本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(129)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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カルアナ総裁の最終宣告

6月26日に開かれた「BISの年次総会」で、「カルアナ総裁」は、きわめて印象深いコメントを述べられたが、特に私が注目したのは、次の「二つの言葉」だった。具体的には、「未来が現実となる時」と「三位一体化したリスク」というものだが、「カルアナ総裁」が、数年前から指摘してきたことは、「量的緩和(QE)が実施されていなかったら、とっくに、世界の金融システムが破たんしていた」、そして、「中央銀行による国債の買い支えは、問題の先送りであり、時間稼ぎにすぎない」ということだった。

つまり、「中央銀行に、過度の負担がかかりながら、かろうじて、世界の金融システムや通貨制度が維持されている状況」を、危惧し続けてきたようだが、今回は、この点に関して、「最終宣告」を発したようにも感じられるのである。具体的には、「想定していた未来が、間もなく、現実のものとなる」、また、その理由としては、「労働生産性の伸び率低下」と「過剰な債務」、そして、「政策の限界」という「三位一体化したリスク」が、世界に存在する点を指摘しているのである。

しかも、今回は、「中央銀行を守るために」という文章が、初めて付け加えられたが、この中で強調していることは、「中央銀行の独立性を守らなければいけない」ということだった。つまり、現在の「日銀」からも明らかなように、「世界の中央銀行は、量的緩和の名のもとに、大量の国債を保有している状況」であり、このことは、「中央銀行の独立性が失われた状態を意味している」と主張したかったようにも思われるのである。

そして、このような状況下で予想されることは、「過去の歴史」が繰り返されることだが、今回、「カルアナ総裁」は、「短絡的な調節方法や近道を避けながら、有効な政策をとるべきだ」と述べながらも、「再度、後悔しない政策をとることが重要である」とも結論付けているのである。

つまり、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS」の総裁としては、「国家財政の破綻」や「ハイパーインフレ」などについて、「分かっていながらも、具体的にコメントできない状況」のようにも感じられたが、結果としては、婉曲的な表現を使いながら、実情を説明したようにも思われるのである。つまり、「時間的な余裕が無くなり、間もなく、過去と同様のハイパーインフレが発生する」と言いたかったようだが、この点については、たいへん近い将来、「国債バブル」が破裂した時に、「世界の金融システムや通貨制度が、完全崩壊する事態が想定される」ということでもあるようだ。(2016.7.3)

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イギリスのEU離脱

「6月23日(日本時間の24日)」に発生した「イギリスのEU離脱」は、歴史的な出来事であり、今後、いろいろな変化を、世界にもたらすものと考えている。そして、この時に重要な点は、「デリバティブの実情」を、正確に理解することでもあるようだが、具体的には、依然として、「イギリス」が「デリバティブにおける世界最大の市場」となっている事実であり、その結果として、今回の「EU離脱」は、「貿易」などの「実体経済」よりも、「マネー経済」に、より大きな影響を与えるものと考えている。

また、この時に必要なことは、世界に存在する「約6京円のデリバティブ」のうち、「約7割が、『金利』に関連した商品である」という事実認識であり、実際には、このことが、現在の「マイナス金利」を生み出した要因とも思われるのである。つまり、「金利の上昇」は、「デリバティブの完全崩壊」に繋がるために、「2008年のリーマンショック」以降、「先進各国が協調して、国債の買い支え」に邁進してきた可能性である。

しかし、その結果として発生したことは、「貧富の格差」であり、また、「富の集中」でもあったようだが、現在では、「国家」や「中央銀行」、そして、「一部のメガバンク」に、「ほとんどの金融資産」が集中した状態とも考えられるのである。つまり、多くの国民は、「超低金利」や「マイナス金利」により、「預金」を持っていても、資産が増えない状況であり、しかも、この時に、「プログラム売買」により、大々的な「国債の買い付け」と「株式や貴金属の売り叩き」が実施されていたものと思われるのである。

つまり、「金融抑圧」という言葉のとおりに、「国家財政の破綻」を防ごうとして、さまざまな「金融のコントロール」が実施されていたようだが、今回の「イギリスのEU離脱」については、この不満が、表面化した可能性が存在するようである。そして、今後は、今まで抑えられていたエネルギーが、一挙に、表に出始めるものと考えているが、この時に大切な点は、「コンピューターマネー」と「現実のマネー」との違いを理解することでもあるようだ。

具体的には、現在の「お金」が、「影も形も存在しない、単なる数字」に変化した事実であり、このために、現在の「金融抑圧」が可能になったようにも思われるのである。しかし、今後は、「国債バブルの破裂」とともに、大きな上昇圧力が、「紙幣」に掛かり、そして、その後は、順番に、「貴金属」や「商品」、そして、「株式」に移行することが想定されるのである。(2016.7.4)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion6202:160801〕