本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(433)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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2008年と2023年との違い

「2023年8月15日」には、戦後の26年サイクルが示唆するとおりに、「中国版のリーマンショック」と呼ばれる事件が発生したが、この事実に関して注意すべき点は、「2008年と2023年との違い」を理解することだと考えている。具体的には、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)が、なぜ、発生したのか?」を理解することであり、また、「今回の中国版リーマンショックが、今後、どのような意味を持つのか?」を考えることである。

より詳しく申し上げると、「デリバティブの実情」を、深く認識することでもあるが、実際には、「デリバティブという金融商品が生み出したデジタル通貨の影響力」を理解することである。別の言葉では、「シニョリッジ(通貨発行益)」に関して、「民間金融機関のオフバランスにおける影響力」を理解することでもあるが、実際には、「大量のデリバティブが発行されたことにより、同量のデジタル通貨が生み出され、世界的に普及していった状況」を認識することである。

より具体的には、「2008年のリーマンショック」が意味したことが、「デリバティブの膨張がストップした事実」であり、また、「2023年の中国版リーマンショック」が意味したことは、「デジタル通貨の影響力が消滅し始めた可能性」とも思われるのである。別の言葉では、「2009年から本格化した世界的なQE(量的緩和)」に関して、「中央銀行が取れる手段が変化した事実」のことでもあるが、実際には、それまでの「リフレーション政策」、すなわち、「民間からの資金借り入れにより国債などを買い付ける方法」が難しくなった事態を表しているものと想定されるのである。

つまり、「中央銀行の資金繰り」に関して、「債務の貨幣化」を実施せざるを得なくなった状況のことでもあるが、この点に関する注意点としては、事前に用意されてきた「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」が、現時点で、まだ実施されていない状況ともいえるのである。別の言葉では、「大事件の発生を待って、新たな手段が行使され始める可能性」も考えられるが、実際には、「26年前の1997年に発生した世界的な信用収縮」の時に、「日本の北拓銀行や山一証券」、あるいは、「米国のロングターム・キャピタル」などの破綻をきっかけにして、デリバティブの大膨張が始まった状況のことである。ただし、今回は、反対に、「何らかの大事件」をきっかけにして、世界的な「CDBCの発行」が想定されるものの、その後の展開としては、「大量に発行された貨幣が、世界の実物資産価格を急騰させる展開」も考えられるようである。(2023.9.24)
 
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ライプニッツのモナド論

今から300年ほど前に著された「ライプニッツのモナド論」では、「予定調和説」が述べられるとともに、「肉体と精神」、あるいは、「神と人間」との関係性などが議論されており、この点については、我々の「投資理論」にとっても、たいへん参考になるものと考えている。つまり、「相場は常に正しい」と考える態度のことでもあるが、実際のところ、我々が投資の実践で避けるべき思考としては、やはり、「自分の考えは正しいが、相場が間違っている」という認識が指摘できるものと思われるのである。

別の言葉では、以前に指摘した「ノーマティブ」と「ポジティブ」な思考の違いでもあるが、実際には、現在の「中国の苦境」や「シリアの洪水」などを見て、「問題を隠すな」とか「人災を止めよ」と考えるのではなく、「なぜ、このようなことが起こったのか?」を、素直に考える態度のことである。つまり、「人知」の至らなさを理解しながら、「神の知恵」や「天の計らい」などに想いを致すことであり、このような態度こそが、「投資」においても、成功につながる態度のようにも感じられるのである。

より詳しく申し上げると、「138億年の歴史を持つ宇宙」や「46億年の歴史を持つ地球」、そして、「数万年の歴史しか持たない人類」や「数千年の歴史しか持たない人知」などについて深く考えることである。つまり、「旧約聖書」で述べられている「初めに言葉ありき」や「光あれ」などの言葉について、いろいろな思いを巡らすことでもあるが、実際には、「自然科学」が「神の創った世界」を研究する学問であり、また、「社会科学」が「人間が作った社会」を研究する学問である可能性などを考えることである。

その結果として、現在では、「11次元にまで達した自然科学」と比較して、「3次元に留まっている社会科学」の未熟さにより「さまざまな問題が発生している可能性」が指摘できるものと思われるのである。つまり、「マネーの大膨張が、なぜ、発生したのか?」、あるいは、「現在の自然環境破壊が、人類の飽くなき欲望によってもたらされたのではないか?」などの問題点が、いまだに、ほとんど議論されていない状況のことである。

より具体的には、「現在」と「1600年前の西ローマ帝国」を比較しながら、「これから、どのような社会が訪れるのか?」を考えることでもあるが、このときに参考になるのが、冒頭の「ライプニッツ」であり、また、「ヘーゲル」や「シュペングラー」などの西洋哲学、そして、「東洋哲学」や「文明法則史学」などだと考えているが、最も重要なポイントは、「日々の出来事が、天や神からのメッセージである」という認識とも言えるようである。(2023.9.26)
 
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アルゼンチン化する先進諸国

現在、海外諸国では、「西洋先進諸国のアルゼンチン化」が危惧され始めているが、具体的には、「アルゼンチンなどと同様に、過剰な国家債務の積み上がりにより、ハイパーインフレが発生する可能性」のことである。つまり、今までの「約40年間」については、「超低金利状態を享受できた西洋先進諸国」と「ハイパーインフレに悩まされる発展途上国」という構図に分類されていたが、現在では、「中国も含めた先進諸国のすべてで、国家財政が破綻し、ハイパーインフレが発生する可能性」が高まっているのである。

そして、この理由としては、ひとえに、「デリバティブ(金融派生商品)の存在」が指摘できるが、実際には、「1980年代初頭に誕生し、その後、2010年前後に、約800兆ドルのピーク残高を記録した」という状況だったことも見て取れるのである。つまり、「デリバティブ」という金融商品が産み出した「デジタル通貨」の存在により、「中国を含めた先進諸国が、超低金利状態、及び、膨大な債務の積み上がりを経験した」という状態だったのである。

別の言葉では、「前半と後半の二回に分けて、バブルの発生と崩壊を経験した」という状況であり、実際には、「1980年から2000年が、日本における土地と株式のバブル」であり、また、「2000年から2020年が、西洋先進諸国におけるデリバティブのバブル」のことである。つまり、「日本」に関しては、「40年間にわたり、二度のバブルの恩恵を受けてきた」という状況だったものの、今後は、その反動に悩まされる期間が訪れるものと想定されるのである。

このように、現在の「世界的な金融混乱」の原因としては、過去40年間に形成された「目に見えない金融ツインタワー」、すなわち、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務残高」の崩壊が指摘できるものと思われるのである。しかし、現在では、「米国を中心にした世界的な金利上昇」が始まったことにより、「金融ツインタワーが、徐々に、崩壊を始めている状態」とも考えられるのである。

そのために、今後の注意点としては、「26年前の1997年」のような展開が「約30倍程度の規模で発生する可能性」を認識することであり、実際には、「1997年8月13日」から始まった「世界的な信用収縮」が、その後、「同年の11月に、山一證券や北拓銀行」などの倒産につながるとともに、翌年の1998年に、「米国のロングタームキャピタル」などの破綻にまでつながった展開のことである。(2023.10.2)
 
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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