日本の円買い介入
1ドルが160円を付けた「4月29日」に続き、米国FOMCの結果が発表された「5月2日」にも、「日本の通貨当局による為替介入」が実施された可能性が報道されているが、この点については、「通貨当局者の焦り」が現れている状況とも言えるようである。つまり、最後の手段とも言える「財政ファイナンス」の実施を先送りするために、慌てて「円買い介入」を実施し、時間稼ぎを目論んだ可能性のことである。
より詳しく申し上げると、「円高を止めるためには無制限の介入が可能なものの、円安を止めるためには限界点が存在する事実」を熟知しながらも、今回、「日本の通貨当局者が、二度に及んだ介入を実施した可能性」については、「160円の防衛線を守ろうとした状況」だったようにも感じられるのである。別の言葉では、「為替防衛のための利上げ」を避けるために、あえて、「円買い介入」を実施したものと思われるが、この行為につては、ほとんど効果がなかったものと思われるのである。
つまり、「投機筋」にとっては「キャリートレードを行う絶好のチャンス」と理解される可能性のことでもあるが、この理由としては、「今後、日本の通貨当局者が、どれほどの為替介入を実施できるのか?」が理解されている点が挙げられるのである。しかも、「日本の円買い介入」については、その裏側で、「保有している米国債の売却」も見込まれているために、今後は、さらなる「世界的な金融混乱の加速」も想定されるのである。
そのために、これから予想される展開としては、やはり、「いまだに表面化していない約600兆ドルのOTCデリバティブが崩壊する可能性」が挙げられるが、このことは、「世界全体が、1991年のソ連のような状態に陥る可能性」のようにも感じている。具体的には、世界全体が、「大量のCBDC(中央銀行デジタル通貨)」を発行するものの、結局は、「人々が、CBDCを紙幣に変換して、市場で実物資産に交換する動き」が発生する可能性も想定されるのである。
つまり、「政府や通貨への信用」が完全に失われたときには、例外なく、「ハイパーインフレ」が発生するものと考えているが、今回の問題点は、やはり、「世界全体で、同様の現象が発生する可能性」だと考えている。しかも、もう一つの問題点としては、「現在の通貨制度が完成するまでには、1600年程度の時間が必要だった状況」であり、このことは、「文明法則史学」が教えるとおりに、「間もなく、800年に及んだ富の時代が終焉する可能性」を表しているものと感じている。(2024.5.2)
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マネーとクレジット(1)
「ゴールド(金)がマネーで、その他はすべてクレジット(信用)である」というJPモルガンの言葉のとおりに、過去100年余りの期間は、「ゴールドを基にして、預金や債券、そして、デリバティブなどの資産が創り出された」という状況だった。つまり、「バランスシート」という言葉のとおりに、「資産」と「負債」が両立て積みあがっていったわけだが、注目すべき点は、「民間企業と個人」、「民間金融機関」、そして、「中央銀行」というように「金融システムそのものが、三つの部分に分かれている状態」だと感じている。
より詳しく申し上げると、「1990年の日本バブル崩壊」以降、「不良債権が、どのように移行していったのか?」を考えると、結局は、「民間部門で発生した不良債権が、その後、民間金融機関、そして、最後には中央銀行に移行した状況」だったことも理解できるのである。つまり、過去30年以上の期間、「不良債権」の規模は増加し続けていたものの、居所を変えていたために、全体像が見えにくくなっていた状況のことである。
しかも、今回は、「1998年のLTCM事件」などをきっかけにして、「民間金融機関が、オフバランス(簿外)でデリバティブを大膨張させ、バランスシートの急拡大を実施した」という状況だったために、より一層、「金融システムの全体像」が見えにくくなったものと考えられるのである。別の言葉では、西洋の先進各国が協調して、金融システムの防衛を図った結果として、大量のデジタル通貨が創り出されるとともに、「デジタル革命」といわれる状況が発生した展開のことである。
しかし、現在の問題点としては、「バランスシートの非対称性」、すなわち、「資産価格は上下変動に見舞われるものの、負債価格は一定である」という理由により、「資産価格の下落が、大量の不良債権を、世界的に発生させた状況」であることも見て取れるのである。つまり、現在では、「民間部門のみならず、中央銀行においてさえも、大量の不良債権に悩まされている状況」となっており、しかも、「民間部門の資金が、国家によって、ほぼ吸い上げられた事態」とも想定されるのである。
そのために、これから予想される展開は、「世界各国が、大量の紙幣の増刷を実施する可能性」でもあるが、その前に実施される政策は、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の大量発行」だと考えている。つまり、「紙幣には、コンピューターネットワークの中を流れることができない性質」が存在するために、「CBDCの発行」は、その後、「政府への信頼が喪失するとともに、紙幣に交換される展開」となることが想定されるのである。(2024.5.5)
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マネーとクレジット(2)
「米国中央銀行のFRB」が設立された「1913年」以降、世界の金融システムは、時間をかけて、大きな変貌を遂げてきたことも見て取れるが、この時の注目点としては、「1971年のニクソンショック」により、それまでの「金本位制」が崩壊した点が挙げられるものと考えている。別の言葉では、「金から紙幣、そして、デジタル通貨へ」という変化に関して、「1913年」は「金貨本位制」であり、「Ⅰオンス=20.67ドル」だったものが、その後、「1933年」には「1オンス35ドルに値上げされるとともに、金貨の没収と金地金本位制への変化」が発生したことも見て取れるのである。
また、その後は、「1944年のブレトンウッズ会議」により「金為替本位制」に変化したものの、前述のとおりに、「1971年には、金本位制が廃止された」というように、「金融市場、最大級の大事件が発生した状況」だったことも理解できるのである。つまり、「氷のような状態だった通貨が、その後、水のような状態の紙幣となり、最後には、水蒸気のような状態のデジタル通貨に変化した展開」のことである。
そして、この点に関する「私自身の仮説」としては、「マネーである金(ゴールド)」と「クレジットである紙幣やデジタル通貨」の関係性において、「数量と価格が最終段階で同じになる状況」が指摘できるものと考えている。つまり、「マネーが膨張する過程で、一時的に、クレジットの時価総額が増えるものの、最後の段階では、金価格の上昇により、同じ金額に収斂する可能性」のことである。より詳しく申し上げると、「米国における個人の金保有が、1933年から1974年まで禁止されていた」という理由により、「1971年のニクソンショック」までは、「金の時価総額が、クレジットの総量を下回る状況」だったことも理解できるのである。
また、「1971年から現在までの状況」としては、「金(ゴールド)の時価総額」が、「20万トン×1万3000円=2600兆円」というような状況でありながら、「クレジットの時価総額」としては、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」や「約300兆ドルの世界債務残高」などの「目に見えない金融ツインタワーの存在」からも明らかなように、きわめて巨額の残高が存在することも見て取れるのである。
そのために、これから想定される展開は、やはり、「世界的なハイパーインフレの発生」であり、実際には、「金(ゴールド)を始めとした貴金属、あるいは、穀物や原油などの実物資産の価格が急騰する展開」だと考えている。(2024.5.7)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion13746:240607〕