本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(435)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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30倍の衝撃

「2023年8月15日」から始まった「世界的な金融混乱」は、今後、「26年前の1997年」と比較して、「約30倍の衝撃」を、世界にもたらすものと考えているが、その理由としては、金融混乱の発生までに積みあがった「不良債権の額」に違いが存在するからである。つまり、「1997年8月の信用収縮」に関しては、実際のところ、「日本の土地と株式のバブル崩壊」で発生した「約300兆円の不良債権」が、最後の段階で、「民間金融機関で支えられなくなったのではないか?」とも考えられたのである。

別の言葉では、「コントロール不能な国家の財政赤字」がもたらす「ハイパーインフレ」までもが危惧された状況でもあったが、実際には、「米国を中心とした、民間金融機関のオフバランスにおけるデリバティブの大膨張」により、再度、「世界的なバブルの発生」へとつながったのである。つまり、「民間金融機関のバランスシート大膨張により、デリバティブという新たな商品とデジタル通貨の急増」という状況のことである。

より詳しく申し上げると、「日本のバブルと比較して、約30倍の規模で、新たなバブルが発生した状況」であり、また、このバブルの崩壊を意味するのが、「金融界の大地震」ともいえる「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱」だったのである。そして、その後の展開としては、「世界的なQE(量的緩和)」、すなわち、「民間金融機関で発生した不良債権を中央銀行が肩代わりしようとした状況」でもあったが、現在の状況としては、「目に見えない金融ツインタワー」である「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務残高」が残った状況ともいえるのである。

その結果として、最近、世界的に危惧され始めたことは、「金利上昇による債券価格の暴落」が、「デリバティブの担保となっている米国債」に関して「担保不足の問題」を発生させ始めた可能性ともいわれているのである。つまり、現在は、「目に見えない金融ツインタワー」の両方が、音を立てて崩れ始めた状況であり、その結果として、これから予想される衝撃に関して、世界的な関心が集まり始めたものと思われるのである。

そして、具体的に危惧されることとしては、「メガバンクの連鎖破綻」などが指摘できるが、この時に中央銀行が取れる方法は、やはり、「債務の貨幣化」である「財政ファイナンス」、すなわち、「1991年のソ連」などと同様に、「大量の紙幣を増刷する行為」であり、現在の「一時的な量的縮小(QT)」 は、「何らかの大事件の発生」、そして、その後の本格的な「紙幣の大増刷」を待っている状況とも考えられるようである。(2023.10.10)
 
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山一証券とデリバティブ

現在の世界的な金融混乱については、「1997年と似たような状況ではあるものの、規模的には約30倍程度の大きさではないか?」とも考えているが、この点に関して思い出されるのが、「山一証券の破綻事件」である。つまり、「1997年11月に破綻した山一証券」については、実際のところ、「7年前の1990年前後から、外資系証券会社の間で、『1兆円規模の飛ばし』の存在が噂されていた」という状況だったのである。

しかし、実際の展開としては、今回の「ジャニーズ問題」と同様に、「隠蔽され続けた不都合な真実」となったわけだが、実際には、「事件の発覚」とともに、世界の金融システムを揺るがすキッカケの一つとなったことも見て取れるのである。つまり、「どのような問題も、永遠に隠し続けることができず、必ず、表面化する」ということが、「真理」の一つとも思われるが、この点に関して、今回、大きな意味を持つのが、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」のようにも感じられるのである。

具体的には、「1997年から1998年にかけての金融システムの崩壊危機」を救ったのが、その後の「デリバティブの大膨張」だったことも理解できるが、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」以降は、「デリバティブのバブル崩壊を、QE(量的緩和)で隠蔽し続けてきた状況」のようにも思われるのである。つまり、「問題の表面化により、世界の金融システムが崩壊するのではないか?」という危機感を抱いた「西洋諸国の金融当局者」が、「国債を買い付けることにより、きわめて異常な超低金利状態を作り出した状況」だったものと考えられるのである。

ただし、現在では、「中央銀行による国債の買い付け資金の調達方法」に問題が出始めており、実際には、従来の「民間金融機関などからの借り入れによる資金調達」が難しくなったものと思われるのである。つまり、「買い付け資金の枯渇状態」に見舞われたために、「金利上昇による国債魅力度の増加」を目論んだものの、実際の展開としては、「金利の支払い費用の増加」などにより、現在では、「債務の貨幣化」である「財政ファイナンス」の実施を迫られている状況とも想定されるのである。

そして、このような状況下で発生する事件として、「1997年の11月の山一証券の破綻」が思い出されたわけだが、「日本のバブル崩壊」と「デリバティブのバブル崩壊」とを比較すると、「約30倍」という規模の開きが存在するために、「これから、どれほどの事件が発生するのか?」が、現時点の最大の関心事とも言えるようである。(2023.10.12)
 
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米国政府の債務残高が描くホッケースティック曲線

現在、「急膨張する米国政府の債務残高」が問題視され始めたが、この点に関して思い出されることは、1990年代半ばに議論された「米国政府の債務残高が描くホッケースティック曲線」である。つまり、当時は、「貿易赤字」と「財政赤字」の「双子の赤字」に悩まされた米国は、最後の段階で、「基軸通貨国であろうとなかろうと、債務不履行回避のために、財政ファイナンスを実施せざるを得なくなる」と考えられていたのである。

しかし、実際には、「デリバティブの大膨張」という「奥の手」を使うことにより、「時間稼ぎ」と「問題の先送り」が可能だったものの、現在では、雪だるま式に膨れ上がった巨額の政府債務が、米国のみならず、世界全体に、大きな悪影響を及ぼそうとしているのである。つまり、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務残高」という「目に見えない金融ツインタワー」が崩壊を始めているために、今後は、さまざまな問題が、世界的に噴出し始めるものと想定されるのである。

具体的には、「バランスシート不況」に関して、「民間企業や個人」のみならず、「民間金融機関」や「中央銀行」のすべてが、「資産価格の下落が生み出す不良債権」に悩まされ始める展開のことである。別の言葉では、「流動性の枯渇」が始まるとともに「資金繰り」に問題が出始める状況のことでもあるが、実際には、「倒産を回避するために、価格が下落した商品などを売却せざるを得ない事態」のことである。

そして、このような状況下で、政府や中央銀行が取れる手段は、「債務の貨幣化」と呼ばれる「財政ファイナンス」であり、実際には、「1991年のソ連」のように、「国債の買い手」が消滅したときに、「紙幣の増刷」が実施される展開のことである。別の言葉では、「ハイパーインフレが発生する直接の手段」でもあるが、今回の問題点は、「一国だけではなく、ほとんど全ての国々で、同様の財政問題が発生している事実」ともいえるのである。

より具体的には、「村山節の文明法則史学」が指摘する通りに、「物質文明を基本とした西洋文明の終焉」のことでもあるが、1600年前の「西ローマ帝国の崩壊」の時に発生した現象は、当時の「ローマ法」が役に立たなくなった状況だったとも伝えられているのである。つまり、一種の「無法状態」が発生する可能性でもあるが、この時に役立つのが、「法治国家」と「徳治国家の違い」を理解することでもあるようだ。具体的には、「人間が、西洋文明の最終段階で、どのようなことを行ったのか?」を理解しながら、「東洋の精神文明」を理解することであり、このような過程から、次の時代が始まるものと考えている。(2023.10.13)
 
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13365:231110〕