本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(454)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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西洋諸国の国家債務爆弾

現在においても、「景気が悪くなると金利が下がる」というような意見が、マスコミで頻繁に見受けられるが、この点には、大きな注意が必要であり、実際には、「景気の悪化」と「金利の上昇」が同時に発生する事態も想定されるようである。別の言葉では、「過去100年間に30か国以上の国々で発生したハイパーインフレ」に関しては、すべての国々で、「景気の急激な悪化がもたらす金利の急騰」が発生したことも見て取れるのである。

より詳しく申し上げると、「GDP」と「国家債務」の関係において、「国家債務の比率が高くなりすぎた時に、クラウディングアウトが発生し、金利が急騰する展開」のことであり、この点については、「今後の日本」が、典型的な具体例になるものと感じている。別の言葉では、「1999年から始まった日本の実質的なゼロ金利、あるいは、最近のマイナス金利」が、将来的に、「金融システムの破綻メカニズム」を説明する教科書的な具体例として語り継がれる可能性のことであり、実際には、「金利を上げると、日銀が破綻するだけではなく、世界の金融システムが崩壊する可能性」のことである。

つまり、「民間金融機関が保有する預金」が「中央銀行」に吸い上げられるとともに、「国債」などに投資されている状況のことでもあるが、この結果として、現在では、「民間の金融機関において、資金的な余裕がなくなり始めた状況」となっているのである。より具体的には、「国民の預金」が「日銀の当座預金」として吸い上げられるとともに、「国債」などに投資された結果として、典型的な「短期借り、長期貸し」の事態が発生したために、さまざまな「資金繰りの問題」が発生している可能性のことである。

実際には、今後、「日本の短期金利が0.5%にまで上昇すると、当座預金に対する利払い金額が上昇し、その結果として、日銀が債務超過の状態に陥る可能性」であり、また、同時に憂慮すべきは、「保有する国債価格の下落により、多くの金融機関で、大量の不良債権が発生する状況」のことである。

つまり、日銀は、過去25年余りの期間において、「超低金利状態」を維持しながら、「国家の債務爆弾が破裂するのを先送りしてきた状況」だったが、現在では、「急激な円安」や「不調な国債入札」などにより、「金利の急騰」が抑えきれなくなった状況とも想定されるのである。しかも、今後は、「金融界の大量破壊兵器」と呼ばれる「デリバティブ」のバブル崩壊の可能性も想定されるために、これからの数か月間は、「人類史上においても、きわめて要注意の期間ではないか?」とも感じている次第である。(2024.2.22)
 
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1989年と現在との違い

「日本株の最高値更新」という出来事を見て、多くの人が興奮状態にあるようだが、私自身としては、大きな違和感を覚えざるを得ない状況であり、その理由としては、「38915.87円」という数字の「絶対的、および、相対的価値」が気になるからである。つまり、「絶対的価値」としては、確かに、「日本株が、最高値を更新した」という事実には間違いがないが、「1929年の米国大恐慌の時には、最高値の更新までに、25年しかかからなかった」という事実からは、「日本株上昇の時間的な遅れ」が目立つ状況とも言えるのである。

しかも、「相対的価値」である「他市場との比較」からは、日本の「株式市場」のみならず、「経済的地位」や「技術力」などの低下も気になるために、今回の株高については、決して、手放しで喜べるような状況ではないものと思われるのである。つまり、膨大な規模に成長した「海外の金融市場」を考えると、現在は、「何でもバブルの最終章」が近づいている段階であり、「今回の株高は、世界で最も出遅れていた株式市場の日本に、大量のデジタル通貨が流れ込み始めた事実」を表しているだけの状況のようにも感じられるのである。

別の言葉では、「マネーはストックであり、実体経済はフローである」という事実、すなわち、「大量に創られたデジタル通貨は、さまざまなバブルを引き起こし、最終段階で、実物資産におけるバブルを発生させる可能性」を再認識する必要性のことである。しかも、現時点で必要なことは、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)以降に発生した、さまざまなバブル」に関して、「バブルの崩壊後に、次のバブルに向かって、大量のデジタル通貨が流れ出している事実」を理解することとも考えられるのである。

つまり、「マネーの残高と性質」が理解できた場合には、今回の「日本株の最高値更新」が、決して、単純に喜べるようなものではなく、反対に、「近い将来に、きわめて巨大なインフレの大津波が世界を襲う展開」を危惧せざるを得ない状況ともいえるのである。そして、この理由としては、「2008年前後のデリバティブのバブル」が「日本のバブル」と比較して「約30倍の規模」であり、そのために、これから予想される「世界的な金融大混乱」と「実物資産への資金流入額」も、同様の規模になるものと考えられるからである。

そのために、現時点で必要なことは、「決して、目先の価格変動に惑わされることなく、次の展開に向かっての準備を、着実に実行すること」であり、実際には、「自分の資産を点検しながら、貴金属や資源株、そして、食料品関連など割安株や6ヶ月分の食料などを保有すること」だと考えている。(2024.2.23)
 
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世界的な不動産バブルの崩壊

現在、世界的な「不動産バブルの崩壊」に注目が集まり始めているが、この理由としては、「金融ピラミッドにおけるメルトダウン」、すなわち、「デリバティブのバブル崩壊後、デジタル通貨が国債のバブルを発生、崩壊させた後に、不動産バブルの発生、崩壊を引き起こしている状況」が挙げられるものと考えている。つまり、「マネーの大膨張」については、「金から紙幣、そして、デジタル通貨」というように、「急激な残高増加が、逆三角形のピラミッドを形成するとともに、資産と負債の両立てで膨張した状況」だったことも見て取れるのである。

具体的には、「紙幣の大膨張」は「銀行預金などの急増」につながり、また、「デジタル通貨の大膨張」が「株式や土地、あるいは、国債やデリバティブの大膨張」をもたらした展開のことである。そして、「2008年前後に発生したGFC(世界的な金融大混乱)」以降の世界では、「金融のメルトダウン」、すなわち、「デジタル通貨の縮小とともに、裏側に存在した資産のバブル発生と崩壊」が発生したものと考えられるのである。

具体的には、最初に、「世界的な国債バブルの発生と崩壊」であり、この点については、「米国の30年国債」に象徴されるように、「2020年3月」がバブルのピークだったものと考えている。そして、その後に発生した「不動産バブルのピーク」に関しては、「2023年の半ば」だったものと思われるが、この時の注目点としては、「バブルについては、崩壊後に、その存在が知られる傾向がある」という事実が挙げられるものと感じている。

つまり、「バブルの発生中は、熱狂のあまりに、バブルが認識されにくい状況」となっており、実際には、「不動産バブル崩壊後に発生している株式のバブル」が指摘できる可能性である。具体的には、米国の「マグニフィセント7」と呼ばれる銘柄群のことだが、現在では、「7銘柄から5銘柄に減少中の状態」というように、「徐々に、資金の集中化が発生している状態」、すなわち、「バブルの最終局面」とも理解され始めているのである。

そして、次の予想される「金融メルトダウンがもたらすバブルの発生と崩壊」については、「デジタル通貨から紙幣への移行」を意味する「中央銀行の紙幣大増刷」が考えられるが、この時には、「なんでもバブルの最終章」、すなわち、「実物資産の価格急騰」が始まるものと考えている。つまり、現在では、「金融の逆ピラミッド」において、大量の資金が、徐々に、小さな市場へ向かっており、その結果として、これから予想される展開は、「劇場の火事」と呼ばれる「ボトルネック・インフレ」の世界的な発生のようにも感じている。(2024.2.24)
 
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13632:240329〕