本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(148)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
タグ: , ,

FRBの資産圧縮

現在、「FRBの資産圧縮」の噂が出始めたが、実際には、「償還となった国債を乗り換えずに、保有国債残高を減らす方法」が想定されているようである。そして、「イエレンFRB議長」としては、「約4.5兆ドル(約500兆円)」の「資産総額」についても、同様に、大幅な削減を目論んでいるものと推測されるが、この点については、きわめて複雑な問題を含んでいるために、簡単には実現しないものと考えている。

つまり、今までの「量的緩和(QE)]により、「中央銀行が買い付けた国債」に関して、単純に、残高を減少させると、当然のことながら、「金利の上昇」、すなわち、「国債価格の下落」が予想されるからである。そのために、できるだけ緩やかな金利上昇を望んでいるようにも感じられるが、実際のところは、全く違った結果になるものと想定されるのである。

具体的には、「日銀」の例からも明らかなように、「中央銀行が、保有国債残高を減らす」というニュースが出ただけで、「国債価格の暴落」が予想されるからだが、この点に加えて、現在の「日銀」については、「若干の金利上昇で、債務超過の状態に陥る可能性」も存在するのである。つまり、「短期金利が1%にまで上昇すると、約330兆円もの当座預金残高に関して、大きな変動が発生する状況」も予想されるために、今後は、「日銀が、本当に、現在の当座預金残高を維持できるのか?」、また、「金利上昇時に、誰が国債を買うのか?」という疑問点を考慮する必要性が存在するものと考えている。

また、これらの点を総合的に勘案すると、今後、予想される事態は、やはり、「中央銀行が、紙幣を大増刷する展開」とも言えるようである。別の言葉では、過去の歴史が教えるとおりに、「国家の借金を、紙幣の増刷で棒引きにする方法」のことだが、この時の注目点は、「中央銀行のバランスシートが、今まで以上に大膨張する状況」とも想定されるのである。より具体的には、本当の「インフレ(通貨価値の下落)」に関して、世界中の人が気付き始める状況のことだが、「過去のパターン」から言えることは、「国債価格の暴落」が始まると、「きわめて短期間の内に、このような状態が発生する」ということである。

そのために、今回も、同様の事態を想定しているが、現時点で注目すべき点としては、「アメリカの中央銀行であるFRBの資産内容」ではなく、足元の「日銀」に関する「資産内容の変化」と思われるが、やはり、この点についても、実際の変化が起きない限り、ほとんどの人が、実情に気付かない可能性も存在するようである。(2017.2.6)

-------------------------------------------

アメリカの混迷と資本主義の行方

「トランプ大統領の暴走と迷走」は、就任後の現在でも継続しており、この点に関して、世界中の人々が、「これから、いったい、どうなるのか?」と危惧し始めた状況とも言えるようである。しかも、この時に注目すべき点は、「トランプ大統領自身が、アメリカの内部分裂を推進している可能性」でもあるが、ご存知のとおりに、「アメリカ」については、「合衆国」の名のとおりに、「多民族、多人種の集合国家」である。

そのために、より一層、今後の展開が気に掛かる状況となっているが、実際には、「アメリカの崩壊」が想定される段階に入ったようにも感じている。つまり、「1991年のソ連」と同様に「国家が分裂する可能性」のことだが、かつての「ソ連(ソビエト共産主義国連邦)」も、名前のとおりに、「多民族、多人種の集合国家」」だった。そして、「歴史上からは、ほぼ瞬間的に崩壊した」という状況だったが、実際には、「その前に、長い混迷期が存在した」ということも、間違いのない事実だと考えている。

具体的には、「東西の冷戦状態」が継続していた「1980年頃」から、「西側諸国」において、「経済の金融化」、すなわち、「マネーの大膨張」が始まったために、「東側諸国」においては、「実体経済の行き詰まり」が、はっきりとした形で表面化したものと思われるのである。その結果として、「1989年」に、「東西ドイツの壁」が崩壊し、その後、「1991年」に、「ソ連の崩壊」という歴史的な大事件が発生したのである。

そして、その後の展開としては、「中国」や「ロシア」などの国々までもが、実質的な「資本主義国家」へ変貌し、世界的な「マネーの大膨張」を加速させたようだが、問題は、やはり、「2008年のリーマンショック」だったものと考えている。つまり、この事件が、「100年に一度の金融混乱」と呼ばれたように、「金融の大地震」だったものと考えているが、実際には、この前後に、「デリバティブの大膨張」がストップするとともに、「金融のメルトダウン」が始まったものと想定されるからである。

具体的には、「量的緩和(QE)」の名のもとに、「通貨の堕落」が、急速に進行したものと考えているが、ご存知のとおりに、現在では、「日米欧の国々」で、「金利の上昇」が始まったことも理解できるのである。つまり、「行き過ぎた金融資本主義」が、いよいよ、終焉の時を迎えたものと考えているが、今後の注目点は、世界的な「国債価格の大暴落」であり、このキッカケとなるのが、「トランプ大統領の暴走と迷走」であり、また、世界的な「信用崩壊」ではないかと想定している。(2017.2.6)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6543:170301〕