本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(128)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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バブル破裂のメカニズム

「ビル・グロス氏」が言及した「超新星」を調べて感じたことは、「バブルは崩壊するのではなく、破裂するのではないか?」ということであり、また、「恒星に限らず、国債バブルや風船なども、全てが同じメカニズムで破裂するのではないか?」ということだった。つまり、「大膨張したものは、必ず、破裂する運命にあるのではないか?」ということだが、この時の問題点は、「時間的な違い」であり、実際には、「風船」の場合、「数十秒や数分」という時間が必要であり、一方で、「恒星」の場合には、「数億年から数十億年」、そして、「金融」の場合には、「数年から数十年」の時間が必要とされるということである。

また、「破裂のメカニズム」については、「風船」の例からも明らかなように、最初は、「吐いた息」が原動力となり、「限界点にまで、ゴムが伸び切る状態」となるのだが、この時の注目点は、その後に、「風船内外の圧力差により、ゴムに穴が開く」という状況でもあるようだ。つまり、「ほぼ瞬間的に破裂し、内外の圧力差が均等になる状態」のことだが、このメカニズムを、現在の金融情勢に当てはめると、実に、興味深い事実が浮かび上がってくるようにも思われるのである。

具体的には、「2007年のサブプライム問題」と「2008年のリーマンショック」の前後に、「デリバティブ(金融派生商品)」も含めて、「マネーの大膨張」が限界点に達した可能性である。そして、その後の「量的緩和」については、「ゴムが劣化するような状況」が「世界の金融システム」において発生したようにも感じているが、実際には、「先進各国の中央銀行が、民間金融機関の預金を、国債に入れ替えた状況」のことである。

しかも、最後の段階では、「マイナス金利」までもが実施されたが、このことは、「金融システムの内部に穴が開き始めた段階」を意味しているようである。その結果として、間もなく、「マネーバブルの破裂」が発生し、その時には、「マネー経済」と「実体経済」との間で、ほぼ瞬間的に、「圧力差が消滅する状況」が想定されるが、このことは、「インフレの大津波」が、はっきりと姿を見せ始める状況とも言えるようである。

つまり、「2008年のリーマンショック」が、実は、「金融の大地震」であり、その後は、「インフレの大津波」が、海中の深いところで、静かに潜行していたようにも思われるのである。そして、今後は、「国債価格の暴落」とともに、一挙に、姿を現し始める段階に差し掛かっているようだが、この仮説については、今後、数週間、あるいは、数か月間で、答えが出るようにも感じている。
(2016.6.22)

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アダムスミスと神の見えざる手

「経済学の始祖」と呼ばれ、当時は神学者だった「アダムスミス」が、その著書の「国富論」で説いたことは、「神の見えざる手」だった。つまり、「市場経済において、各個人が自己の利益を追求すれば、結果として、社会全体の利益となる望ましい状況が生まれる」というものであり、この理由として、「神の見えざる手が働く」という点が指摘されていたのである。しかし、結果としては、ご存知のとおりに、「個人の欲望を開放したために、マネーの大膨張が発生し、しかも、ほとんどのマネーは、一部のメガバンクや政府によって支配されている状況」となっているようにも考えられるのである。

別の言葉では、「合成の誤謬」という言葉のとおりに、「一人ひとりが正しいとされる行動をとったとしても、全員が同じ行動を取ったために、結果として、想定と逆の事態が発生する状況」となっているようにも感じられるのである。そして、この理由としては、「アダムスミス」が想定した「神の見えざる手」に関して、その後の「変化」が指摘できるようだが、実際には、「西暦1900年頃」に発生した「科学と宗教との闘争」のことである。

つまり、この戦いで起きたことは、「科学が宗教に対して、全面的な勝利を収めた」という変化であり、その結果として、世界中の人々が、「科学は万能であり、また、宗教はアヘンである」という理解をし始めたのである。別の言葉では、「唯物論」が「唯心論」に対して勝利を収めたわけだが、この結果として発生した事態が、「神の見えざる手」の消滅でもあったようである。

そして、現在では、「お金」が「現代の神様」となり、人々の「心」を支配した状況のようにも思われるが、実際には、あまりにも「殺伐とした社会」が形成され、また、多くの人々が「心の闇」を抱えた状態のようにも感じられるのである。つまり、「神の愛」が、表面的に、失われた状態のようだが、この点を深く考えると、実は、このことも、「神の見えざる手」の結果だったようにも思われるのである。

つまり、「市場経済」を、最終段階にまで行きつかせることにより、世界中の人々に「気付き」を起こさせている可能性のことだが、さすがに、現在では、多くの人が、「このままではいけない」と感じ始めているようである。別の言葉では、漠然とした不安感を抱き始めているようだが、問題は、「なぜ、このような事態になったのか?」についての、歴史的な考察、具体的には、「共同体」に対する理解が足りない点であり、この時に、大きな意味を持つのは、やはり、「現代の神である『お金』が、紙切れになる状況」でもあるようだ。(2016.6.24)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion6190:160721〕