金融界のホーキング放射
今回の「金(ゴールド)価格の2000ドル越え」が意味するものは「金融界のホーキング放射の始まり」であり、また、「金(ゴールド)に対する国債の敗北」のようにも感じている。つまり、「1980年代の初頭」から始まった展開としては、「信用本位制と呼ぶべき通貨制度において、大量のデジタル通貨が創り出された状況」であり、この時に、大きな役割を担ったのが「デリバティブのバブル」だったものと思われるのである。
しかし、現在は、「民間部門のみならず、中央銀行や国家のバランスシートの全てにおいて、資産価格の下落が始まった状況」のようにも感じられるが、実際のところ、「1980年代の世界」は、「日本のバブル」に象徴されるように、「約3000兆円規模の民間企業や個人のバランスシート大膨張」が発生したことも見て取れるのである。また、その後の展開としては、「2000年前後」からの「約8京円規模のデリバティブバブルの発生」だったことも理解できるのである。
つまり、「1980年から2000年」という期間は、「日本のバブル」の発生と崩壊の時期だったものの、「2000年からの約20年間」は、「世界的なデリバティブのバブル発生と崩壊の時期」だったものと考えられるのである。そして、両方のバブルに共通する特徴としては、「デジタル通貨」という「影も形も存在しない単なる数字が通貨となり、コンピューターネットワークの中を駆け巡った状況」であり、この点については、「金融界のブラックホールが形成されたような状態」とも思われるのである。
より詳しく申し上げると、「仮想現実の世界で、デリバティブという金融商品が、大量のデジタル通貨を創り出した状況」のことでもあるが、この点に関する問題は、「デジタル通貨が金融界のブラックホールの内部にとどまっている限り、実物資産の価格に影響が及ばなかった事実」ともいえるのである。別の言葉では、「金融の逆ピラミッド」の頂点に位置する「デリバティブ」の崩壊が始まった「2008年のGFC(世界的な金融大混乱)」以降、「金融のメルトダウン」により「何でもバブル」が始まったものの、現在では、「実物資産以外の商品におけるバブル崩壊」により「デジタル通貨が紙幣に形を変えて、ブラックホールの外部に流れ始めた状況」とも考えられるのである。
そして、このことが、冒頭の「金融界のホーキング放射」を表しているものと思われるが、今後の展開としては、「限りのある資産」に対して、「大量の紙幣」が流れ込む事態、すなわち、「世界的なハイパーインフレの発生」が想定されるものと考えている。(2023.11.29)
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世界的な注目を浴び始めた日本のマイナス金利
現在、「日本のマイナス金利」が、世界的な注目を浴び始めているが、その理由としては、「世界で唯一継続されている日本のマイナス金利の解除により、世界的なハイパーインフレが発生する可能性」が危惧されているからである。別の言葉では、先進各国で進行している「クラウディングアウト」、すなわち、「国家による資金の吸い上げが引き起こす金利上昇」などに関して、「日本におけるマイナス金利の解除が、世界的に、リフレーションからハイパーインフレへの大転換を引き起こすのではないか?」という意見のことである。
より詳しく申し上げると、「バーナンキ元FRB議長」が指摘したように、「1990年代後半から、日銀が世界の金融政策をリードしてきた」という状況であり、特に、「中央銀行のバランスシート膨張による国債の買い付け」に関しては、他国が日本を参考にしてきた状況だったことも見て取れるのである。そして、現在では、「日本のマイナス金利解除により、一挙に、中央銀行による紙幣の大増刷が始まる可能性」が懸念され始めているが、その理由としては、「日銀の資金繰りに関する問題点」が危惧されているからである。
具体的には、「日銀が保有する国債の含み損が拡大する可能性」のみならず、「日銀が債務超過に陥る可能性」であり、この点については、「日銀が吸い上げた当座預金に対する利払い」が根本的な原因とも考えられるのである。別の言葉では、「米中の中央銀行におけるリバースレポと同様のシステムが、20年以上も前から、日本で実施されてきた状況」のことだが、今までは、「日本国民が保有する大量の銀行預金」や「経常収支の黒字」などに支えられ、「金利の上昇」にまでは結び付かなかったことも見て取れるのである。
つまり、今までは、「日銀が民間部門から資金を吸い上げながら、国債を大量買付けすることにより、マイナス金利の維持も可能だった」という状況だったものの、今後は、「利上げにより、一挙に、日銀の資金繰りが悪化する可能性」が危惧され始めているのである。具体的には、「マイナス金利の解除とともに、日銀が債務超過状態に陥り、資本注入が必要とされる可能性」であり、また、「米国などと同様に、国債の買い手が消滅する可能性」が懸念されているのである。
そして、この点については、「米国で危惧され始めたリバースレポ残高の枯渇」よりも、時期的に早くなる可能性も想定されるために、現時点で必要なことは、「日銀の資金繰り」のみならず、「デリバティブに関する民間金融機関の破綻が、アメリカからではなく、日本から発生する可能性」までをも考えることのようにも感じている。(2023.11.30)
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2023年を振り返って
2023年を振り返ると、「今まで隠蔽され続けてきた、いろいろな不都合な真実」が明らかになるとともに、「本格的な金融大混乱が、世界的に始まった状況」だったものと考えている。具体的には、「世界的な金利上昇」により、「銀行が保有する債券や不動産などの資産価格が下落し、欧米において、金融機関の破綻が始まった展開」のことである。別の言葉では、以前から指摘してきた「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務残高」という「目に見えない金融ツインタワー」に関して、「債券価格の暴落が始まるとともに、金融ツインタワーの一角が崩壊を始めた状況」のことである。
より詳しく申し上げると、「2022年11月9日」に発生した「FTXの破綻」が、「2001年の9・11事件」における「ツインタワーに突入した一機目のジェット機」の役割を持ち、また、「2023年に破綻した数行の欧米銀行」が「二機目のジェット機」の役割を担っていた可能性である。そして、「26年前の1997年」と同様に、「8月の半ばから、本格的な金融崩壊が始まった展開」を想定しているが、実際には、「11月から、世界的な金融機関の破綻が始まるとともに、約1年間という時間をかけて、世界の金融システムを崩壊させる可能性」のことである。
そのために、現時点で必要なことは、「世界的な金融システムの実態」を正確に把握するとともに、「これから、どのような展開が想定されるのか?」を考えることとも思われるが、実際には、「世界的な流動性の枯渇」により、「多くの破綻が、企業や銀行などで発生する可能性」のことである。つまり、「デリバティブの大膨張が創り出した大量のデジタル通貨」が、今後、急速に消滅することにより、「世界各国で資金的なひっ迫状態が発生する可能性」を考えている。
そして、このような状況下で想定される「政策の変化」としては、古典的な「紙幣の大増刷」とも思われるが、今回は、その前の段階として、世界的な「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」も考えられるようである。つまり、「紙幣」については、「コンピューターネットワークの中を流れることができない」という性質があるために、「金融取引の決済」において、きわめて不都合な性質が存在するのである。
しかし、その後の問題は、「信用を失った政府が発行するCBDC」に関して、「貨幣の流通速度が急上昇する可能性」、すなわち、「80億人の人々が、受け取ったCBDCを、すぐに、実物資産へ転換し始める可能性」も想定されるようである。(2023.12.3)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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