2025.1.9
トランプの目くらまし作戦
1月20日の「大統領就任日」を迎えて、トランプ次期大統領は、現在、さまざまなコメントを発しているが、多くについては、「目くらまし作戦」のようにも感じている。具体的には、「グリーンランドの買収」や「パナマ運河の返還」、そして、「カナダがアメリカの51番目の州になる可能性」や「メキシコ湾の名称変更」などのことだが、これらの点については、基本的に、「国民の目を内政問題から外交問題へと移転する思惑」が存在する状況のようにも感じられるのである。
別の言葉では、「政治の常とう手段」とでも呼ぶべき「内政問題に行き詰った時に引き起こされやすい対外戦争」ではなく、「人々が予期していなかったような事案」を提示することにより、「時間稼ぎ」と「問題の先送り」を目論んでいる可能性のことである。そのために、現時点で必要なことは、「現在のアメリカ、そして、世界において、何が最も重要な問題なのか?」を考えることであり、この点については、実際のところ、「先進国を中心にした国家債務残高の急増」のようにも思われるのである。
より詳しく申し上げると、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制」と呼ぶべき「人類史上、初めての通貨制度」が終焉の時を迎えている可能性であり、実際には、現在、「財政ファイナンスが、世界的に実施される可能性」も想定されるのである。つまり、「コンピューターネットワークに存在する『単なる数字』が本位通貨となり、大量の資産と負債を世界全体で積み上げた状況」については、すでに持続可能な状態ではなく、間もなく、この点に関する大事件の発生も予想されるのである。
そのために、現時点で必要なことは、通貨が発明された「5000年前」まで人類史を遡りながら、「どのようなメカニズムで、現在のデリバティブや債券のバブルが発生したのか?」を考えることとも思われるのである。別の言葉では、「経済学」を始めとした「社会科学の未熟さ」を根本から認識しながら、「新たな理論構築」に励むことでもあるが、実際には、「未来予測が可能な経済学」の発展などである。
そして、この点に関して、今回の「トランプの目くらまし作戦」は、「世界中の人々に、さまざまな問題点を提起しながら、気付いた時には、本格的な金融大混乱が始まっていた」というような状況を提供するものと感じている。つまり、「既存のシステム」を崩壊させながら、「次の時代」が始まる「キッカケの四年間」になるものと思われるために、現在の我々に必要なことは、「決して、彼の言葉に惑わされないこと」とも言えるようである。
2025.1.13
明日は我が身の中国経済
現在の中国経済については、「数年ほど前の繁栄」が信じられないほどの落ち込みを見せている状況ともいわれているが、この理由としては、やはり、「習近平の失策」が挙げられるものと考えている。具体的には、「マルクス主義的中華思想」という考えのもとに、「資本主義崩壊後に、中国および中国共産党が世界の覇権国家の指導者になる目標」を掲げ、戦狼外交などを行ってきた状況のことである。
しかし、実際には、「外国資本の逃避」や「国内経済の落ち込み」、そして、「国民からの信用喪失」などにより、「人類史上、まれにみるほどのスピードで、経済的な衰退と国家の没落が発生している状況」ともいえるのである。別の言葉では、「海外からの資金流入で急成長した中国経済が、過去数年間のうちに、急速な資金的枯渇に見舞われるとともに、民族大移動の後半部分に移行した可能性」のことである。
つまり、「西暦376年から476年にかけて発生した西ローマ帝国の民族大異動」については、前半部分が「大都市への人口移動」であり、この時には、「巨大な大都市が形成され、マネーの大膨張が発生した状況」だったものの、後半部分は、反対に、「大都市での生活が難しくなり、人々は、地方や海外へと移住し始めた展開」だったことも見て取れるのである。そのために、私自身としては、「現在の中国が、民族大移動の後半を象徴している可能性」に注目してきたが、現時点では、「この動きが、他国に波及する可能性」にも注視し始めた状況ともいえるのである。
より詳しく申し上げると、ケインズなどが指摘したとおりに、「通貨の堕落」や「資金的な枯渇」により「経済を崩壊させる力が働く状況」のことであり、現在の中国は、まさに、この典型例となっているようにも思われるのである。しかも、先進諸国についても、現在、同様の力が働き始めている可能性も想定されるために、今後の注目点は、「大量に存在するマネーが、これから、どのような商品の価格を暴騰させるのか?」だと感じている。
具体的には、「2008年前後のGFC(金融大混乱)」という「金融の大地震」が引き起こした「世界的なインフレの大津波」が、「2020年前後に債券のバブル崩壊」、そして、その数年後に「不動産バブルの崩壊」を発生させた状況を理解することである。つまり、現在では、「世界的な株式のバブルを崩壊させながら、実物資産価格の暴騰を引き起こそうとしている段階」とも想定されるために、今後の注目点は、「先進諸国においても、現在の中国と同様に、大都会での生活が苦しくなる可能性」とも思われるのである。
2025.1.14
3次元の実体経済と4次元のマネー
50年近くに及ぶ「私自身の実践投資」を振り返ると、「3次元の実体経済」の分析よりも「4次元のマネー」の分析や理解の方が、未来予測に関して、はるかに役立ったものと感じている。つまり、「実体経済」に関しては、基本的に、「フローの性質」、すなわち、「今日の仕事が翌日も継続される保証がない状態」のために、「時間的な持続性や連続性」が必要とされる「未来予測」に関しては、ほとんど役立たなかったようにも思われるのである。
しかし、一方で、「マネー」に関しては、「ストックの性質」、すなわち、「残高が継続して積みあがる性質」、そして、「実体経済の動向に左右されにくく、また、長期的な連続性が判断しやすい状況」のために、「次にどのような展開が発生するのか?」が理解しやすかった状況のようにも感じられるのである。別の言葉では、「共同体の規模拡大に伴い、マネーの残高が増えていった状況」を理解することでもあるが、この点に関してもっとも悩まされたのが、「通貨発行益と税金との関係性」だったようにも考えている。
具体的に申し上げると、「民間企業の成長に伴い民間金融機関が成長した段階」については、既存の「マクロ経済学」で議論されていたものの、問題は、「1980年代の初頭から始まった、民間金融機関が簿外でデリバティブを大膨張させた事実」でもあった。つまり、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」において、「前半の約26年間」は、「日本を中心としたバブル相場の発生と崩壊」が「マネーの膨張と縮小」、あるいは、「不良債権の移行」に関して、大きな要因となったのである。
しかし、一方で、「後半の約26年間」、すなわち、「1998年から2024年」においては、「欧米諸国を中心としたデリバティブの大膨張が、前半と比較して約30倍ものバブルを発生させた状況」だったことも理解できるのである。しかも、「この過程で、どのようにして不良債権が移行し、また、どのようにして新たなマネーが創造され、その後に税金として政府に回収されたのか?」を理解することにより、「資産価格の上昇メカニズム」が説明可能な状況だったようにも感じられるのである。
つまり、「2008年のGFC(世界的な金融大混乱)」以降のバブルについては、最初に、「世界的な国債価格の上昇と下落」であり、また、その次には、「世界的な不動産価格の上昇と下落」、そして、現在では、「世界的な株価の上昇と下落」が発生している状況でありながら、今後は、「大量の資金が、一斉に、貴金属や原油、あるいは、農産物などの実物資産へと殺到し始める展開」のことである。
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion14103:250214〕