本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(154)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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働き方改革の実現性

現在の国会で「働き方改革」が審議されたが、このことは、きわめて複雑な問題であり、私自身としては、「失敗に終わる可能性」を憂慮している。つまり、今回の審議で感じたことは、「国家主導による、計画経済とも言える雰囲気」であり、この時に思い出されたのが、「1991年のソ連」だったからである。具体的には、「社会主義」や「共産主義」と呼ばれた社会体制そのものが、「低い生産性」や「労働者の働く意欲の喪失」などにより、完全崩壊した状況のことだが、ご存知のとおりに、その後は、「世界全体が、実質的に、資本主義体制へと変化した」という状況だったのである。

つまり、「第二次世界大戦後」に、世界全体が「高度経済成長期」に入り、この時には、「化学産業」や「自動車産業」などの「実体経済」が急速に発展したのだが、問題は、「1980年代」から進展した「経済の金融化」でもあった。具体的には、「実体経済」だけに特化した「社会主義国」、あるいは、「共産主義国」が、生産性の低下に悩まされ、実質上、行き詰まりの状態に陥ったのである。

その結果として、「世界全体が金融資本主義を尊重する時代」へと変化し、結果として、未曽有の規模で「マネーの大膨張」が発生したのだが、現時点でも、この点が考慮されず、単に、「実体経済の生産性」などが、議論されているにすぎない状況とも想定されるのである。つまり、本当の意味での「働き方改革」を実現するためには、「数千年間の人類史」を徹底的に検証し、「この間に、どのような変化が起き、また、どのような発展をしたのか?」を理解する必要性があるようにも感じられるのである。

別の言葉では、「現在、世界全体が、1991年のソ連と似たような状態」になっているようにも思われるが、この理由としては、世界中の人々が、「何のために、働くのか?」に関して、大きな疑問を抱き始めた点が指摘できるようである。具体的には、本当の意味での「働き甲斐」を求め始めた可能性のことだが、このことも、結局は、「人類の絶えざる進化と創造」における「過程的な段階」とも考えられるようである。

このように、これから想定される事態は、「日米欧の国々」が、かつての「ソ連」のような状態になることでもあるようだが、実際には、「終わりは始まりである」という言葉のとおりに、「大混乱期を経て、人類が、一段と発展する段階」に差し掛かっているようである。つまり、「自然科学」と「社会科学」の更なる発展により、「過去に存在しなかった、効率的で、かつ、平和な社会」が実現される可能性のことである。(2017.4.4)

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日銀の国債買い入れ計画

「3月31日」に発表された「日銀の国債買い入れ計画」によると、「4月は、中長期債を中心に大幅な減額になる」とのことである。また、「4月の方針」が、今後も継続すると、「年間の買い入れ金額が、80兆円から60兆円台にまで急減する可能性」も危惧されているが、実際には、いわゆる「テーパリング(国債買い入れ金額の減額)」が、日本で始まった状況とも言えるようである。つまり、「国債」を買い入れるためには、「当座預金」や「国家からの借入金」などで、資金手当てをする必要性が存在するが、現在では、この方法が難しくなってきたものと推測されるのである。

その結果として、現在では、長期金利のみならず、中期や短期の金利までもが上昇を始めたようだが、この点には、大きな注意が必要だと考えている。つまり、今までは、「中央銀行が国債を大量に買い付けたことなどにより、史上初めてのマイナス金利が、世界的に発生した」という状況だったが、今後は、「国債の買い付け」に関して、「梯子を外されたような状態」になるものと思われるからである。

別の言葉では、「国債の買い手」が不在になるだけではなく、「中央銀行」そのものが、「国債の売り手」になる可能性が存在するとともに、「膨張を続ける国家の債務」に関して、「誰が国債を買い、国家に資金供給をするのか?」という大問題が発生することも予想されるのである。つまり、「1981年」から始まった「世界的な金利低下」が、「2016年」に大転換を迎え、現在では、「更なる上昇期」を迎えようとしているわけだが、この時の注目点は、やはり、「どれほどのスピードで、今後、金利が上昇するのか?」ということだと考えている。

つまり、これから想定される「金利上昇」については、決して、景気が良くなったから上昇したというような性質のものではなく、反対に、「国家への信頼感」が喪失することによる、きわめて危険な金利の上昇とも想定されるのである。別の言葉では、「1991年のソ連」のように、「国債の買い手がいなくなり、結果として、紙幣の大増刷に繋がった状況」が、今後、世界的に発生するものと考えているが、実は、このことが、以前から指摘してきた「インフレの大津波」を意味するのである。

そのために、「今後、日銀が、どのような発表をするのか?」に関して、今まで以上の注意を払う必要性が存在するようだが、私自身としては、ようやく、「最後の大混乱」が始まりを告げた状況のようにも感じている次第である。(2017.4.4)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6648:170502〕