2025.1.31
日銀のQT
「植田日銀総裁の思惑」として、以前に述べたことは、「最終的に1945年以降に発生した日本敗戦時のハイパーインフレを覚悟しながら、その時までは、できるだけ時間稼ぎを行う可能性」でもあったが、今までの日銀の行動を振り返ると、「この推測は正しかったのではないか?」とも感じている次第である。つまり、現在では、「世界中の人々が、債務残高の大膨張を危惧するとともに、ハイパーインフレの発生時期を考慮している段階」とも考えられるからである。
別の言葉では、「植田日銀総裁の思惑が、世界中で理解され始めた状況」、すなわち、「どのような言葉を使おうとも、日銀のバランスシートに、問題のすべてが表れている状況」のようにも感じられるのである。具体的には、「当座預金残高」や「日銀券の発行残高」、あるいは、「その他の預金残高」などの負債項目を見ることにより、「日銀の資金手当て」に関する状況が理解できるとともに、「国債の保有残高」や「貸付金」などの資産項目を見ることにより、「今後の金融政策」に関する思惑が読める可能性である。
より詳しく申し上げると、現在では、「民間金融機関の資金繰り」に関して、「金利上昇がもたらす保有債券の含み損が増えている状況」、すなわち、「民間金融機関の資金繰り」が厳しくなり始めており、その結果として、日銀の「当座預金」や「政府預金」などの残高が増えにくくなっている状態のようにも感じられるのである。そのために、「その他の預金」などで資金手当てをしながら、「国債保有残高の減少」などにより「日銀のQT(量的縮小)」を実施している状況とも思われるが、今後の注目点としては、やはり、「いつ、この方法に限界点が訪れるのか?」とも考えられるのである。
具体的には、「いつ、紙幣の増刷を始めるのか?」ということでもあるが、この点に関する注目ポイントは、「いつ、国債価格の暴落が始まるのか?」、あるいは、「いつ、国債の入札に関して、問題が発生するのか?」だと考えている。つまり、「1991年のソ連」などと同様に、最初に、「長期国債の買い手」が消滅し、その後に、「短期国債の買い手」が消滅する展開のことでもあるが、現在は、「長期金利の上昇により、金融機関が保有する債券の含み損が増えている段階」とも言えるようである。
そして、間もなく、「デリバティブのバブル崩壊」により、「世界の金融システム」が崩壊する可能性も想定されるが、このような状況下で発生する変化は、当然のことながら、「世界各国の中央銀行が、大量に紙幣を増刷する可能性」だと考えている。
2025.2.3
トランプ関税の経済効果
米国のトランプ大統領は、2月1日に、「トランプ関税の大統領令」に署名したが、この行為に関する経済効果については、「三次元の実体経済」よりも「四次元のマネー」の方が、より説明可能な状況のようにも感じている。つまり、「今後、世界経済に対して、どのような影響が出るのか?」を考えると、「実体経済」の観点からは、「さまざまな商品の価格や販売数量などに関して、いろいろな影響が出るとともに、具体的な統計数字が出るまでに数か月間が必要とされる状況」とも理解できるのである。
しかし、一方で、「マネー」の観点から判断できることは、「金融界の大地震」ともいえる「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」が発生させた「世界的なインフレの大津波」が、今回の「トランプ関税」により、「世界の株式から実物資産へと移行を始める展開」とも認識できるのである。つまり、今までに発生した「何でもバブル」、すなわち、「デジタル通貨の海において、最初に債券バブル、そして、その後に不動産バブル、そして、現在では、米国を中心とした株式のバブルの発生と崩壊」という展開に関して、今後は、「大量の資金が、貴金属や原油、そして、食料品などへの実物資産に殺到し、価格が急騰する展開」も想定されるのである。
別の言葉では、「現代版グレシャムの法則」、すなわち、「これから値下がりすると思われる商品は手放し、これから値上がりすると思われる商品を手元に置く行為」が働くことにより、今後は、「無制限に膨張可能な金融商品」から「生産量に限界が存在する実物商品」へと、世界の資金が移動するものと思われるのである。より具体的には、「世界的なハイパーインフレが発生する可能性」のことでもあるが、実際には、「数量が限られている実物商品の奪い合いが、世界的に発生する展開」のことである。
そのために、今後の注意点として指摘できることは、「大量に創造されたデジタル通貨の恩恵により発展したアメリカの変化」であり、実際には、「デリバティブのバブル崩壊により、ほぼ瞬間的に、デジタル通貨が枯渇する事態」とも想定されるのである。別の言葉では、「さまざまな商品価格の高騰により、世界的な換物運動が発生する可能性」のことであり、また、その結果として予想される現象は、「共同体のさらなる分裂と崩壊により、商品の奪い合いが発生する可能性」のようにも感じている。つまり、「世界的な金融システムが崩壊し、未曽有の規模での大インフレが発生する可能性」のことでもあるが、この点については、やはり、「1600年前に発生した西ローマ帝国の崩壊」が、最も参考になる具体例とも言えるようである。
2025.2.5
ロンドン金プールとニクソンショック
現在、「国際商品市場における金と銅との米国流入」が、世界的な注目を浴び始めているが、この点については、数年前から指摘されてきた「世界的な貴金属の奪い合い」を象徴する出来事の一つのようにも感じている。しかも、今回の出来事は、「1960年代のロンドン金(ゴールド)プールの崩壊」や「1971年のニクソンショック」と同様に、「既存の通貨システム崩壊」の予兆のようにも思われるのである。
より詳しく申し上げると、「1961年から1968年まで実施されたロンドン金プール」については、「欧米7カ国が手持ちの金をプールし、ロンドンの金市場の操作を実施することにより、金価格の安定を図ろうとしたもの」と説明されているが、実際には、「金本位制の崩壊を防ぐために、35ドルの金価格を維持しようとした動き」とも考えられるのである。
しかし、その後の展開としては、「ベトナム戦争で戦費の乱用を行ったアメリカに対する信用喪失」が発生し、「フランスやドイツなどが、米ドルではなく、金(ゴールド)による支払い」を迫った結果として、それまでの「金を本位とした通貨制度」が崩壊したことも見て取れるのである。つまり、「1971年のニクソンショック」以降は、「政府の信用などを本位とした通貨制度」が始まったものの、現在では、「1960年代の後半」と同様に、「大量の政府債務を積み上げる米国への信用喪失」が、世界的に発生している状況とも言えるのである。
より具体的には、「既存の通貨制度と金融システムが崩壊を始めている可能性」のことでもあるが、この点については、「約50年」という「ケインズが指摘する通貨制度の寿命」と合致する状況のようにも思われるのである。つまり、冒頭の「世界的な貴金属の奪い合い」については、「トランプ関税がもたらした一時的な動き」ではなく、十年以上も前から始まっていた「アメリカ帝国の崩壊」を示唆している可能性のようにも感じられるのである。
そのために、今後の注意点としては、「今回のデジタル革命や米国のマグニフィセント7などが、デリバティブとデジタル通貨の絶頂期を象徴していた可能性」を認識しながら、「村山節(みさお)の文明法則史学」が指摘する「西暦1200年から約800年間も継続した物質的な利益を求める西洋文明」が、「1600年前の西ローマ帝国」と同様に、終焉の時を迎えている可能性を考えることのようにも思われるのである。
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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