本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(417)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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6月のFOMC

現在の「市場の関心事」として、「6月のFOMCで、再度の利上げが実施されるかどうか?」という問題が挙げられているが、この点については、「三次元と四次元の経済学の違い」で説明が可能なものと考えている。つまり、「現在の状況」だけを切り取って分析する「三次元の経済学」では、「今までの利上げにより実体経済が悪化し、その結果として、今後は、利下げが実施される」という意見が主流の状況のようにも思われるのである。

しかし、一方で、「時間の経過とともに、社会や空間が、どのような変化を見せるのか?」を考える「四次元、あるいは、動態経済学」においては、「金(ゴールド)を基にして創られたフィアットマネー(政府などの信用により膨張した貨幣)が、ハイパーインフレにより発散、あるいは、雲散霧消しない限り、インフレ率は加速度的な上昇を見せる」という結論が導かれるのである。

別の言葉では、「過去100年間に、どれほどのフィアットマネーが創造されたのか?」を理解すると、「金利の上昇により、インフレ率が下落する」というような意見には賛同できず、反対に、「これから発行されるCBDC(中央銀行デジタル通貨)、あるいは、大量の紙幣により、インフレ率のみならず、金利の急騰も予想される状況」とも考えられるのである。具体的には、現在、「米国の債務上限問題」が、「一時的な停止状態(サスペンション)」という結果に落ち着いたものの、間もなく、「約1兆ドルの政府短期証券が発行される可能性」が危惧される状況とも言えるのである。

より具体的には、「誰が、大量の政府短期証券を引き受けるのか?」ということでもあるが、実際には、「低金利の預金口座から高金利のMMFへ流れた資金が、今後も政府の資金繰りを賄う状況」が継続するものと想定されるのである。別の言葉では、「利上げを継続しない限り、政府の資金繰りに問題が発生する状況」のことでもあるが、この結果として発生するのが、「民間金融機関の更なる破綻」とも言えるのである。

しかも、今回は、今まで、ほとんど報道されなかった「約600兆ドルのOTCデリバティブ」に関連する「G-SIBs(グローバルな金融システム上重要な銀行)」に関しても、さまざまな問題が発生する状況も想定されるのである。つまり、これらの銀行群にも資金繰りの問題が発生する状況のことだが、この時に予想される展開は、「CBDCの大量発行で資金供給を行う状況」であり、また、より大きな問題は、やはり、「その資金を受け取った国民が、すぐに市場で実物資産に交換する可能性」だと考えている。(2023.6.6)
 
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プーチンの運命共同体

ロシアのプーチン大統領が頻繁に使う言葉の一つに「運命共同体」があると言われているが、この事実には、大きな違和感を覚えるとともに、思い出されたのが、「1980年代における日本の企業社会」だった。つまり、当時の日本では、「企業と社員は運命共同体である」、あるいは、「終身雇用制のもとに、定年まで勤めあげることが美学である」というような認識が、広く共有されていたのである。

しかし、その後の展開としては、「1990年のバブル崩壊」や「日本の失われた30年」などの言葉からもお分かりのとおりに、「日本の終身雇用制が崩壊するとともに、日本企業は雇用よりも利益を重視する態度に変化した」という状況だったのである。つまり、「成長中の企業」については、洋の東西を問わず、「社員の囲い込み」が実施されるものの、一旦、「利益の成長」が止まった時には、当然のことながら、「社員のリストラ」が始まることも見て取れるのである。

このように、「共同体と利益の関係性」に関しては、基本的に、「成長の過程では、規模の拡大とともに利益が増加する展開」が想定されるが、問題は、「過去30年間の日本のように、成長が止まった時に、共同体の維持が難しくなる状況」とも言えるのである。別の言葉では、「共同体の規模と形態は、時間の経過とともに変化する」ということが不変の真理だと思われるが、今回の「運命共同体」という言葉については、「時間を無視して、共同体に属さなければいけない義務」が存在する可能性も指摘できるのである。

つまり、「共同体や独裁者などへの絶対的な忠誠心」が問われている状況のようにも感じられるが、実際には、「独裁者の恐怖心」や「排除の論理」などが働くことにより、「共同体の規模縮小、あるいは、分裂」などが発生することが、歴史の教えることとも言えるのである。別の言葉では、「30年ほど前の日本」からも明らかなように、「運命共同体」という言葉が使われたこと自体が、すでに、「共同体や組織の崩壊」が始まっている状況を象徴しているようにも感じられるのである。

しかも、現在では、「西洋の先進各国のすべてが、財政面において、1991年のソ連のような状態」となっているために、今後は、「グローバル共同体の崩壊」に伴う「世界的な信用消滅」も想定されるのである。別の言葉では、「文明法則史学」が指摘する「西洋の唯物論的な時代の終焉」のことでもあるが、実際には、残念ながら、「この点に気付いている人が、ほとんど存在しない状況」とも言えるようである。(2023.6.7)
 
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国家財政のシュリンクフレーション

食料品の価格は、現在、急激な上昇を見せているが、以前に用いられたインフレ対策の一つとして、「シュリンクフレーション」、すなわち、「10個で100円の商品などに関して、8個で100円というように、数量を減らして実質的な値上げを図る方法」が存在した。つまり、「その商品に対する国民からの信頼感」が失われないように、姑息な手段で値上げを図ってきたわけだが、実際のところ、現在の「国家財政」に関しても、「マイナス金利によるシュリンクフレーション」が発生している状況のようにも感じている。

具体的には、「国家財政」の実情として、最初に、「税金の徴収」という方法が存在するものの、その後、「税収不足に陥った政府」が取る方法は、「将来の税金」である「国債」を発行することとも言えるのである。また、「国債の発行」が難しくなると、その次の方法として、「中央銀行による国債の買い付け」、すなわち、「国民の預金を利用して、将来の税金を徴収する方法」が採用されるものの、今回の「マイナス金利」が意味することは、「将来の税金のみならず、現在の税金までもが徴収されている事実」とも理解できるのである。

より詳しく申し上げると、「国家が、マイナス0.1%で、一兆円の一年国債を発行すると、年間に10億円の金利が受け取れる事実」のことであり、このことは、「海外の国々が、現在、5%程度の金利を支払っている現実」と比較すると、「天と地ほどの違い」が存在することも見て取れるのである。つまり、「1000兆円の国家債務に対して、日本が5%の金利を支払うと、50兆円の負担が生じる状況」という計算になるものの、実際には、「マイナス金利により金利を受け取っている状況」であることも理解できるのである。

そのために、「前日銀総裁の黒田氏」は、かたくなに利上げを拒否してきた状況でもあったが、その結果として発生した変化は、「円安」であり、このことは、「国家の体力」を計るバロメーターである「金利と為替」に関して、「低金利を守ったことにより、為替に反動が発生した状態」とも言えるのである。そして、今後は、「国家の体力」が、より一層、失われるとともに、「政府に対する国民の信頼感」が喪失することにより、一挙に、「金利の上昇」が発生する展開も想定されるのである。

具体的には、「軍国主義から民主主義への大転換」を引き起こした「1945年8月の日本人」と同様に、「預金を引き出して、実物資産を購入し始める動き」のことでもあるが、このことは、典型的な「ボトルネック・インフレ」、すなわち、「劇場の火事」のような状況を意味するとともに、急激な「ハイパーインフレ」を引き起こすものと考えている。(2023.6.8)
 
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13113:230707〕