高額紙幣の廃止
「8月1日」の日経新聞で、「日本は、一万円札を廃止せよ」という意見が紹介されている。具体的には、「ハーバード大学のロゴフ教授」の主張として、「高額紙幣を廃止すれば、脱税やマネーロンダリングなどの犯罪が防げるだけではなく、次なる経済危機に備えることが可能だ」、しかも、現在、「中央銀行」が陥っている「ゼロ金利の制約」という「これ以上、金利を下げることができない状態」に対しても有効であるとの理解である。
より具体的には、「現金を廃止して、マネーを電子化すれば、4%程度のマイナス金利を課すことが可能である」、また、「その先駆者となれるのは、あらゆる金融政策を試みてきた日本である」ともコメントされているのである。そして、「ヨーロッパ」などの国々で、現在、このような動きが始まっているのも、間違いのない事実のようだが、この点については、「お金の性質」や「過去の歴史」を無視した、典型的な「机上の空論」、あるいは、今後の「金融大混乱」を引き起こす「キッカケの出来事」とも言えるようである。
つまり、「預金の使用や引き出し」に関する「禁止」や「制限」は、「日本の戦後」に発生した「預金封鎖」や「新円切り替え」と、実質上、同じ効果を持っているようにも思われるからである。別の言葉では、「通貨」や「政府」に対する「信頼感」を喪失させる効果が存在し、間もなく、多くの人々が、「預金」や「現金」などを、「実物資産」に交換する「換物運動」へと繋がる状況も想定されるのである。
しかも、この時に、「中国」や「ロシア」、あるいは、「インド」などの国々が、「上海協力機構(SCO)」を強化しながら、「金本位制」への復帰を目論んだ場合に、世界的な「パワーバランス」が、一挙に崩れる可能性も存在するようだ。つまり、「文明法則史学」が教える「西洋の時代から、東洋の時代への移行」が、急速に進展する可能性のことだが、この時の注目点は、やはり、「西洋諸国の国債価格」でもあるようだ。
具体的には、「1991年のソ連」と同様に、「国債価格の暴落」により、「紙幣の大増刷」、しかも、「高額紙幣の発行」が、一挙に発生した事態のことだが、この点を熟知している「ロシア」や「中国」にとって、現在の「高額紙幣廃止論」は、「自分たちの陣営に、塩が送られるような議論」とも捉えられているようにも感じている。つまり、現在の「フィアットマネー(政府の信用を基にした通貨)」に対する信頼感を失わせ、「金」を中心にした「貴金属」の価格を、急上昇させる効果があるからだが、この点に関する結論が出るのは、たいへん近い時期でもあるようだ。(2017.8.14)
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チキンレースの末路
現在、マスコミでは、「北朝鮮によるミサイル攻撃」が、大きな関心事となっている。具体的には、「北朝鮮が、グァム島の近辺に向けて、4発のミサイルを発射する予定」を発表し、この時に、「ミサイルが、日本の上空を通過する」とも報道されているが、「本当に攻撃が実施されるのか?」については、今後の大きな注目点となっている。つまり、現在の「金正恩体制」は、「世界平和に対する、大きな脅威」となっているが、この時に考えなければいけない点は、やはり、「チキンレースの実情」でもあるようだ。
具体的には、「チキンレース」が、「根競べや度胸試しの要素が強い駆け引き」とも解説されているように、「北朝鮮が、アメリカと、最後の度胸試しをしている可能性」のことである。別の言葉では、今まで、「核兵器」と「ミサイル」の開発に邁進してきたものの、現在では、「アメリカの領土であるグァム島に向けて、ミサイルの発射宣言をせざる得ない事態」にまで追い込まれた状況とも言えるようである。そのために、現在では、「北朝鮮の命運」について「結果が出る時期」が近付いている段階、すなわち、「北朝鮮崩壊のXデー」を考える必要性が存在するようにも感じられるのである。
つまり、「権力の暴走」については、「非理法権天」という言葉のとおりに、「必ず、悲惨な結果に終わる状況」を想定しているが、この点を、よく考えると、現在の「日銀」、あるいは、「FRB」や「ECB」についても、違った形の「チキンレース」を展開している状況とも思われるのである。具体的には、「国債の買い支え」により、「国家の財政破綻」を先送りしている状況のことだが、実際には、現在の「北朝鮮」と同様に、「時間の経過とともに、状況が急速に悪化している段階」とも言えるのである。
より詳しく申し上げると、「FRBの金融引き締め(QT)」については、将来的に、必ず、「国債価格の暴落」を引き起こす結果に終わるものと想定されるが、現在でも、依然として、「国債価格の維持」に努めているものと推測されるのである。別の言葉では、「1991年のソ連」と同様に、「国債価格の暴落」が、「通貨制度」や「金融システム」のみならず、「アメリカ合衆国」や「EU」の「国家体制」を揺るがす恐れがあるために、現時点でも、「国債価格が、高値圏に維持している状況」となっているのである。
このように、「北朝鮮の暴走」と「世界的な国債の買い支え」には、以前から、ある種の共通点が存在するようにも感じているが、間違いなく言えることは、「チキンレースが終了した時に被害を受けるのは、多くの国民である」という事実でもあるようだ。(2017.8.14)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion6943:170914〕