本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(153)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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過大評価された低金利状態

3月17日の「ファイナンシャルタイムズ紙」に、「低金利の要因は金融市場にあり」という記事が掲載され「なぜ、2010年代に入り、金利低下が続いているのか?」が疑問視され始めた。具体的には、「BISの経済顧問」である「ヒュン・ソン・シン氏」の意見を紹介しながら、「実体経済」と「マネー経済」の「違い」に言及しているが、この時に、「近代の経済学者は、実体経済の指標だけを観察し、金融システムが、どのように機能しているのかを考慮しない傾向がある」とも述べられているのである。

つまり、私と同じような意見が紹介されるとともに、「長期債の利回りが、経済の先行指標として過大評価されている可能性」を指摘しているが、このことは、「現在の低金利状態は、デフレの結果として発生した事態ではない」という考え方のことである。具体的には、「ドイツの保険会社が、純額ベースで国債購入の4割を占めている理由」として、「デフレを予測したからでも、リスクに対して、より寛容になったからでもない」と結論付けられているのである。

より具体的には、「会計規則と支払い余力規制に縛られて、利回りの低下時に、通常の投資論理に逆らってでも、リスクヘッジのために、国債購入を増やさざるを得なかった」という説明がなされているが、このことは、典型的な「バブル状態」とも言えるようである。つまり、「政府や中央銀行、あるいは、保険会社などが、国債を異常な価格にまで買い上げた結果として、マイナス金利が発生した」という現状に対して、現在、ほとんどの人が、「低金利状態はデフレ状態を表しており、将来的にも、インフレが発生する可能性が低いのではないか?」と理解している可能性のことである。

つまり、現在では、「原因」と「結果」とが混同されているものと推測されるが、このことも、「ケインズ」が指摘する「通貨の堕落が引き起こすインフレは、百万人に一人も気付かないうちに進行する状況」を表しているようだ。しかし、問題は、やはり、「国債の買い支え」が難しくなった時に、一挙に、「インフレの大津波」が襲う可能性、すなわち、「国債価格の暴落」により、急激に、金利が上昇する状況のことである。

ただし、現在では、前述のとおりに、多くの人が「低金利は、デフレを意味する」という「誤った考え」に支配されており、今後、相場への対応が難しくなることも予想されるが、現時点で必要なことは、すでに、「クリーピング(忍び寄る)インフレ」が終了し、「ギャロッピング・インフレ」が始まった点を理解することでもあるようだ。(2017.3.27)

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複雑化した米国債務上限問題

「米国の債務上限問題」については、現在、きわめて複雑な状況となっているが、この時の注目点は、「2015年10月」に制定された「超党派予算法」とも言えるようだ。具体的には、この法律により、「2017年3月15日」まで「債務上限金額」が棚上げされるとともに、数々の「非常手段」が実施可能になったからだが、この時に使われた手法の一つが「スラグ証券(SLGS)」と言われるものだった。

つまり、今までは、「米国財務省が、州や地方政府向けに発行する債券」などにより、「国家の債務問題が先送りの状態」となっていたようだが、今回も、「7月28日」まで、同様の「非常手段」が取られる予定と発表されたのである。そして、このような状況について、「アメリカ」では「白紙小切手や限度額の存在しないクレジットカードを発行するような状態」ともコメントされているのである。

別の言葉では、「米国の債務上限」については、実質上、意味が無くなったような状態とも言えるようだが、問題は、やはり、「金利上昇時に、国債やスラグ証券が、被害を受ける可能性」である。つまり、米国の「三度目の利上げ」をキッカケとして、「国債価格が、世界的に暴落を始める可能性」が危惧されるのだが、現在では、この点を熟知している「先進各国」が、「ありとあらゆる手段を行使しながら、国債の買い支えを実行している状況」とも想定されるのである。

しかし、現在では、この点に関しても、限界点に達した段階のようにも感じられるが、今後、私の想定どおりに、「国債価格の暴落」が始まると、世の中は、全く新たな展開を見せるものと考えている。具体的には、典型的な「ギャロッピング・インフレ」が進展することにより、「景気の好転」や「株高」が発生する状況のことだが、現在では、その初期段階のようにも思われるのである。

つまり、すでに始まった「世界的な株高」は、決して、「トランプ効果」によるものではなく、「世界の資金」が動き出した結果だと考えているが、今後は、この動きが、より一層、加速するとともに、制御不能な状態になることも想定されるのである。別の言葉では、「金利が急騰し、10%を超えるような事態」のことだが、暦の観点からは、「4月からの10か月間」が、たいへん気に掛かる状況である。具体的には、今後、この点を頭に入れながら、「2017年の相場」に対応する必要性のことだが、基本的には、「6月から8月頃まで、株式に強気の態度が望ましい状況」とも想定されるようである。(2017.3.27)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6627:170421〕