低PBR銘柄の再評価
現在の日本株市場では、「低PBR銘柄の再評価」が進展しているが、この点に関して、今回、驚かされたことは、「低PBR銘柄のバブル相場」というような表現が使われ始めた事実である。別の言葉では、「2000年のITバブル崩壊時」に使われた「ニューエコノミーとオールドエコノミー」を彷彿とさせるような状況でもあるが、一方で、このことは、典型的な「米国のテックバブル相場崩壊」を象徴する事実のようにも感じている。
つまり、「ハイテク銘柄を買うことは善であり、また、従来型の産業に関する銘柄を買うことは悪である」というような雰囲気が醸成された状況のことだが、この時に必要なことは、「投資の基本」である「株式の価値」を理解することである。具体的には、「株式の価値=将来の利益÷株価」という数式において、「企業の努力」を象徴するのが「将来の利益」であり、また、「投資家の評価」を意味するのが「株価」である事実を認識することである。
より詳しく申し上げると、本当の「バブル」が意味することは、今回の「米国株のGAFAMバブル」のように、「市場参加者の評価」が高まり、「過剰な資金」が集まりすぎた結果として、「株価」が、異常な高値にまで上昇した状況とも言えるのである。別の言葉では、「どのような銘柄でも、将来の利益と比較して、株価が割高の状態となれば、バブルが発生する事実」のことである。
そのために、「株式投資」で必要なことは、「株式の価値」を考えながら、「どの銘柄が、割安な状態に放置されているのか?」を考えることでもあるが、現在の「低PBR銘柄群」に関しては、「20年前のオールドエコノミー銘柄群」と同様に、「宝の山の状態」だったことも理解できるのである。つまり、「大量の資金が、一部の銘柄群にだけ集中した状況」となった結果として、典型的な「バブル」が発生するとともに、「その他の銘柄群が割安に放置されている状況」のことである。
ただし、これから必要とされることは、「現在、どれほどの資金が世界に存在するのか?」を理解しながら、「本当のお金」である「金(ゴールド)」と「政府や中央銀行が創造した通貨(フィアットマネー)」を区別することとも想定されるのである。つまり、「貴金属」などのように、「裏側に借り手がいない資産」を保有することが、本当の「資産価値」を理解することであり、また、このことが、今後、「目に見えない金融ツインタワー」が崩壊し、「インフレの大津波」が世界中を襲い始めた時に、我々の「資産防衛」において、最も必要とされる可能性である。(2023.2.25)
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「人新生」と「マネー」
「三次元の議論」、すなわち、「現在の出来事だけを取り上げて、さまざまな可能性を述べる議論」では、「無数の結論」が導かれるとともに、「先の見えない不安感や恐怖心」が醸成されるものと考えている。しかし、一方で、「四次元の議論」、すなわち、「過去の推移を考慮しながら、これからどのような展開が予想されるのかを述べる議論」では、「一つの結論や真理」が導かれることにより、多くの人が悩み苦しむ「仏教の四苦八苦」が軽減されるものと感じている。
つまり、現在の「貨幣の破壊」や「大都市における少子化現象」、そして、「大衆の道徳的退廃」などについては、100年ほど前の著書である「シュペングラーの西洋の没落」や「オルテガの大衆の反逆」などで予見されていた出来事とも言えるのである。別の言葉では、「カール・ポランニーの大転換」という著書で述べられているように、「マネーの大膨張」が「悪魔のひき臼」の役割を果たした結果として、「お金が神様となった状況」が、世界的に形成されたものと考えられるのである。
そのために、これから必要とされることは、「138億年の歴史を持つ宇宙」や「46億年の歴史を持つ地球」、そして、「数万年と言われる人類文明の歴史」などの発展に関して、「どのようなメカニズムが働いたのか?」を考えることとも想定されるのである。つまり、「オルテガ」が主張するとおりに、「現在の問題である『大衆の反逆』に対抗できる唯一の手段が、『真の哲学』を構築すること」とも考えられるのである。
別の言葉では、「人新生」や「マネー」などに関して、「無益有害な言葉遊び」を廃して、「真剣に真理を追究する態度」が求められている状況のことでもあるが、実際には、「シュペングラー」が予見していた「大都市の大衆が、なぜ、野蛮化、かつ、原始化していくのか?」などを考えることである。あるいは、「19世紀から始まった大衆の時代」に関して、「共同体の規模が、どのようなメカニズムで、グローバル共同体にまで発展したのか?」などに関して、真剣な思索を繰り返すこととも言えるのである。
より具体的には、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊」を参考にしながら、すでに始まった「世界的な貨幣の崩壊」、あるいは、「民族大移動の後半部分」などを、真剣に議論することが求められている状況とも思われるが、実際のところ、現在の「世界的な金融混乱」に関しては、「人類史上、未曽有の状況」であり、また、「時間的な余裕」が消滅した状況のようにも感じられるのである。(2023.3.1)
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量的緩和という名目のリフレーション政策
現在、海外では、 盛んに、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の実施」が議論されているが、この点については、大きな注意を要するとともに、現時点で必要なことは、「リフレーション政策の正しい理解」だと考えている。つまり、「デリバティブの大膨張」に関しては、「民間金融機関のバランスシートにおいて、残高の急激な膨張が発生した状況」であり、このことは、「貨幣(マネー)が創造された展開」だったことも見て取れるのである。
しかし、一方で、「2010年前後から本格化した量的緩和(QE)」に関しては、「中央銀行のバランスシート残高の急増」であり、このことは、「民間部門の資金減少を補う効果」が存在したものと考えられるのである。別の言葉では、「中央銀行が民間金融機関から資金を借りて、国債などの買い付けを実施した状況」は、「中央銀行が、不良債権の引き受け手となった事実」を表しているものと理解できるのである。
そして、現在の金融混乱については、「中央銀行が、どのようにして資金を調達するのか?」が根本的な問題となっており、このことは、「民間金融機関からの借り入れが難しくなった状況」を表しているものと想定されるのである。つまり、これから予想される展開は、過去のパターンのとおりに、「紙幣の大増刷」とも思われるが、この方法に関しては、以前から指摘しているとおりに、「金融界の白血病」とも言える「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができない事実」も指摘できるのである。
そのために、現在では、「BIS(国際決済銀行)」を中心にして、「紙幣の代わりにCBDCを発行する案」が模索されているようだが、この方法に関しては、「究極のリフレーション政策」、あるいは、「国民が気付く形でのインフレ税の徴収方法」とも言えるようである。つまり、今までは、「中央銀行のバランスシート膨張」という「国民が気付かない方法で、インフレ税の徴収が実施されていた状況」だったものが、現在では、この方法に限界点が訪れたものと考えられるのである。
別の言葉では、「ギャロッピング・インフレ」から「ハイパーインフレ」への移行段階に差し掛かった可能性でもあるが、今後の注目点は、「金利やインフレ率の上昇率」だと考えている。つまり、過去の経験則から言えることは、「10%台までが、ギャロッピング・インフレ」であり、その段階を過ぎると、いわゆる「ハイパーインフレ」と言われる、「約6ヶ月間で、信じられないほどの価格上昇に見舞われる展開」が想定されるとともに、この時の推進役が、大量の「紙幣」、あるいは、「CBDC」とも想定されるのである。(2023.3.2)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion12920:230325〕