本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(482)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主義研究会会員
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21世紀の戦争

「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻」や「イスラエルによるガザの虐殺行為」など、「21世紀の現在でも、世界的に戦争や紛争が起きている状況」となっているが、この事実から想起されることは、「20世紀に発生した二種類の戦争」のようにも感じている。つまり、「20世紀の前半」が「軍事力を背景とした領土の奪い合い」であり、また、「20世紀の後半から現在」は「金融力を背景とした資金の奪い合い」が発生した可能性である。

より詳しく申し上げると、「二つの世界大戦」に象徴されるように、20世紀の前半は、世界各国が、「軍事力による領土の奪い合い」を行ったものの、現在では、「戦争に対する反省」を伴いながら、「金融力による資金の奪い合い」を行っている状況のようにも思われるのである。別の言葉では、「800年間にも及んだ西洋の富の時代の最終章」として、「マネーの大膨張」が発生しており、この過程で、「西洋の先進諸国が、デリバティブの大膨張により、世界の富を奪おうとしていた状況」のようにも感じられるのである。

その結果として、「中国やロシアなどのBRICS諸国」は、「脱ドル化の為替政策」や「貴金属の買い集め」などにより、「世界的な金融面での戦争」に対応しようとしている状況とも想定されるのである。別の言葉では、「史的唯物論」の「資本主義の崩壊後に共産主義の時代が訪れる」という言葉を鵜吞みにして、今回の「ウクライナへの軍事侵攻」を、中国とロシアが共謀して実施した可能性のことである。

しかし、実際の効果としては、「今回の戦争で、世界中の人々が、はっきりとした映像により、戦争の悲惨さ、冷酷さ、そして、不毛さを再認識した状況」ともいえるために、今後は、「世界的な反戦や核兵器廃棄の動きが、より一層、高まる可能性」も想定されるのである。つまり、「20世紀前半の軍事力による領土の奪い合い」については、ほぼ完全に、人々の拒否反応が出来上がりつつある状況とも思われるが、今後の注目点としては、「もう一つの戦争」とも言える「金融力による資金の奪い合い」に関して、本格的な「終戦の時期」を迎える可能性が指摘できるものと思われるのである。

具体的には、以前から指摘してきた「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約300兆ドルの世界債務残高」が完全崩壊する可能性のことだが、現在は、「米国を中心とした西洋先進諸国の国家債務残高が、これ以上、放置できない状況」であることが世界的に認識されるとともに、「金融敗戦」ともいえる「世界的な金融システムや通貨制度の崩壊」に対して、多くの人々が準備を始めた状況のようにも感じている。(2024.8.28)
 
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ゼロ金利バブルの崩壊

「マスコミの特徴」として挙げられる点の一つに、「バブルの崩壊前はバブルを礼賛するものの、バブルの崩壊後は、一転して、バブルの非難と犯人探しに奔走する事実」が存在するものと考えている。そして、現在、この対象となっているのが、「ゼロ金利のバブル」ともいえるようだが、実際のところ、今までは、「日銀の超低金利政策」などに対して、まともな分析がほとんど実施されず、また、「日銀のバランスシート大膨張」についても、否定的な意見が見られないような状況だったことも見て取れるのである。

具体的に申し上げると、「日銀の当座預金」に関して、従来は、「準備預金」という名称であり、「残高の増加は金融引き締め、そして、減少は金融緩和」という状況だったものが、現在では、反対に、「当座預金の増加は金融緩和である」と理解されているのである。つまり、「金融面における大本営発表」のような事態が、「2000年前後から始まっていた状況」だったが、「マスコミの反応」としては、ご存じのとおりに、最近まで、「日銀のバランスシートや国家財政赤字の増加」に関して、ほとんど問題視してこなかったのである。

ところが、最近の変化としては、「野放図な国家財政に対する警告」の記事が、頻繁に掲載される状況となっており、この理由としては、「日銀のゼロ金利解除」が挙げられるものと考えている。つまり、「ゼロ金利のバブル」が存続している状況下では、「MMT理論」や「異次元金融緩和の妥当性」などが紹介されていたものの、いったん、「ゼロ金利政策」が解除されると、今度は、突如として、「誰が国債を買うのか?」などの意見が出る状況となっているのである。

別の言葉では、現在のような「世界的な国家財政危機」に関しては、30年以上も前から指摘されていたことであり、現時点で必要なことは、「なぜ、30年も、問題の先送りが可能だったのか?」の説明ともいえるのである。具体的には、「1997年から98年にかけての金融混乱」に関して、「デリバティブの大膨張により、民間金融機関のバランスシートが簿外で大膨張した結果、大量のデジタル通貨が創造された事実」が、「国家債務問題の隠蔽を可能にした原因」ともいえるのである。

そのために、今後の注意点としては、「当時と比べて、不良債権の金額が約30倍にまで増えた事実」であり、また、これから想定される「世界的な金融大混乱」に関して、「人類史上、未曽有の規模となる可能性」が指摘できるが、この点に関して参考になるのは、やはり、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊」しか存在しない事実のようにも感じている。(2024.8.30)
 
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通貨発行益と税金(1)

貨幣の歴史をたどると、「20世紀から21世紀にかけての世界的なマネーの大膨張」については、「1600年前の西ローマ帝国の末期」を上回り、人類史上、最大規模だったものと理解できるが、この原因としては、やはり、「村山節(みさお)の文明法則史学」が教える「800年ごとに交代する東西の文明」が挙げられるものと考えている。つまり、「自然科学」における「ケプラーからニュートンへという展開」が、現在、「社会科学」においても発生している可能性が想定されるものと思われるが、実際には、「四次元の経済学や社会科学」ともいえる「未来予測が可能な状況」への発展である。

別の言葉では、「ライプニッツの予定調和説」などが指摘する通りに、「人類の進化」に関しては、「神の見えざる手」が働いており、今後も、さらなる進化が想定される可能性のことである。つまり、「11次元にまで進化した自然科学」を参考にしながら、今後、「社会科学が飛躍的な発展な発展を遂げる可能性」のことでもあるが、この時に重要な役割を果たすのが、「お金の謎」の解明のようにも感じられるのである。

より詳しく申し上げると、「マネーが、どのようなメカニズムで膨張し、また、収縮するのか?」ということだが、この点に関して、重要な役割を果たしているのが、「通貨発行益と税金」のようにも感じている。つまり、資本主義の初期段階では、「実体経済の成長に伴い、マネーの膨張が発生する展開」だったことが理解できるが、その後は、「中央銀行の創設」とともに、「金本位制の変遷」と「信用だけを本位とした全く新たな通貨制度」が産み出されたことも見て取れるのである。

そして、この過程で、「どの主体が、どのような通貨発行益を得ていたのか?」を考えることにより、「マネー大膨張の歴史や、今後、どのような展開が想定されるのか?」が理解できるものと思われるのである。別の言葉では、「金本位制」の時に制限されていた「通貨発行益の獲得」については、「1971年のニクソンショック」以降、「糸の切れた凧」のような状態となり、「無制限に増え続けた状況」だったことも理解できるのである。

また、この時の注目点としては、「民間部門で産み出された利益が、税金という形で、国家によって吸収された事実」ともいえるのである。つまり、「四種類の税金」が課されることにより、徐々に、「民間の資金が、国家によって吸収された状況」でもあったが、今後の注目点としては、やはり、「紙幣」という最終形態により、「国家がすべての通貨発行益を得る可能性」だと考えている。(2024.9.1)
 
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13908:241011〕