変化を始めた日銀の異次元金融緩和
「11月13日」に「スイスのチューリッヒ大学」で行われた「黒田日銀総裁の演説」では、明らかな変化が見て取れるようだが、実際には、「リバーサル・レート」という言葉を用いて「金融緩和の副作用」に言及し始めているのである。具体的には、「金利を下げすぎると、預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害されるため、かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性がある」という考え方のことだが、実際には、「マイナス金利の弊害」とも考えられるようである。
つまり、現在では、人類史上初めての「マイナス金利」が、依然として継続しているわけだが、このことは、「お金を借りた人が金利を受け取る」という、きわめて「本末転倒した事態」とも言えるのである。その結果として、「日銀」のみならず、「民間金融機関」の「財務状態」までもが、危機的な状態に陥っているものと想定されるが、実際には、「国債の買い付け」に関して、「歴史的な大転換期」に差し掛かってきたようにも推測されるのである。
より具体的には、「2016年末」と「2017年11月20日」の「日銀のバランスシート」を比較すると、「総額」が「約476兆円から約518兆円」と「約42兆円の増加」となっている。また、「国債の保有残高」は「約30兆円の増加」となっており、「黒田総裁」が公言してきた「年間に80兆円の増加」とは、全くかけ離れた状態となっているのである。
そして、この理由としては、「当座預金残高の伸び悩み」が指摘できるようだが、実際には、「約11ヶ月間で、約32兆円の増加」という状況が理解できるのである。つまり、「異次元金融緩和」の実態は「民間金融機関から資金を借り入れて、国債を異常な高値にまで買い上げる」ということだったものと考えているが、現在では、「民間金融機関」にも資金的な余裕が無くなった状況とも想定されるのである。
別の言葉では、「満期まで保有し続けると損失が出る国債」に関して、「日銀」のみならず、「民間金融機関」も、「これ以上の買い余力」が失われた状況とも言えるようだが、問題は、「今後、金利の急騰、すなわち、国債価格の暴落が発生した時に、どのような事態が発生するのか?」だと考えている。つまり、「日銀」としては、「紙幣の大増刷」しか残された手段が存在しないようだが、今後の注目点は、「何時、市場参加者が、この事態に気付くのか?」ということでもあるようだ。(2017.11.27)
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2017年を振り返って
「2017年の特徴」としては「金融メルトダウン(炉心溶融)の進展」が引き起こした「ビットコインのバブル相場」が指摘できるものと考えている。つまり、「2007年から2008年」の「グローバル金融危機(GFC)」以降、最初に、「デリバティブ(金融派生商品)」の残高が減少を始め、その後、いわゆる「量的緩和(QE)」が世界的に実施されたわけだが、この結果として発生したのが、世界的な「国債バブル」でもあった。しかし、「国債バブル」は、「2016年の半ば」に「マイナス金利のピーク」を付けるとともに、「バブルの崩壊」が始まったようだが、このことは、「金融の逆ピラミッド」において、「債券」の部分が、実質的に食い潰された状態を表しているものと考えている。
その結果として、「金融のメルトダウン」が、その下に位置する「預金」の部分にまで侵食したものと思われるが、この結果として発生したのが、今回の「ビットコインのバブル」でもあったようだ。具体的には、年初の「約1000ドル」が、「12月」には「17000ドルを超えた事態」のことだが、今後の注目点は、「ビットコインのバブル崩壊後に、どのような事態が発生するのか?」だと考えている。つまり、現在では、「日銀による異次元の金融緩和」が限界点を迎え、また、「欧米の金融緩和政策」も、大きな転換点を迎えている状況とも言えるのである。
別の言葉では、今までの「世界的な金融緩和政策」により溢れ出した資金が、「株式」や「土地」などに流れ、世界的な「株高」や「土地価格の高騰」をもたらしているのだが、この点については、典型的な「ギャロッピング・インフレ」を表しているものと考えている。つまり、「通貨の堕落」が発生すると、最初に、「クリーピング・インフレ(忍び寄るインフ)」が発生し、その後、「企業業績の好転」や「株高」などの「ギャロッピング・インフレ」に繋がるのだが、問題は、その後の展開とも考えられるのである。
具体的には、「黒田日銀総裁のコメント」が変化してきたことからも明らかなように、現在では、「世界の先進国」が、こぞって、本格的な「インフレ政策」を実施し始めたものと想定されるのである。つまり、「戦後の日本」と同様に、「インフレで借金を棒引きにする方法」を選択し始めた状況のことだが、今回の注目点は、「日本」だけではなく、「先進各国が、同様の出口戦略に悩まされている」という事実である。そのために、「これから、どれほどのインフレが世界を襲うのか?」が、「2018年」の、最も大きな注目点とも言えるようだが、当面は、更なる「世界的な株高」に加えて、「貴金属価格の急騰」が始まるものと考えている。(2017.11.27)
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干支から見る2018年
「2018年」は「戊戌(つちのえ いぬ)」という暦になるが、「戊」は「十干の5番目」に相当し、「茂」に繋がるとともに、「植物の成長が絶頂期にある状態」を意味している。また、「戌」は「十二支の11番目」に相当し、「鉞(まさかり)」に通じるとともに、「茂った葉っぱをバサバサと切り落とす状況」を表している。そして、二つを合わせると、「十干」という「意識」の面では、「好調な世界経済や株高」に期待するものの、「十二支」という「現実の世界」では、「本当のインフレ(通貨価値の下落)」が始まる状況を表しているものと考えている。
別の言葉では、「2018年」が、「10年ほど前に発生したGFC(グローバル金融危機)」に関して「答えが出る年ではないか?」とも感じているが、実際のところ、この10年間は、実に、難しい相場でもあったようだ。つまり、私自身としては、「2008年のリーマンショック」により、その後、本格的な「大インフレ」の到来を想定していたのだが、実際には、「日米欧の政府と中央銀行の抵抗」により、これほどまでに「問題の先送り」と「時間稼ぎ」が行われたからである。
そのために、「これから、どれほどの規模で大インフレが発生するのか?」が気に掛かる状況でもあるが、基本的には、「時期的な遅れが生じた場合、その後の反動は、より大きくなる状況」が想定されるようである。別の言葉では、「誰もが信じられないほどの大混乱」を予想しているが、実際には、「現代の神様」となった「お金」が、実質的に「紙切れの状態」になるものと考えている。
しかし、一方では、「過去10年間の恩恵」にも注目しているが、このことは、「マネーの大膨張」がもたらした「技術革新」であり、実際には、「AI(人工知能)」や「IoT」などである。つまり、今後は、「インフレの大津波」が、世界を襲うことにより、一時的な大混乱が発生するものの、その後は、「明治維新」や「第二次世界大戦」の時のように、「全く新たな、そして、進歩した社会」が到来するものと考えられるのである。
別の言葉では、「2018年」が、「明治維新」から「150年目」、そして、「今上天皇の退位が決定する年」であり、このことにも、何らかの意味が存在するようだが、基本的には、「日本人が覚醒を始める年ではないか?」とも考えている。そして、このキッカケとなるのが、「通貨への信用」が失われる事態であり、実際のところ、これほどまでの「節目」を経験しなければ、本当の意味での「覚醒」が起きなかったようにも感じている。(2017.11.28)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion7230:171229〕