2025.4.8
インフレ大津波の現状
1998年前後から始まった「デリバティブのバブル」に関しては、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」に「金融の大地震」という形でピークを付け、その後は、「インフレの大津波」を世界全体に発生させていた状況のようにも考えている。別の言葉では、「日本のバブル」と同じようなメカニズムでありながらも、「約30倍」という規模にまで膨れ上がった「デリバティブバブル」は、現在、「1997年前後の金融大混乱」と同様に、断末魔の叫びをあげている状況のようにも感じられるのである。
より詳しく申し上げると、「民間金融機関におけるオンバランスの残高大膨張」がもたらした「日本のバブル」とは違い、今回の「デリバティブ」については、「民間金融機関におけるオフバランスの残高膨張」によるものであり、また、「コンピューターネットワークの仮想現実の世界で、デジタル通貨の大膨張がもたらしたバブル」だったことも理解できるのである。つまり、「1971年のニクソンショック」から始まった「政府の信用を本位とした通貨制度」の下で、「先進各国を中心にして、大量のデジタル通貨が創られるとともに、壮絶な奪い合いが実施された状況」とも思われるのである。
そのために、今後の投資を考えるうえで、現時点で必要なことは、「2008年以降に発生したインフレ大津波の現状」を正確に理解することであり、実際には、「巨額のデジタル通貨が、債券や不動産、そして、株式などのバブルを、時間差で発生させ、崩壊させた事実」とも言えるのである。つまり、最初に崩壊したのが「2020年の米国債」であり、この時には、「仮想現実の世界で、大量のデジタル通貨が、債券から不動産へと移行した展開」だったものと理解できるのである。
また、その後は、「不動産から株式へ」という資金の流れが発生したものの、この時にも同様に、「デジタル通貨の海で新たなバブルが発生し崩壊した展開」だったことも見て取れるのである。しかし、問題は、今回の「株式バブルの崩壊」であり、その理由としては、「株式の二面性」、すなわち、「株式が仮想空間と現実空間の両方を併せ持つ性格」が指摘できるものと思われるのである。
別の言葉では、「インフレの大津波」が「仮想現実世界におけるデジタル通貨の海」から「現実社会における実物資産が満ち溢れた陸」へと移行し始めた状況とも思われるために、これから必要なことは、「世界に、どれだけのデジタル通貨が存在し、また、今後、どのような方法で実物資産に転換されるのか?」の理解だと考えている。
2025.4.10
スワップ・スプレッドの急拡大
4月9日に発生した「債券市場におけるスワップ・スプレッドの急拡大」が、人々の注目を世界的に集め始めているが、この理由としては、「金融問題の本丸」とも言える「デリバティブ」や「債券」の問題が隠しきれなくなった可能性が挙げられるものと考えている。つまり、現在では、「国債価格の下落による含み損」が膨らむとともに、「巨大金融機関の破綻」までもが噂され始めた状況となっているために、今後は、「OTCデリバティブの巨額損失」が表面化する可能性が高まった状況とも思われるのである。
そのために、今後の注意点としては、「2008年のリーマンショック」の時と同様に「巨大な金融機関が連鎖破綻を始める可能性」のみならず、「1991年のソ連」の時と同様に「国債の買い手が消滅する可能性」が挙げられるものと考えている。つまり、「イエレン前財務長官の置き土産」とでも呼ぶべき「大量に発行された短期国債」に関して、今後、「大量の償還」が到来するために、現在では、「誰が買うのか?」が見えない状況であることも理解できるのである。
より詳しく申し上げると、「トランプ大統領の目くらまし作戦の一つ」と思われる「トランプ関税」については、基本的に、「金融混乱の根底に存在するデリバティブや国債の問題から、国民の眼をそらすための手段」だったものと思われるが、結果としては、「世界中の人々から、米国への信用を奪った状況」だったことも理解できるのである。つまり、「貨幣や通貨の根本が、人々の間に存在する信用」でありながら、現在では、「誰も米国やトランプ大統領を信用する人がいなくなった状況」のようにも思われるのである。
別の言葉では、「デリバティブが創り出したデジタル通貨」の存在により復活した「米国の威厳や信頼感」については、現在、「1990年代の半ば」と同様に、再度、「金融システムの崩壊危機」に見舞われているものと考えられるのである。つまり、「影も形も存在しない単なる数字」であるデジタル通貨を頼りにして「世界中からさまざまな商品を買い漁っていた米国」は、今後、「デリバティブ大膨張の後始末」や「米ドルの実質的な価値減少」、および、「商品価格の急騰」に悩まされるものと考えられるのである。
そして、この点に関する兆候的な現象が、冒頭の「スワップ・スプレッドの急拡大」とも想定されるために、今後の注意点としては、「先進各国における金利の急騰」や、すでに噂が出始めている「巨大金融機関への資本注入」などに対して、今まで以上の警戒心を抱くことのようにも感じている。
2025.4.12
デジタル通貨の消滅メカニズム
今回の金融大混乱については、1600年前の「西ローマ帝国の崩壊時」を超える「人類史上、最大の金融危機」とも思われるために、現時点で必要なことは、「歴史の証言者の一人」として、「どのようなメカニズムで、これほどまでの大混乱が発生したのか?」を書き留めておく必要性があるようにも感じている。別の言葉では、「デジタル通貨の誕生と崩壊」という「人類が初めて経験した出来事」に関して、「どのようなメカニズムが働いたのか?」を考えることである。
そして、この点に関して、最も大きな役割を果たしたのが、ご存じのとおりに、「1971年のニクソンショック」であり、この時から、「世界の通貨や貨幣は、影も形も存在しないデジタル通貨へと変化を始めた状況」だったことも理解できるのである。しかも、「約50年」という期間にわたり、「貨幣や通貨の大膨張」が発生した結果として、現在においても、「キャッシュレス社会の到来」に対して、ほとんどの人が疑問を抱いていない状況ともいえるのである。
しかし、一方で、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」から始まった変化は、「仮想現実のデジタル通貨の海」における「金融大地震」であり、また、「インフレの大津波」でもあったが、実際には、「この事実に気づく人がほとんどいなかった」という状態だったことも見て取れるのである。別の言葉では、「債券や不動産、そして、株式のバブル」に酔いしれて、「どれほどの二日酔いが、世界中の人々を悩ませるのか?」などについては、全く考えが及ばなかった状況のことである。
その結果として、現在では、「バブル崩壊の悪影響」が、急激に世界の金融市場を支配し始めたわけだが、実際には、「バランスシートの非対称性」、すなわち、「資産価格には変動があるものの、負債については一定の金額である事実」により、「債券から不動産、そして、株式」という順番で、バブルが崩壊し、世界の資金が移転を繰り返したのである。そして、現在では、「デジタル通貨の海から実物資産の陸」へと世界の資金が移動を始めたわけだが、このことが意味することは、「日本の3・11大震災」の時のように、「波がリアス式海岸へと流れ込み始めた段階」のようにも感じられるのである。
具体的には、「大量の海水(紙幣)が、狭くて浅い海岸の奥地(実物資産の市場) にまで、あっという間に到達する展開」であり、結果としては、「1991年のソ連」と同様に「インクが無くなるまで大量の紙幣が印刷される状況」を想定している。
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion14224:250516〕