本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(407)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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神から紙への変化

「2023年の3月」は、「年と月と日の全てが卯の暦」という「時間のサイクル」が教えるとおりに、「まったく新たな扉が開いた状況」であり、実際には、「現代のマネー(お金)」に関して、「神から紙への変化」が始まった状況のようにも感じている。つまり、「紙幣は時代遅れであり、今後は、デジタル通貨が主流になる」というような理解が実は大きな誤りであり、今後は、「1600年前の西ローマ帝国の末期」と同様に、「パンとサーカス」や「大都市の座業」などに慣れ親しんだ人々が、「お金に対して、全体的な信頼感を置いた状態」が完全崩壊する可能性のことである。

別の言葉では、今回の「複数の米国銀行の破たん」や「クレディスイスの救済買収」がもたらしたものは、「1946年1月1日」に発せられた「天皇陛下の人間宣言」と似たような変化のようにも感じられるのである。つまり。「明治維新」以来、「神様の地位」に祭り上げられていた「天皇陛下」が、終戦の直後に、「普通の人間」に戻った状況のことだが、今回の「民間銀行の連続破綻」については、「お金そのものの権威が、大きく失墜し始めた状況」を表しているものと思われるのである。

より具体的には、「中央銀行のバランスシート」に関して、「当座預金残高の増加」という従来の膨張方法が限界点に達したために、今後は、「紙幣の増刷」、あるいは、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」などが模索されているものと思われるのである。つまり、「量的縮小(QT)の実施により、バランスシートの残高を縮小する目論み」は、結果として、「銀行の連鎖破たんによる世界的な大恐慌」を発生させる可能性が危惧されたために、現在では、再度、「量的緩和(QE)」が模索され始めた状況とも言えるのである。

そのために、今後の展開としては、「CBDCの発行が、本当に実現可能なのか?」を、くわしく検討するとともに、「紙幣の増刷が、どのような問題を引き起こすのか?」を、再度、検証する必要性があるものと思われるのである。具体的には、以前から指摘している「金融界の白血病」、すなわち、「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができずに、実物経済のみならず、金融取引の決済などに大問題が生じる可能性」のことである。

別の言葉では、「神様のような状態に祭り上げられたデジタル通貨が、反対に、さまざまな混乱を引き起こす状況」のことでもあるが、この点については、「1600年前の西ローマ帝国崩壊時」と同様に、「お金の根本」である「信用」が失われたことにより、「人々の間で、争いが発生した状況」が根本的な原因として指摘できるものと感じている。(2023.3.29)
 
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中国の金融混乱

現在の「中国の金融混乱」は、「西洋諸国の金融混乱」と、大きな違いが存在するものと思われるが、実際には、「民間金融機関が簿外で保有するデリバティブ」のことである。つまり、「西洋諸国」の場合には、「1997年から始まった信用収縮」以降、「G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)」において、「OTCデリバティブ」が急激な成長を見せたことも理解できるのである。別の言葉では、「民間金融機関で、デリバティブという商品とデジタル通貨の大膨張」が発生したために「不動産バブルの崩壊で発生した、民間企業や個人の不良債権」が民間の金融機関で吸収が可能だった状況のことである。

ところが、今回の「中国の不動産バブル崩壊」を吟味すると、「日本の約4倍程度の不良債権」が発生する可能性がありながら、「民間金融機関における余裕が、ほとんど存在しない状況」とも想定されるのである。つまり、「1929年のアメリカ」と同様に、「国家の財政」が健全な状況下で、「民間金融機関の連鎖破綻」が発生する可能性が危惧される状況のようにも感じられるのである。

別の言葉では、「1923年のドイツ」のように、「中央銀行が、紙幣の増刷により、不良債権を引き受けざるを得ない状況」が、間もなく、訪れるものと感じているが、この点については、「実体経済の悪化」が、より一層、「国家財政のひっ迫」をもたらすものと考えている。つまり、「中央銀行の資金繰りが悪化し、中央銀行のバランスシートを増大させることにより、市中への資金供給が実施される状況」こそが、本当の意味での「インフレ(通貨価値の下落)」を引き起こすものと想定されるのである。

そして、この点に関して、「西洋諸国」の場合には、「民間金融機関の簿外(オフバランス)において、バランスシートの残高を増やすことが可能だった」という状況が、「中国」の場合には、この部分が欠如することにより、一挙に、「1991年のソ連」や「1923年のドイツ」のような状態に陥る可能性も考えられるのである。ただし、この点については、「西洋諸国」においても、すでに、「デリバティブと国債の金融ツインタワーが崩壊を始めた段階」とも想定している。

そのために、今回は、「中国」と「西洋諸国」が、ほとんど同時に、「紙幣の増刷」、あるいは、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」に迫られる状況も想定されるが、実際に起こることは、やはり、「80億人の換物運動」という「通貨を受け取った人々が、慌てて、市場で実物資産に交換を始める動き」とも言えるようである。(2023.3.30)
 
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OTCデリバティブを巡る最終攻防戦

「シリコンバレー銀行の破たん」以降、世界の金融市場では、「OTCデリバティブを巡る最終攻防戦」に入ったものと考えているが、実際には、「国債価格の暴落を防ぐために、さまざまなプログラム売買が発動されている状況」のことである。あるいは、「FRBのバランスシート残高を急激に再膨張させることにより、国債価格の上昇、そして、金利の低下を目論んでいる可能性」のことでもあるが、この理由としては、{量的縮小(QT)政策」の失敗が指摘できるものと感じている。

つまり、今回の「量的縮小(QT)政策」については、「金利の急上昇」と「FRBのバランスシート残高の縮小」が、同時に実行されたことにより、「米国の中央銀行であるFRBの財政的な健全性」が向上したものの、一方で、「米国の民間金融機関」に対して、大きなゆがみが発生したことも見て取れるのである。別の言葉では、「1929年の大恐慌」の時のように、「国家財政」を優先させて、「民間金融機関の連鎖破たん」を引き起こした状況が再現されそうな展開のことである。

そのために、世界各国の中央銀行は、慌てて、「QT(量的縮小)からQE(量的緩和)への再転換」を図ったものの、今後の問題点としては、「中央銀行のバランスシートを、どのようにして増やすのか?」という「根本的な問題」が指摘できるものと感じている。つまり、今までは、「民間金融機関からの借り入れ」、あるいは、「OTCデリバティブの維持」などにより、「国債の購入」、そして、「超低金利状態の維持」が可能だったものの、最近では、「デジタル通貨の実物資産への移行」により、「インフレ率や金利の急上昇」に悩まされる展開となったのである。

より具体的には、「リフレーション政策」から「インフレ政策」への移行段階に差し掛かったものの、現在は、「金融機関の連続的な破たん」により、「デジタル通貨が、一挙に、安全と思われる金融機関に移行を始めた段階」に入ったものと想定されるのである。つまり、「世界的なコンピューターネットワークの弊害」が露呈し始めた可能性のことでもあるが、今後は、より大きな問題、すなわち、「中央銀行のバランスシート増大」に関して、従来の「紙幣増刷」という手法では、「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができない問題」に直面することも考えられるのである。そのために、現在では、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」が真剣に議論されているようだが、基本的な理解としては、「世界中で、政府や金融システム、あるいは、通貨への信用が崩壊している状況下では、実物資産への資金移動が止められない展開」が指摘できるものと感じている。(2023.4.2)
 
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
 
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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