本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(501)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう( ほんまゆたか) : ポスト資本主義研究会会員
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2025.1.22

量的緩和とインフレ税

今後の「日本の金融政策」を考える時に避けて通れない点は、今までに実施された「量的緩和(QE)」に関して、「経済的、および、歴史的意味合い」を考えることとも思われるが、実際には、「量的緩和」が「インフレ税の徴収」の役割を果たしていた可能性を認識することである。つまり、日本から始まった「量的緩和」については、基本的に、「中央銀行である日銀が、民間の資金を利用して国債を購入し、超低金利状態を造り出した状況」とも言えるが、この点については、「国債」という「目に見える将来の税金」に関して、「国民の気付かないうちに徴収していた状況」とも理解できるのである。

より詳しく申し上げると、「1945年の敗戦」以降、約20年間は、「所得税」などの「目に見える現在の税金」で国家財政が運営されていたものの、「1965年」からは、再び、「国債」という「目に見える将来の税金」が徴収され始めたことも見て取れるのである。そして、その後は、「1980年代の日本のバブル」の発生と崩壊により、「約300兆円もの不良債権」が発生し、その結果として、「1997年から98年の金融大混乱」へと結びついたわけだが、この時にも、「日銀のバランスシート」が膨張し、「わずかながらも、目に見えないインフレ税が課され始めていた状況」だったものと考えられるのである。

しかし、その後に発生した「より大きな変化」としては、「2000年前後から始まったデリバティブの大膨張」が指摘できるが、このことは、「先進諸国の民間金融機関による、簿外でのデリバティブ大膨張」を意味していたのである。つまり、「日本のバブル」の時には、「日本の金融機関を中心にしたバランスシートの大膨張」により「大量のマネーが創造された」という状況だったものの、「デリバティブ」に関しては、「欧米の金融機関を中心にした簿外でのバランスシート大膨張」であり、実際には、「日本のバブル時の約30倍」という規模だったものと想定されるのである。

そして、現在の「世界的な長期金利の上昇」については、「中央銀行のバランスシート大膨張」に関して「民間からの資金借り入れが難しくなった状態」、すなわち、「究極のクラウディングアウト」とでも呼ぶべき状況に陥っている可能性も考えられるのである。そのために、これから「世界各国の中央銀行」が取れる手段としては、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の大量発行」か、あるいは、「紙幣の大増刷」しか残されていない状態とも思われるが、このことが意味することは、「中央銀行や国家に対する信用の完全消滅」であり、このような状況下では、「1991年のソ連」などと同様に、「人々が、一斉に、実物資産への換物運動を始める展開」も想定されるようである。

2025.1.23

トランプ大統領の新たな4年間

トランプ大統領の「新たな4年間(2025年から28年)」に関しては、「前回の4年間(2017年から21年)」とは違い、「いばらの道」になるものと考えているが、実際には、「金の切れ目が縁の切れ間」や「無い袖は振れぬ」などの諺のとおりに、「資金面での苦境」が待っている状況とも想定されるのである。別の言葉では、「前回の4年間」が、「ゼロ金利」などに象徴されるように、「アメリカ経済とデジタル化の絶頂期」だったようにも感じられるが、今後の「新たな4年間」については、「以前に発行した国債の借り換え問題」が発生するとともに、今まで隠蔽されてきた「デリバティブのバブル崩壊」も表面化するものと思われるのである。

より詳しく申し上げると、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊時」と同様に、「民族大移動の後半戦」へと移行する可能性が想定されるが、具体的には、現在の「中国」のように、「大都会の生活が難しくなった人々が、地方や海外などへと移り住む事態」のことである。つまり、「マネーの力」により大都会に引き付けられてきた人々が、「信用消滅」がもたらす「インフレ(通貨価値の下落)」により、大都会を離れざるを得なくなる状況のことでもあるが、この点については、「全ての道はアメリカに通ず」というような「前回の4年間」とは違い、「今後の4年間」は、「1990年代と同様に、金融混乱が発生し、アメリカの信用が失われる可能性」も予想されるのである。

より具体的には、「デジタル通貨」そのものに対する認識の変化のことでもあるが、実際には、「メガバンクの巨額損失や連鎖破綻」などにより、現在の「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」が崩壊する可能性のことである。つまり、「通貨制度の寿命は約50年」というケインズの言葉のとおりに、現在の通貨制度に関しては、制度疲労を起こしている状況となっているものと考えられるのである。

そのために、現時点で必要なことは、「これから、どのような時代が訪れるのか?」を世界全体で考えることとも思われるが、過去の歴史から理解できることは、やはり、「西暦425年前後の西ローマ帝国」が、最も参考になる可能性とも言えるのである。しかも、現時点では、「村山節(みさお)の文明法則史学」が、最も正確に現状説明している状況とも思われるために、今後の重要なポイントとしては、「西洋の物質文明」と「東洋の精神文明」の関係性を理解しながら、「どのようにしたら、経済学などの社会科学が次元的上昇を達成できるのか?」を考えることであり、また、「11次元にまで上昇した自然科学」の歴史を参考にすることのようにも感じている。

2025.1.27

ベイルインとベイルアウト

海外では、現在、「JPモルガンのダイモンCEO」や「ブリッジウォーターのレイ・ダリオ氏」などの著名人が、盛んに、「金融システムの崩壊危機」を訴えているが、この理由としては、かつての「大きすぎて潰せない(Too Big To Fail)」という認識が、現在では、「大きすぎて救えない(Too Big To Be Saved)」に変化している状況が指摘できるものと考えている。別の言葉では、以前の「ベイルアウト」、すなわち、「危機に陥った金融機関に対して国や中央銀行・国際機関のような公的主体が資金を注入する方法」が。現在では、「ベイルイン」、すなわち、「投資家や債権者の負担で銀行の破綻を回避する方法」へと移行を始めたものと思われるのである。

より詳しく申し上げると、現在では、「先進各国の政府や中央銀行までもが破綻の危機に瀕している状態」となっているために、以前とは違い、「危機に陥った金融機関の救済」が難しくなっている状況とも言えるのである。つまり、現在では、「世界の金融システムそのものが、崩壊する可能性」が危惧されているために、今後は、「債務の貨幣化」を意味する「財政ファイナンス」が想定されているものと考えられるのである。

また、「なぜ、これほどまでの危機が予想されているのか?」については、基本的に、1600年前に発生した「西ローマ帝国崩壊」以降の貨幣史を研究する必要性があるものと思われるが、実際には、「西暦400年代から1900年前後」までの「約1500年間」は、「金や銀が通貨として使用されていた状況」だったことも見て取れるのである。つまり、この期間の「マネーの残高」については、現在とは違い、ほとんど変動がなかったものの、「過去100年間」、特に、「1971年のニクソンショック」以降は、「人類史上、未曽有のスピードで、マネーの大膨張が発生した状況」だったことも理解できるのである。

そのために、今後の展開としては、「ベイルインの実施」により「金融機関や政府への信用」が、ほぼ瞬間的に消滅し、その結果として、世界の資金が、一斉に、換物運動へと向かい始める展開も想定されるのである。つまり、「信用は築き上げるのに長い時間が必要でありながら、崩壊は一瞬のうちに発生する」という言葉のとおりに、「人類が、今まで積み上げてきた通貨への信用が、驚くほど短期間のうちに崩壊する可能性」のことである。しかも、今回は、今まで人類が経験したことのなかった「デジタル通貨」、すなわち、「コンピューターネットワークの中を、単なる数字が駆け巡りながら、大量のマネーを造り出した状況」でもあるために、「これから、どれほどの大変化が、世界の金融界を襲うのか?」については、決して、予断を許すことができない状況のようにも感じている。

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
〔opinion14122:250228〕