日本の金利
現在、「日本の金利」に対する予想意見が数多く見受けられるが、この問題に関する注意点としては、「金利を決めるのが、日銀などの中央銀行ではなく、世界的な市場動向である」という事実が指摘できるものと考えている。つまり、「中央銀行」よりも「金融市場」の方が、はるかに規模が大きいために、「最終的な市場価格を決定するのは、当然のことながら、世界の金融市場である」という点である。
別の言葉では、「2000年前後から始まったデリバティブのバブル」と「その過程で大量に創造されたデジタル通貨」の存在により、「2000年からの約20年」という期間においては、「最後の段階でマイナス金利までもが発生した」というように、「人類史上において、きわめて異常な金融状況」だったことも理解できるのである。つまり、「世界の金融市場で、先進各国の中央銀行とメガバンクが結託して、さまざまな価格がコントロールされた状況」のことだが、現在では、「デジタル通貨の枯渇」などにより、今までの反動が発生していることも理解できるのである。
具体的には、「インフレの発生」であり、また、「世界的な金融システムの崩壊懸念」のことでもあるが、実際のところ、「日本」では、「国家体力の減少により、大幅な円安に見舞われている状況」であることも見て取れるのである。つまり、他国並みの「3から5%の金利」を容認すると、「税収」のほとんどが「金利負担」に使われてしまうために、「円安を容認しながら、マイナス金利の継続を目論んでいる状況」とも考えられるのである。
その結果として、これから予想される展開としては、「1991年のソ連」などと同様に、「国債の買い手が消滅する事態」であり、実際には、「長期国債のみならず、短期国債の買い手までもが消滅し、慌てて、紙幣の大増刷を実施し始める状況」のようにも感じている。つまり、「マネーの歴史」から言えることは、「民間部門で発生した不良債権を、最後の段階で、中央銀行が引き受ける事態」であり、実際には、「財政ファイナンス」により、「全ての不良債権が、紙幣に交換される展開」のことである。
そして、このような状況に関しては、現在、世界的な理解と認識が進展している段階とも思われるために、今後は、「早い者勝ちで、実物資産の獲得競争が始まる展開」、すなわち、「何でもバブルの最終章」が始まるものと思われるが、現時点で注目すべき点は、やはり、「世界の中央銀行が、すでに大量の金(ゴールド)を買い付けるとともに、現在、銀(シルバー)にまで手を出し始めている状況」とも言えるようである。(2024.2.26)
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新興国と先進国
過去半世紀余りは、「新興国」と「先進国」との較差が顕著に拡大した機関だったものと考えているが、実際のところ、「1980年代の中南米」や「1990年代の東欧」、そして、「2000年代のアフリカ諸国」などについては、「景気の低迷」と「ハイパーインフレ」が共存した状況だったことも見て取れるのである。しかし、一方で、先進諸国については、「1980年代初頭から始まり、40年も継続した金利低下」などの恩恵を受けて、「1980年代の日本バブル」や「米国を中心とした株高や好景気」などからも明らかなように、「本格的なインフレからは、ほど遠い状況」だったことも理解できるのである。
そして、この理由としては、ひとえに、「1971年のニクソンショックから始まった『信用本位制』と呼ぶべき通貨制度」と「1980年代初頭に誕生し、その後、未曽有の規模にまで大膨張したデリバティブの存在」が指摘できるものと考えている。つまり、「先進諸国」は、デリバティブバブルの恩恵により、「超低金利と低インフレ率の状態」だったものの、一方で、「新興諸国」は、前述のとおりに、「多くの国々で、ハイパーインフレに見舞われた状況」だったことも見て取れるのである。
別の言葉では、「新興国」と「先進国」の差は、「コンピューターネットワークの中で、どれほどのデジタル通貨が創り出されたのか?」の違いにより産み出されたものと思われるが、実際のところ、「先進諸国では、仮想現実の世界で、大量のデジタル通貨が、膨大な金融商品を作り出した状況」だったのである。つまり、「デリバティブという金融商品」と「大量のデジタル通貨」が産み出されたものの、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」という「金融面での大地震」により、その後、「仮想現実」の世界で、「インフレの大津波」が「金融メルトダウン」、すなわち、「国債や土地、そして、株式などの何でもバブル」を発生させた状況だったことも理解できるのである。
より具体的には、「デリバティブの崩壊」を隠ぺいするために、「中央銀行のバランスシート大膨張」が発生し、この結果として起こった現象が、「デジタル通貨の枯渇」や「仮想現実から現実世界への資金の染み出し」とも言えるのである。つまり、「デジタル通貨が紙幣に形を変え、実物資産へ流れ始めた状況」のことでもあるが、この点については、今まで水面下に隠れていた「インフレの大津波」が、いよいよ、陸地に表れ始めた状況、すなわち、「何でもバブルの最終章」を意味する「世界的なハイパーインフレ」が発生する可能性を意味するとともに、このことが人々の目に明らかになるのが、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」の崩壊が、世界的に明らかになる時だと考えている。(2024.2.28)
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未来予測の問題点
投資の実践に携わり、間もなく、48年目の年を迎えようとしているが、今までの経験則から言えることは、「未来予測」に関して、「歴史の全体像からは、当然のことが起こっていながらも、自分自身の理解度の狭さや浅さにより、誤った予想をしていた」と言うことである。つまり、初期の頃には、往々にして、「自分の意見は正しいが、相場の方が間違っている」というような考えに陥ったものの、結局は、「自分の意見や理解そのものが、深い歴史認識に基づいていなかった」という点に気づかされたのである。
別の言葉では、現代人が、「戦後からの世界的な経済発展」だけに囚われているために、「戦前に発生したドイツの大インフレやアメリカの大恐慌」などが理解できない状況のことであり、また、「過去800年間の物質的な繁栄」だけに囚われている「西洋人」が、「西ローマ帝国崩壊後の800年間に、どのような世界が展開したのか?」が認識できていない状況などのことである。
つまり、私自身の経験則から理解できることは、「相場の失敗」を繰り返すたびに、「過去を遡り、より深い歴史の研究を実施した」という状況であり、その結果として、現在では、私自身の「既存の常識」に変化が発生した状況のようにも感じられるのである。具体的には、「西ローマ帝国の崩壊メカニズム」が理解できたために、現在の世界情勢が見え始めるとともに、今後の展開もわかりやすくなった状況などのことである。
別の言葉では、シュペングラーが指摘する「成ること」、すなわち、「これから発生する出来事」と、「成ったこと」、すなわち、「すでに発生した出来事」の違いが理解できたようにも感じられるのである。つまり、今までは、「マネーの大膨張」や「金融混乱の発生」などに関して、「メカニズム」が理解できないだけでなく、「発生」そのものが予見できなかったものの、現在では、「過去3000年ほどの世界的な歴史」を研究したことにより、「次に、どのような展開が考えられるのか?」に関して、いろいろな予想を立てることが可能になった状況のことである。
そして、この点については、「神様のジグソーパズル」という言葉が頭に浮かぶが、実際には、「日々の出来事が、相場と同様に、神様の与えた真理」であり、また、「我々の使命が、その出来事の中から、神様のメッセージを読み取ること」という可能性のことであり、結局のところ、「神様の望み」は「三次元にとどまっている社会科学を、四次元、あるいは、五次元以上にまで高めること」のようにも感じている。(2024.3.3)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13644:240405〕