事実を思い出した可能性」のことでもあるが、実際には、「国民の反乱により、共産党の存在そのものが危うくなる可能性」に怯え始めた可能性のことである。そのために、今後の注目点としては、「30年前に発生した日本の不動産バブル崩壊」を参考にしながら、「中国の不動産バブル崩壊が、今後、どのような影響を及ぼすのか?」を理解することだと考えている。
より具体的には、「中国」で発生すると思われる「1000兆円を超える規模の不良債権」が、今後、「民間金融機関」から「政府や中央銀行」へ、「どの程度の速度で移行していくのか?」を見守ることである。また、「西洋の資本主義諸国」において、「金融システムの崩壊」が発生した時に、「中国やロシアが、どのような影響を受けるのか?」を考えることでもあるが、実際には、「資本主義の崩壊後に、共産主義ではなく、数多くの小さな共同体(コミュニティー)が発生する状況」を示唆しているものと感じている。(2023.1.18)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion12807:230211〕