人的資本経営の問題点
大手企業に対し、2023年3月決算から「人的資本の情報開示義務」が課されたことにより、現在、金融市場で「人的資本経営」という言葉が注目され始めたようだが、この点には、大きな注意が必要だと感じている。つまり、以前の「データ資本主義」などの用語と同様に、「近い将来に使われなくなる可能性」を危惧している状況でもあるが、その理由としては、やはり、世界的な「信用の消滅」、あるいは、「マネーの消滅」の危機が指摘できるものと考えている。
別の言葉では、「村山節(みさお)の文明法則史学」や「シュペングラーの西洋の没落」などで指摘されているように、これから想定される展開は、「暴力政策による貨幣の破壊」とも想定されるからである。つまり、「貨幣の歴史」を訪ねると、現在の「マネー(お金)」が創り上げられるまでには、「西ローマ帝国の崩壊以来、約1600年の時間が必要だった状況」とも思われるのである。
より詳しく申し上げると、西ローマ帝国で築き上げられた「当時のグローバル共同体」が崩壊し、その後、「数多くの小さな共同体」へ分離したわけだが、このことが、実は、「史的唯物論」が指摘する「資本主義の崩壊後に訪れるコミュニズムの正体」とも思われるのである。つまり、「コミュニズム」が「共産主義」ではなく「共同体主義」を意味するとともに、この時に重要な意味を持つのが、「お金の残高が、共同体の規模によって決定される可能性」であり、実際には、「分業体制が生み出す生産性の向上が、共同体の規模と信用を拡大させるとともに、大量のマネーが創り出される構図」とも理解できるのである。
その結果として、現在では、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務残高」がそびえ立っている状況でもあるが、実際には、「コンピューターネットワーク」を通じて、「数多くの銀行や金融機関、そして、中央銀行や国家が繋がっている状態」ともいえるのである。つまり、現在では、「2023年2月」に発生した「トルコの大地震」の時のように、「一部の銀行がパンケーキクラッシュに見舞われると、金融システム全体が、あっという間に崩壊する可能性」が危惧される状況ともいえるのである。
そして、この時に重要な役割を果たすのが、「金融界で隠蔽され続けた不都合な真実」、すなわち、いまだに報道されない「OTCデリバティブ」とも思われるが、この点に関して、現在、大きな意味を持つのが、「世界的な金利上昇」であり、また、「金利上昇がもたらす金利負担の増加」だと考えている。(2023.9.12)
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金価格10倍と1ドル200円到来への道筋
今から20年ほど前の「2002年」に、「金価格10倍と1ドル200円到来への道筋」というビデオを製作、発売し、「2010年前後にこの目標が実現される可能性」を想定していたが、実際には、「2023年になって、ようやく、金価格10倍の目標が、ほぼ実現された状況」ともいえるのである。そのために、今回は、反省も含めながら、「どのような理由で遅れが生じたのか?」、あるいは、「これからの世界において、どのような展開が予想されるのか?」などについて考えてみたいと思う。
そして、現時点での反省点としては、やはり、「2000年前後から大膨張を始めたデリバティブに関して、全く予想ができなかった事実」が指摘できるが、当時は、「1990年に弾けた日本の土地と株式のバブルが、人類史上最高の規模ではないか?」と誤解していた事実が思い出されるのである。つまり、「日本を売れば、日本以外の南極も含めた土地が買える」といわれるほどのバブルが発生したために、「日本の土地総額の約2500兆円」という金額は、今後、二度と破られない記録のようにも感じられたのである。
しかし、実際には、その後、「デリバティブのバブルが発生し、残高が約8京円にまで膨らんだ」という状況であり、このことは、「日本のバブルの約30倍という規模」だったことも見て取れるのである。そして、このときに発生した変化は、「デリバティブという金融商品が、大量の商品のみならず、同量のデジタル通貨までをも、バランスシートの両面で生み出した状況」だったことも理解できるのである。
より具体的には、「1971年のニクソンショック」以降、「商品と通貨の質と形態」が変化し、「コンピューターネットワークの中で、大量の金融商品が、デジタル通貨により、瞬時に世界で取引される状況」のことである。別の言葉では、従来の経済理論では、全く理解できない「商品」や「通貨」が生み出されたために、既存の「インフレ指数」などが、ほとんど役に立たなくなったことも見て取れるのである。
しかし、現在では、「民間金融機関のオフバランス(簿外)で創り出されたデジタル通貨」が枯渇するとともに、従来の金融政策で「最後の手段」ともいえる「紙幣の増刷」が、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」の形で実施されようとしているのである。そして、この時に重要な意味を持つのが、「マネー(お金)の重要な役割」である「商品との交換機能」であり、今後は、80億人の人々が、通貨や政府への信頼を失うことより、「デジタル通貨が紙幣に形を変え、実物資産へと殺到を始める展開」も想定されるようである。(2023.9.13)
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バランスシート不況の現状
「20世紀の特徴」として挙げられる点は、真っ先に、「中央銀行の設立による世界的なマネーの大膨張」とも思われるが、実際には、「民間企業や個人部門のバランスシート大膨張」から始まり、その後に、「民間金融機関のバランスシート大膨張」、そして、「政府や中央銀行のバランスシート大膨張」へと移行していった展開のことである。つまり、「現在のマネーが、どのような過程を経て、大膨張を達成したのか?」を考えると、実際には、「民間企業や個人の資産と負債の同時的な大膨張」から始まったことも見て取れるのである。
より具体的には、「1913年から1933年までの通貨制度」としては、「金貨本位制」が採用されており、「人々は、20ドル金貨を持って、フォードの自動車などを買いに行った」とも説明されているのである。そして、その後は、「1944年までの金地金本位制」、そして、「1971年までの金為替本位制」へと移行したわけだが、その理由としては、やはり、「実体経済の成長に伴う資金的な不足」が指摘できるようである。
その結果として、戦後の世界では、「民間金融機関のバランスシート大膨張」が発生したことが見て取れるものの、このときの注意点としては、以前から指摘している通りに、「バランスシートの非対称性がもたらすリスク」、すなわち、「資産価格の下落に伴う不良債権の発生」が存在することも理解できるのである。つまり、「1980年代の日本における土地と株式のバブル」からも明らかなように、「バランスシートの膨張過程で発生した含み益」が、その後、反動により、「巨額の不良債権」を発生させた状況のことである。
そして、この点における「現在の注意事項」としては、「不良債権」が、その後、「中央銀行」や「国家」へ移行し、間もなく、「財政ファイナンス」という「債務の貨幣化」が実行される可能性ともいえるのである。つまり、「30年ほど前に発生した不良債権が、居場所を変えながら膨張を続けてきた状況」のことでもあるが、今回の問題点としては、やはり、「世界全体で、同様の事態が発生している状況」とも理解できるのである。
別の言葉では、「1600年前後」に生み出された「時は金なりの」思想が、その後、「資本主義」という「お金が最も大切であると考える時代」につながり、現在では、「影も形も存在しない数字」が「お金」となった「デジタル通貨の時代」までもが生み出された状況のことである。しかも、現在では、「1991年のソ連崩壊」に衝撃を受けた「現在のBRICS諸国」が「資本主義の崩壊後」を見据えた状況とも思われるが、実際には、「西洋の唯物論的な文明」そのものが崩壊期を迎えている段階のようにも感じている。(2023.9.18)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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