本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(448)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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マネーの創造と消滅

「米国のFRBが創設された1913年」以降、人類は、「金融面における壮大な実験」を行った状況のようにも感じられるが、実際には、「民間金融機関の発展により、巨大なマネーが創造されながら、現在では、反対に、マネーの消滅が危惧されている状況」のことである。つまり、「民間金融機関のバランスシート」が増大している期間は、「マネーの創造」が実施されたものの、その後、「中央銀行や政府のバランスシート大膨張」、すなわち、「国家によるマネーの吸い上げ」が実施された状況下では、「信用乗数(貨幣乗数)の低下」に象徴される「マネーの実質的な消滅」が始まったことが見て取れるのである。

より詳しく申し上げると、「1913年から1971年の期間」においては、「自動車や電機、あるいは、化学」などの「二次産業」の成長により、「実体経済や民間金融機関のバランスシートが急成長した状況」だったことが理解できるのである。ただし、「1929年の大恐慌」に関しては、「政府の財政状態」が健全でありながら、「1923年に発生したドイツのハイパーインフレの再来」を恐れて、「金融引き締めを実施し、民間金融機関の連鎖破綻を引き起こした」という状況だったことも見て取れるのである。

別の言葉では、当時の認識として、発展途上の「民間金融機関」の重要性が理解されていなかったものと思われるが、その後の展開としては、「1971年のニクソンショック」をきっかけに、「民間金融機関のバランスシートがオンバランスとオフバランスの両建てで大膨張した状況」だったことも理解できるのである。つまり、「1971年から1997年までの26年間」は、「民間金融機関のオンバランスによる残高の増減」が見られたものの、その後の「1998年から現在」までは、「民間金融機関のオフバランスによる残高の増減」が発生した展開だったことも見て取れるのである。

より具体的には、「デリバティブの残高」が膨張している期間が「民間金融機関によるマネーの創造」が実施されていた時期だったものの、その後の「QE(量的緩和)」の期間は、「政府や中央銀行によるマネーの吸い上げ」が実施され、「マネーの実質的な消滅」が発生した展開のことである。そして、この点を、「中央銀行のベースマネー」と「民間金融機関の創出するマネー」との比率を表す「信用乗数」で検討すると、日本では、「1990年前後の約13倍」から「現在の約1.8倍」にまで急減した状況となっており、このことは、「政府によるマネーの吸い上げ」により、「民間金融機関の創出したマネーの縮小」すなわち、実質的な「マネーの消滅」が進展している状況であり、この結果として予想される展開は、やはり、「大量の紙幣増刷によるハイパーインフレの発生」とも言えるようである。(2024.1.16)
 
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民間マネーと政府債務

過去100年間の「世界的なマネー大膨張」を整理すると、基本的には、「中央銀行のマネー注入」と「民間金融機関のマネー創造」、そして、「政府債務の急増に伴うマネーの吸い上げ」に分類されるものと考えている。つまり、「中央銀行の創設」以降、「民間金融機関の発展」という展開が見られたものの、「1971年のニクソンショック」以降は、「民間金融機関のバランスシート大膨張」で創られた「世界のマネー」が、急速に、「政府の債務」という形で吸い上げられた展開だったものと思われるのである。

そして、この点を、「信用乗数(貨幣乗数)」、すなわち、「信用乗数=M2÷ベースマネー」という計算式から考えると、現在の「日本」では、「M2が1240兆円」、そして、「ベースマネーが673兆円」というように、「信用乗数が約1.8倍」という状況であることが見て取れるのである。つまり、「1240兆円-673兆円=567兆円」が、現在の「民間マネー」であるものの、「ベースマネーのほとんどが、政府債務である国債に投資されている状態」であることも理解できるのである。

しかも、「日本の信用乗数」については、1990年前後のピーク時に「約13倍」という状況だったものが、その後、急速に減少していることも見て取れるが、この理由としては、やはり、「金融システムの存続のために、超低金利状態が維持されるとともに、政府による民間資金の吸い上げが実施された展開」が挙げられるものと感じている。別の言葉では、「デリバティブの利用により、世界的に市場価格がコントロールされた状況」のことでもあるが、この時の注目点は、「オフバランスにおける民間金融機関のバランスシート大膨張」といえども「マネーの創造」に大きな貢献をした状況だと考えている。

しかし、現在では、「日米欧の先進各国」において、「民間のマネーが、政府の資金吸い上げと、利上げによる不良債権に悩まされる状態」となっており、その結果として、間もなく、「財政ファイナンス」、すなわち、「紙幣の大増刷かCBDC(中央銀行デジタル通貨の大量発行により、政府の債務が賄われる事態」へ進展するものと考えられるのである。

別の言葉では、現時点で、すでに、「1991年のソ連」や「1945年の日本」、あるいは、「1923年のドイツ」などと同じような状態に陥っている可能性のことでもあるが、今後の注目点としては、やはり、「いつ、どのようなキッカケで、世界的な金融大混乱とハイパーインフレが発生するのか?」であり、実際には、「デリバティブの完全崩壊」に伴う「メガバンクの破綻」が想定されるものと感じている。(2024.1.17)
 
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金融市場における価格コントロール

西暦2000年からの約20年間は、「金融市場における価格コントロール」が実施された期間、すなわち、「世界の金融市場において、ほとんどすべての商品価格がコントロールされた異常な期間」だったものと感じている。具体的には、「金利」のみならず、「株価」や「為替」、そして、「商品価格」までもが人為的に操作された状況のことだが、この原因としては、やはり、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」が挙げられるものと考えている。

つまり、「コンピューターネットワークの発展」を基にして、「本位通貨」が「単なる数字」に変化したために、「大量のデジタル通貨」が産み出されるとともに、未曽有の規模で「デリバティブ(金融派生商品)」が作り出されたことも見て取れるのである。その結果として、従来の経済学で指摘されていた「長期金利のコントロールは不可能である」というような常識が、一時的に、当てはまらなくなったことも理解できるのである。

より詳しく申し上げると、「一部のメガバンクが、デリバティブの利用により、ほとんどの市場で価格コントロールを行った」という状況により、「世界の金融市場で、未曽有の規模での歪みが発生した状況」のことである。別の言葉では、「債務の継続的な増加」を基にして成り立っていた「資本主義社会」そのものが、最後の段階で、空前絶後ともいえる金額の「借金」を背負った状態のことである。

しかも、最終段階では、「デリバティブによる市場価格のコントロ-ル」が効かなくなり始めたことにより、「金融市場の大混乱」が始まったことも見て取れるが、この問題の解決策としては、「膨れ上がった世界債務の消滅」とも理解できるのである。つまり、「ハイパーインフレによる債務の発散」か、あるいは、「世界的な大恐慌による銀行と国家の連鎖破綻」のいずれかが発生する可能性のことである。

別の言葉では、「目に見えない金融ツインタワー」、すなわち、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務残高」に関して、「どちらも音を立てて崩れる展開」を想定しているが、今後の注目点は、「この時に、世界各国が、どのような対処を取るのか?」だと考えている。そして、この時に参考になるのが、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊」のようにも思われるが、実際には、「財政赤字とインフレ」そして、「無力化したローマ法」などにより、現在と同様に、「多くの人々が、右往左往した状況」だった可能性も指摘できるようである。(2024.1.18)
 
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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