カサンドラの予言
ギリシャ神話に「カサンドラの予言」という話がある。「アポロンに愛されたカサンドラが、アポロンの恋人になる代わりに予言能力を授かったが、予言の力を授かった瞬間、アポロンの愛が冷めて自分を捨て去ってゆく未来が見えてしまった」という内容である。そのために、「カサンドラは、アポロンの愛を拒絶してしまうが、憤慨したアポロンは『カサンドラの予言を誰も信じないように』という呪いをかけてしまい、結果として、カサンドラが、パリスがヘレネーをさらってきたときも、トロイの木馬をイリオス市民が市内に運び込もうとしたときも、これらが破滅につながることを予言して抗議したが、誰も信じなかった」というものである。
現在、この神話は、「真理や真実が、人々に対して、正確に伝わらないこと」に対する「象徴的な寓話」として用いられているようだが、実際のところ、「多くの人々には、自分にとって不都合、かつ、快くない予言を聞こうとしない傾向」が存在するようにも感じられるのである。しかし、「世の中が激変する状況」を見て、初めて、「真理」に気付かされるようにも思われるが、現在の世界的な金融情勢は、まさに、「トロイの木馬が、イリオス市に運び込まれた状況」とも言えるようである。
具体的には、「日米欧の国々」が、歴史上、最大規模の「量的緩和(QE)」を実施した結果として、「中央銀行のバランスシート」は、未曽有の規模にまで膨らんだのだが、今後は、「アメリカ」を中心にして「量的引き締め(QT)」が、年内にも始まろうとしているからである。別の言葉では、「敵の兵士を、大量に満載したトロイの木馬」が、「世界の金融システムに組み込まれたような状態」のようにも感じているが、今後は、「膨大に膨れ上がった中央銀行のバランスシートが、実際に、どのような動きを見せるのか?」が、最も注目すべき点とも言えるようである。
つまり、単純に、「バランスシートの残高」を急減させると、「世界的な大恐慌」の再来が予想され、一方で、「減少した国債などの保有残高」を「紙幣の増発」で埋め合わせると、「世界的なハイパーインフレ」の到来が考えられるのである。そのために、これからの数か月間は、いまだに実現していない「カサンドラの予言」が、「大恐慌なのか、それとも、大インフレなのか?」を真剣に考える期間のようにも思われるが、私自身の経験からは、「今まで大恐慌の再来を恐れすぎたことが、今後、グローバルハイパーインフレを引き起こすのではないか?」とも想定され、特に、「7月の19日」が「丁の年、丁の月、そして、丁の日」となるために、大きな注目をしている。(2017.6.15)
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日銀を巡る論争
現在、「日銀を巡る論争」、すなわち、「日銀が、2%のインフレターゲットを達成した時に、どのようなことが起こるのか?」が市場の話題になっている。つまり、「日銀が債務超過に陥る可能性は存在しないのか?」、そして、「日銀の財務健全性に問題は発生しないのか?」という「2点」のことだが、この点に関して、「日銀」は「債務超過に陥る可能性は低く、また、長期的な財務の健全性にも問題は無い」と考えているようだ。
しかも、「政府から日銀への資本注入」については、「まったく必要がない」とも想定しているようだが、この点には、大きな注意が必要であり、また、「間もなく、答えが出るのではないか?」とも感じている。つまり、「6月10日」現在で、「約504兆円」という規模にまで大膨張した「日銀のバランスシート」を詳細に分析すると、「すでに債務超過に陥っている可能性」や「今後、日銀の資金繰りが、急速に悪化する可能性」が想定できるからである。
具体的には、「約350兆円」にまで膨らんだ「日銀の当座預金」については、「2%の金利」が「約7000億円の利払い」に相当する計算ができるとともに、「金利の性質」として、「2%で留まらず、その後、5%や10%にまで急騰する可能性」が存在するからだ。しかも、現在では、私の想定する「日米英の金融三国同盟」が完全崩壊した状態のようにも思われるが、このことは、今まで、「デリバティブ」や「国債」に関して、「日米英の三国が、水面下で強調してバブルの崩壊を防いできた可能性」のことである。
つまり、現在では、「イギリスのEU離脱」、「トランプ大統領の誕生」、そして、「安倍首相の加計学園問題」などにより、「政府」への信頼感が減少し、その結果として、「金利の上昇圧力が高まっている状況」のようにも感じられるのである。また、「6月14日」には、「米国の利上げ」が実施されるとともに、「年内にも、保有資産の圧縮が想定されている状況」でもあるために、「7月半ば」にも、「何らかの事件が、金融面で発生する可能性」が危惧されるのである。
具体的には、「デリバティブ」や「国債」に関して、「巨額な損失」が発覚する可能性のことだが、このような状況下で、「中央銀行」が取れる政策は、すでに、「紙幣の増発」しか存在しないものと考えている。そして、このことが、本当の「インフレ(通貨価値の下落)」を意味するのだがが、実際には、ほとんどの人が、いまだに「デフレ」を心配し、「預金や国債が安全資産である」と考えているようだ。(2017.6.15)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6792:170710〕