本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(504)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう( ほんまゆたか) : ポスト資本主義研究会会員
タグ: , ,

2025.2.11

実体経済とマネーの関係性

私自身は、今まで、「実体経済が主であり、マネーが従である」というような認識を持っていたが、最近では、「より複雑な構図が存在しているのではないか?」と考えるようになった。具体的には、「共同体の規模」を加味する必要性のことでもあるが、実際には、原点にさかのぼりながら、「実体経済とマネーの関係性」を考慮することであり、この時には、「無人島の一人暮らし」の例からも明らかなように、「一人の時に共同体が存在せず、マネーの必要性もなかった状況」だったことも理解できるのである。

そして、その後、「もう一人のメンバー」が加わり、「分業」が始まったと仮定した時には、「共同体の規模拡大がもたらす生産性の向上」や「相手への信用」と「その裏側に存在する盲目化」などが進展した状況だったことも理解できるのである。つまり、「共同体の規模拡大」が「信用の創造」につながったものの、同時に発生する現象は、「分業がもたらす他人への隷従化」だったようにも感じられるのである。

別の言葉では、「実体経済とマネーの関係性」を分析する際に、「共同体の規模」を加える必要性があるものと思われるが、具体的には、「1600年ほど前に崩壊した西ローマ帝国」と「その後の共同体の規模拡大」を考えることである。つまり、「巨大帝国の分裂」により発生した「数多くの小さな共同体」が、その後、時間をかけて、再び、現在のような「グローバル共同体」の形成にまでつながった状況のことである。

しかも、この時には、「村山節(みさお)の文明法則史学」が指摘するとおりに、「800年間の東洋的な精神文明」と「800年間の西洋的な物質文明」が存在することも理解できるのである。そのために、現時点で必要なことは、「過去1600年間に、どのようなメカニズムで、グローバル共同体が形成されたのか?」、あるいは、「実体経済とマネーの規模逆転現象が、どのようなメカニズムで発生するのか?」などを考えることとも思われるのである。

より詳しく申し上げると、「宇宙の法則」とも言える「絶えざる進化と創造」に関して、「共同体の規模拡大がもたらす摩擦や刺激が、技術的な進化や戦争などに関して、どのような影響を及ぼすのか?」などを根本から考え直すことである。つまり、「11次元にまで上昇した自然科学」を参考にしながら、「3次元にとどまっている社会科学」、特に、「経済学」などの次元上昇を図ることでもあるが、この点に関して、現在の世界的な金融大混乱は、最も大きなヒントが与えられる時のようにも感じている。

2025.2.12

貴金属の取り付け騒ぎ

最近の「ロンドン貴金属市場における混乱」については、実際のところ、「貴金属の取り付け騒ぎ」とでも呼ぶべき状況とも思われるが、この理由としては、「多くの投資家が、より信用できる通貨への交換を望み始めた展開」が考えられるからである。つまり、過去の「銀行の取り付け騒ぎ」については、「預金の保有者が、預金を預けてある銀行への信頼感を失い、より信用できる紙幣への交換を望んだ状況」とも理解できるのである。

より詳しく申し上げると、「1913年のFRB創設」以降、「世界のマネー」については、「氷のような状態の金(ゴールド)」から「水のような状態の紙幣」、そして、「水蒸気のような状態のデジタル通貨」へと急激な変遷を遂げたことも見て取れるのである。そして、この過程で、「マネーの大膨張」が発生するとともに、「通貨価値の下落」も顕著になったものの、多くの人々は、「今後もこの傾向が進展し、近い将来に、本格的なキャッシュレス社会が到来する」と信じ込んでいる状況とも言えるのである。

しかし、一方で、「中国やロシアなどのBRICS諸国」については、「西洋諸国の金融システム」、特に、「国家債務の累積的な増加」や「デリバティブのバブル」などに危機感を覚えながら、「金(ゴールド)や銀(シルバー)などの蓄積」に励んでいた状況だったことも見て取れるのである。つまり、現在のような「西洋諸国の野放図な国家財政」については、持続可能性に問題があるという認識をしながら、「金融システム崩壊後の世界を睨み、貴金属の購入に励んでいた状況」とも理解できるのである。

このように、今まで世界の金融市場で進展していた現象は、「マネーの根源」とも言える「貴金属の奪い合い」であり、実際には、「政府や中央銀行の信用を基にした紙幣やデジタル通貨」よりも「カウンターパーティーリスクが存在しない貴金属」を保有し始めた動きとも言えるのである。つまり、より安全な資産へと資金移動を始めたわけだが、この時に発覚した問題点は、「フラクタルバンキングの欠点」、すなわち、「預金などの残高に関して、銀行が全ての残高を保有していない事態」とも言えるのである。

より具体的には、「部分的な残高保有により、現在の世界的な金融システムが成り立っている状況」のことでもあるが、この点に加えて、「1971年のニクソンショック以降、金と通貨の関係性が断たれた状況」を考慮すると、今回の「イングランド銀行への信用失墜」については、未曽有の規模での「世界的なデジタル通貨から貴金属への資金移動」の発生につながる展開も想定されるようである。

2025.2.16

行き詰まりを見せ始めたリフレーション政策

1980年代初頭に始まった「中南米諸国の金融危機、あるいは、国家財政の連鎖破綻」は、その後、「1990年代の東欧」や「2000年代のアフリカ諸国」などへと引き継がれていき、現在では、「西洋諸国の国家財政問題」にまで行きついたものと考えている。つまり、「1980年代初頭からの約40年間」については、「低下し続けた先進諸国の長期金利」からも判断できるように、「デリバティブの残高膨張に伴い、西洋の先進諸国が超低金利状態の恩恵を受けながら、さまざまなバブルを発生させた状況」だったものと考えられるのである。

別の言葉では、大量に創られた「デジタル通貨」の恩恵により、「西洋の先進諸国が、人類史上、未曽有の規模での経済的な繁栄を享受した状況」だったものと理解できるが、この結果として発生した事態は、100年ほど前にシュペングラーが指摘した「大都市の知性と貨幣」だったことも見て取れるのである。つまり、「1600年前の西ローマ帝国」と同様の「パンとサーカスの生活」であり、また、「座業を好み、農村から離れる展開」などのことだが、この結果として予想される事態も、当時と同様に、「財政破綻がもたらす大インフレ」とも想定されるのである。

そして、このメカニズムとしては、「中央銀行の創設」によりもたらされた「通貨の堕落」などが挙げられるようだが、実際には、「民間金融機関」のみならず、「中央銀行」のバランスシートまでもが大膨張した展開とも理解できるのである。別の言葉では、「国家の財政赤字」を補うために、「民間部門の資金が国家に吸い上げられた状況」のことでもあるが、この点に関して特筆すべき事態は、やはり、「2008年のGFC(世界的な金融大混乱)以降のリフレーション政策」のようにも感じている。

つまり、「中央銀行が民間部門から資金を吸い上げて、国債などに投資した状況」のことでもあるが、この行為については、結局のところ、財政破綻を遅らせるための、単なる時間稼ぎにすぎなかったものと考えられるのである。

そして、現時点では、最後の手段とも言える「紙幣の大増刷」に頼らざるを得なくなった状況とも考えられるが、この点については、「1980年代から始まった国家財政の連鎖破綻」、あるいは、「1971年から始まった政府の信用を本位とした通貨制度の終焉」を告げる状況とも思われるが、今後の展開としては、「リフレーション政策」の後に想定される「ハイパーインフレの発生」も考えられるようである。

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
〔opinion14153 : 250321〕