本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(511)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう( ほんまゆたか) : ポスト資本主義研究会会員
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2025.3.27

経済学の未来

現在の世界では、「お金を欲しがる人」が数多く存在しながらも、「経済理論を学ぼうとする人」が激減している状況とも思われるが、この理由としては、「時代遅れで役に立たなくなった経済学」の存在が指摘できるものと考えている。つまり、「時代の変化に対応できず、未来予測のみならず、現状説明もできないような状態」となっているために、「経済学を研究する人が激減している状況」のことである。

より詳しく申し上げると、「西暦1800年からの約200年間」については、「実体経済」のみならず、「マネー(通貨や貨幣)」が大膨張した時期だったものの、「経済学」に関しては、「この間の変化を、ほとんど認識できなかった状況」とも理解できるのである。そのために、現在は、「経済学の未来」を危惧せざるを得ない状況とも思われるが、これから予想される変化としては、「現状を正確に理解し、適切な対応を取った人々」が「次の時代の成功者」となる可能性も想定されるようである。

具体的には、「時代遅れの貨幣」となりつつある「デジタル通貨」に固執した人々が、すでに始まった「世界的なハイパーインフレ」に対応できなくなる可能性でもあるが、現在では、「世界各国の巨額な債務残高」に危機意識を抱いた人々が、慌てて、「金(ゴールド)や銀(シルバー)などの実物資産」を買い始めたことも見て取れるのである。つまり、現在では、「世界的なリフレーション政策」、すなわち、「民間部門の資金を吸い上げ、中央銀行が国債を買い付ける政策」が限界点に達したために、本来の「マネー」である「金や銀」に、世界の資金が殺到し始めたものと思われるのである。

別の言葉では、「通貨への信頼感」を喪失した人々が、「日本の米」や「アメリカの卵」など、「価格が急騰している商品」に殺到し始めた状況のことでもあるが、この点に関して、現在、注意すべき事実は、「数量に限りのある実物資産」と「無制限に創り出せるデジタル通貨」との関係性とも言えるのである。つまり、「コンピューターネットワーク」の中で、縦横無尽に動き回ることができる「現代のデジタル通貨」が、今後、「紙幣に変換されたときに、コンピューターネットワークで利用できなくなる事実」である。

その結果として、今後の展開としては、「1923年のドイツ」のように「約6ヶ月という期間に、食料品などの価格が天文的な急騰を見せる可能性」も想定されるが、このような状況下で役に立つのは、やはり、「1971年のニクソンショック」以前に用いられていた「金」や「銀」などの貨幣とも考えられるのである。

2025.4.1

中国国有4行への10兆円増資

3月30日に「中国国有4行への10兆円増資」が発表されたが、この記事から思い出されたことは、「1998年に実施された長銀への増資」であり、また、「その後のデリバティブの大膨張」だった。つまり、「日本のバブル」が破裂し、「世界的な金融システム」が崩壊の危機を迎えたのが「1998年」だったが、この時に行われたのが、「長銀への増資」であり、また、「民間金融機関が、オフバランスでデリバティブを大膨張させた状況」だったのである。

別の言葉では、「1971年のニクソンショック」から始まった「政府などの信用を本位とした通貨制度」については、基本的に、「前半の26年」と「後半の26年」に分かれているものと考えている。そして、「前半の26年間(1971年から1997年)」の最終段階で発生したのが、「タイから始まった世界的な信用収縮」であり、結果としては、「1998年の世界的な金融大混乱」につながったことも理解できるのである。

そのために、当時の私自身は、「この前後から、世界的な紙幣の大増刷が始まるのではないか?」と考えていたが、実際に行われたことは、想定外の「民間金融機関によるオフバランスでのデリバティブの大膨張」だったのである。しかも、この時の「マネー(貨幣)大膨張の規模」については、「前半の日本バブルにおける約3000兆円」と比較して「約30倍の約9京円」という規模だったことも思い出されるのである。

より詳しく申し上げると、「デリバティブとデジタル通貨の大膨張」により「未曽有の規模でのバブル相場」が先進各国を中心にして繰り広げられたわけだが、この動きがピークを付けた「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」以降は、「量的緩和(QE)という名のリフレーション政策」が実施された状況だったことも理解できるのである。つまり、「大量に創られたデジタル通貨」を利用して、「世界的な超低金利状態」のみならず、「マイナス金利」までもが発生した状況のことである。

しかし、「どのようなバブルも、必ず弾ける運命にある」ということが「歴史の必然」とも言えるが、今回の「中国国有銀行への増資」に関しては、「1998年の長銀への増資」と似たような意味を持っているものと感じている。つまり、「人類史上、未曽有の規模での大バブル」とも言える「デリバティブの大膨張と崩壊」に関して、現在は、「問題の隠ぺいや先送り」が時間的な限界点に達するとともに、間もなく、「世界全体で、紙幣の大増刷が実施され始める可能性」のことである。

2025.4.2

未来が読める四次元の経済学

金融界に従事して、今年で49年目を迎えたが、この間、一貫して模索し続けてきたことは、「お金とは、いったい、どのようなものなのか?」であり、また、「歴史のサイクル」や「心の謎」だった。そして、現在では、これらの問題に対して、ある程度の答えが得られるとともに、「未来予測」に関して、自分なりの「ひな型」ができたものと感じているが、実際には、「文明法則史学」の「1600年サイクル」を利用しながら、「この期間に、人々の共同体が、どのように形成されるのか?」を理解することである。

より詳しく申し上げると、「マネーの歴史」を辿っていた時に気付かされたことは、「西ローマ帝国の崩壊後から近代までの約1500年間、ほとんどの場合において、金(ゴールド)や銀(シルバー)が貨幣や通貨として使われていた事実」だった。別の言葉では、「西ローマ帝国」や「現代の文明社会」のような「金や銀を利用して、より巨額の通貨や貨幣が創り出された状況」ではなかったものと理解できるのである。

しかも、現在の通貨制度については、「1971年のニクソンショック」以降、「単なる数字が本位通貨となり、世界のコンピューターネットワークを駆け巡っている状況」のために、「本来の金や銀と比較して、現在、どれほどの通貨が存在するのか?」を誰も認識していない状況とも想定されるのである。つまり、「裸の王様」が世界中を闊歩しているような状態とも考えられるが、実際のところ、「瓦礫でも通貨として通用する」という「江戸時代の日本の奉行が述べた言葉」のとおりに、「根底の信用」が存在する限り、「どのようなものでも、商品との交換が可能な状況」ともいえるのである。

そのために、私自身は、「1600年前と現在とが似たような状況ではないか?」、あるいは、「共同体の規模拡大に伴い、貨幣の残高が増加するのではないか?」という認識のもとに、「貨幣残高の推移を理解することにより、ある程度の未来予測が可能ではないか?」と感じるようになったのである。ただし、この時の注意点としては、「自然科学や社会科学が、現在、どのような次元に位置するのか?」を考えることであり、実際には、「11次元にまで進化した自然科学」と「3次元に留まっている社会科学」である。

そして、今後の展開としては、「社会科学の次元上昇」により、「戦争のない社会」、あるいは、「貨幣のいらない社会」などの到来を期待しているが、この時の注目点は、これから想定される「未曽有の規模での金融大混乱」において、私自身の「四次元の経済学」が、どれほどの有効性を発揮するのかだと感じている。

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion14208:250509〕