本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(488)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主義研究会会員
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金融破綻のメカニズム(4)

「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」を境にして、世界のマネーやクレジットに、大きな変化が発生したものと感じているが、実際には、「民間部門のバランスシート膨張が止まり、中央銀行のバランスシートが膨張し始めた状況」のことである。別の言葉では、「四種類の税金」のうち、「目に見える現在と将来の税金」に加えて、三番目の「国民が気付かない形でのインフレ税」が課され始めたものと想定されるのである。

より詳しく申し上げると、「日銀」を中心にして、「中央銀行が民間部門から資金を借り入れて、国債を購入した事実」については、「民間部門の資金を国家へ移転させる効果」を持つことも理解できるのである。つまり、「リフレーション政策」と呼ばれる金融政策でもあるが、この時の問題点としては、「誰が、どのようにして、国家の借金を返済するのか?」が指摘できるのである。

より具体的には、「1945年の日本」などと同様に、「最後の段階で、紙幣の増刷が実施される可能性」が危惧されるわけだが、この点に関して、今回、最も難しかったことは、やはり、「デリバティブを利用した民間金融機関のバランスシート大膨張」が挙げられるものと感じている。つまり、「2009年から始まった先進各国のQE(量的緩和)」については、「デリバティブの崩壊を隠ぺいするために、中央銀行が国債などの大量買い付けを実施した状況」とも想定されるものの、多くの人々は、「この結果として発生した何でもバブル」に目を奪われた状況だったことも見て取れるのである。

別の言葉では、「膨張し続ける国家の債務残高」や「中央銀行が国債を買い続ける理由」などを無視して、「目先のマイナス金利」と「その結果として発生した土地や株式のバブル」に熱中した状況だったことも理解できるのである。しかし、相場の常として言えることは、「時が全てを証明する」という言葉のとおりに、「異常事態は長続きせず、必ず、正常な状態に回帰する事態」であることも見て取れるのである。

しかも、今後は、「四種類の税金」の四番目に相当する「国民が気付く形でのインフレ税」が、世界的に課され始めるものと思われるが、実際には、「中央銀行によるCBDC(中央銀行デジタル通貨)の大量発行、あるいは、紙幣の大増刷が実施される可能性」である。つまり、「中央銀行が大量の通貨発行益を得て、今までの不良債権を一掃する可能性」のことでもあるが、この結果として発生する現象は、やはり、「人類史上、未曽有の規模での世界的なハイパーインフレ」のようにも感じている。(2024.10.3)

 
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2008年と1929年、そして、424年

現在、世界的に議論され始めていることは、「今回の世界的な混乱が、過去のどのような混乱期に酷似しているのか?」ということであり、実際には、「2008年前後のGFC(世界的な金融混乱)」や「1929年の大恐慌」などが挙げられているが、私自身が最も注目したのは、「1600年ほど前の西ローマ帝国の崩壊」までもが指摘され始めている事実だった。つまり、現在では、「アメリカ帝国の崩壊」が、海外でも、真剣に議論され始めており、そのために、私自身としても、「世界の金融混乱がスピードを速めてきた可能性」を考慮せざるを得なくなった状況のようにも感じられたのである。

別の言葉では、「金融混乱の実態が、世界的に深く理解され始めたのではないか?」とも思われたわけだが、この点に関する注意点としては、「2008年と1929年の混乱は、どちらの場合も、民間金融機関の問題点であり、国家やグローバル共同体に関するものではなかった」という点が指摘できるものと考えている。つまり、「1929年の大恐慌」については、「1923年のドイツのハイパーインフレ」が再来する可能性におびえた「米国の金融当局者」が、「急激な金融引き締めを実施したことにより、世界的な民間銀行の連鎖破綻を引き起こした」という状況だったのである。

また、「2008年の GFC」については、「民間金融機関が簿外で大膨張させたデリバティブの残高がピークに達した事実」が指摘できるが、この時も、「1929年」の時と 同様に、「国家の財政については、健全性が保たれていた」という状況だったことも理解できるのである。つまり、「国民が抱く国家や通貨への信頼感」については、全く問題がなかったものと思われるが、今回の「2024年の混乱」については、「西暦424年前後の西ローマ帝国」と同様に、「グローバル共同体や国家、あるいは、帝国への信頼感」が喪失している状況のようにも感じられるのである。

より具体的には、「村山節(みさお)の文明法則史学」が指摘するとおりに、「西洋の物質文明が崩壊する可能性」のことであり、実際には、「覇権国が財政破綻する状況」のようにも思われるのである。つまり、「最も強い国が財政的な破綻をした場合に、通貨への信頼感が完全喪失する状況」が想定されるわけだが、過去の歴史を振り返ると、今までの約500年間は、次々と覇権国が交代し、より巨大な共同体へと移行してきた状況だったことも理解できるのである。しかし、現在は、「世界全体が、国家の財政破綻危機に見舞われる状況」となっており、この事実を、過去の歴史から考えると、やはり、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊」と似たような状態のようにも感じられるのである。(2024.10.5)
 
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赤子が泣き始める時

「泣く子と地頭には勝てぬ」という諺のとおりに、現代版の「地頭」とでも呼ぶべき「税金の徴収」については、現在、「多くの国民が増税に悩まされている状況」であり、しかも、海外では、「米国を中心にして、国家の財政赤字が持続不能な状態に陥る可能性までもが危惧される状況」となっているのである。つまり、「誰が、今後、国債を買い、国家に資金を供給するのか?」が、世界的に議論され始めている状況とも言えるが、この点については、「過去の歴史を振り返りながら、どのような推移だったのか?」を考える必要性があるものと感じている。

具体的には、「1945年の敗戦以降、日本で、どのような種類の税金が課されたのか?」を考えることであり、実際には、「1965年までが、所得税などの『目に見える現在の税金』が課された状況」だったことも理解できるのである。そして、その後は、「国債の発行」という「目に見える将来の税金」が課され始めたものの、実際には、「国家の財政赤字と債務残高が増え続ける一方の状況」だったことも見て取れるのである。

つまり、「1945年から現在までの約80年間における税金徴収」については、「お米を炊く時の格言」である「初めちょろちょろ、中ぱっぱ、赤子泣いても蓋取るな」のような展開であるとともに、現在は、最後の「赤子が泣き始める段階」に差し掛かったものと思われるのである。具体的には、「デリバティブの大膨張」と「量的緩和(QE)の金融政策」が、「民間金融機関のオフバランスシート大膨張」と「四種類の税金の三番目である、中央銀行による『目に見えないインフレ税』が課された状態」に相当する可能性である。

しかし、現在では、「中央銀行の資金繰り」に問題が出始めるとともに、世界各国が、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の大量発行か、あるいは、紙幣の大増刷」を実施せざるを得ない状況に追い込まれた段階のようにも感じられるのである。そして、このことは、「お腹をすかせた赤子が泣き始めたような状況」とも思われるが、この時の問題点としては、「水蒸気のような状態であるデジタル通貨が、外気によって、一気に冷やされる可能性」とも認識できるのである。

具体的には、現在の「デジタル通貨」が「裸の王様」のような状況、すなわち、「裏付けが存在しない状態」であることに気付いた人々が、一斉に、「貴金属」や「食料」などの実物資産に殺到し始める展開であり、実際には、このことが「四種類の税金の四番目」である「目に見えないインフレ税が、国民の気付く形で課される状況」を表しているのである。(2024.10.9)
 
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
 
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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