無力化したローマ法
現在の世界情勢は、1600年前の「西ローマ帝国の崩壊時」と酷似した状況のようにも思われるが、この点に関して興味深い事実としては、「無力化したローマ法」が指摘できるものと考えている。具体的には、「紀元前449年の十二表法」から始まったと言われる「ローマ法」が、その後、1000年近い歴史を経たのち、「西暦395年の東西ローマの分裂以降、急速に衰退し、西暦476年の西ローマ帝国の滅亡とともに、ローマ法そのものが忘れ去られた」とも理解されているのである。
つまり、今から1600年前の「西暦423年」の頃は、現在と同様に、「法律の無力化」が始まっていたようだが、この点に関する興味深い事実としては、「米国のサンフランシスコなどで、万引きが横行し、取り締まりができなくなった状況」などが参考になるものと考えている。あるいは、「日銀による、制限を超えた国債や株式などの買い付け」が実施されている事実についても、実際には、以前に「禁じ手」と言われた行為が、その後、「日銀法の度重なる改正により合法化された状況」ともいえるのである。
このように、「お金が神様となった時代」では、「政府や中央銀行までもが、法律を勝手に解釈した状況」となり、このような変化を見た国民の間では、「お金儲けのためなら、法律を無視してもよい」と考える人々が増えていった状況のようにも思われるのである。つまり、現在の世界は、シュペングラーが指摘する「大都市の知性と貨幣」、あるいは、「民主主義から衆愚政治への移行」などの結果として、「都会で住みづらくなった人々が、生き延びるために、法律を無視し始めた状況」のようにも感じられるのである。
そして、最後の段階では、「法律の無力化」にまで進展したわけだが、この事実が意味することは、「今後、約50年間で、同様の混乱が発生する可能性を危惧せざるを得ない状況」とも言えるようである。つまり、「西暦400年から1200年までの西洋の暗黒時代」が、これからの世界で再現される可能性のことでもあるが、この時に「救い」となるのは、やはり、「東洋の仏教」だと考えている。
具体的には、その頃、インドや中国、あるいは、日本などで、盛んに「仏教」が研究され、「東洋の唯心論的な文明」が、花を開き始めた状況のことだが、この理由としては、「神から紙への変化」という「ハイパーインフレによる金融面の焼け野原状態」、あるいは、「グローバル共同体が分裂し、数多くの小さな共同体の誕生」などを経験した人類が、その後、「天や神への信仰」などをもとにして、徐々に、復活した展開のことである。(2023.10.3)
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世界的な金融システムの崩壊
「2023年8月15日の中国版リーマンショック」から始まったのは、「世界的な金融システムの崩壊」のようにも感じているが、その理由としては、「バブルの歴史」を尋ねた時に、「西暦1600年代の初頭に発生したオランダのチューリップバブル」に行き着くとともに、「その後、時間の経過とともに、バブルの規模が大きくなっている状況」が見て取れるからである。つまり、「時は金なり」という思想の誕生とともに、「オランダで、チューリップのバブルが発生し、球根の値段が、家一軒と同様の価格にまで上昇した」という展開となったわけだが、この理由としては、やはり、「東オランダ貿易会社がもたらしたマネーがバブルを引き起こした状況」が指摘できるものと考えている。
また、その後は、「西暦1800年前後から始まった産業革命」が、「お金(資本)が、最も大切(主義)なものである」という「資本主義」を促進させたわけだが、「マネーの膨張」に関して、特に注目すべき点は、「1913年のFRB創設」だと考えている。つまり、「米国の中央銀行」が創設されてから、「世界のマネー残高増加」に関して、スピードが速くなったものと思われるが、今回、必要なこととしては、「1997年と2023年の金融混乱」を比較しながら分析することとも思われるのである。
より詳しく申し上げると、「日本の土地と株式のバブル崩壊」をキッカケにして始まった「世界的な金融混乱」に関しては、「1997年の信用収縮」により、「世界の金融システム崩壊の危機」にまで至ったことも見て取れるのである。つまり、当時は、「約2500兆円の時価総額」にまで達した「日本の土地バブル」の崩壊により、「約300兆円の不良債権」が発生し、「世界の金融システムが崩壊するのではないか?」と危惧されたのである。 しかし、実際には、「米国の金融機関」を中心にして「奥の手」ともいえる「デリバティブの大膨張」が実施されるとともに、「民間金融機関のバランスシート」が大膨張したことにより、「300兆円の不良債権が、簡単に吸収された」という状況だったのである。
つまり、「新たなバブルを作ることにより、問題の先送りと時間稼ぎが可能だった」という展開でもあったが、この結果として発生したのが、「約30倍規模の不良債権」ともいえるのである。具体的には、「目に見えない金融ツインタワー」である「約600兆ドルのデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務残高」の崩壊がもたらす「約1京円」にも達しようとする「世界的な不良債権」のことである。そして、これから想定される展開としては、やはり、「ハイパーインフレが引き起こす世界的なマネーの消滅」であり、今回は、「世界的な金融システム」そのものが完全崩壊する可能性を憂慮している次第である。(2023.10.4)
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大混乱の米国政治
「前大統領の起訴」や「現職大統領の息子の起訴」、そして、「下院議長の解任」というように、前代未聞の政治的な大混乱が継続している米国については、基本的に、「西洋文明の終焉」を象徴している出来事のようにも感じている。つまり、「村山節(みさお)の文明法則史学」によると、「東西文明は800年ごとに交代し、交代時に約100年間の移行期が存在する」とも言われているのである。
より具体的には、西暦400年前後に「西洋から東洋文明への交代」、そして、その800年後の西暦1200年前後に「東洋から西洋文明への交代」が発生し、現在では、再び、「西洋から東洋文明への交代」が発生している状況のことである。そして、30年ほど前に、この理論を学び、その後、詳しい研究を重ねてきた私自身としては、今回の「米国の政治混乱」は、まさに、「切り花状態だった米国、そして、西洋文明の崩壊を象徴している出来事」のようにも感じられるのである。
つまり、「根本にある信用」を基にして、「経済」や「金融」などが発展するものの、現在では、「根本の信用」が崩れ去った状況、すなわち、「なにも信用できない社会」が形成された状態のようにも思われるのである。別の言葉では、「金(ゴールド)」を基にして発行された「現代の通貨」は、現在、「崩壊時の西ローマ帝国」と同様に、「根本が忘れ去られるとともに、大量の通貨が発行された状態」ともいえるのである。
しかも、今回の「政治的な混乱」については、「根底に存在する経済や金融の混乱が、表面上の政治に表れ始めた状況」であり、このことは、かろうじて「表面上の繁栄」を保っていた西洋文明が、本格的な崩壊を始めた段階のようにも思われるのである。つまり、「世界的な金利上昇」が意味する「信用の消滅」が、本格的な「マネーの消滅」である「ハイパーインフレ」を引き起こす可能性が高まっている状況のことである。
そのために、現時点で必要なことは、「戦後の26年サイクル」が教える混乱が、「今後、どのようにして具現化するのか?」を考えることであり、実際には、「1997年8月から始まった信用収縮」と比較して、「今後、約30倍の規模で、衝撃が訪れる可能性」を理解することとも思われるのである。つまり、26年前の「約2500兆規模の日本のバブル崩壊」と比較して、今回は、「約8京円規模のデリバティブのバブル崩壊」が、世界の金融システムを揺らすことになるために、これから世界を襲う「金融インフレの大津波」に関しては、未曽有の規模となる可能性を考慮することである。(2023.10.5)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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