本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(192)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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パンゲアの扉

日経新聞に「パンゲアの扉」という特集記事が5回にわたって掲載された。そして、内容としては、今後、大きなパラダイムシフトが発生し、世界が大きく変化する可能性が述べられていたが、この点については、まったく同感する状況である。つまり、私自身としては、今後、「西洋の時代」から「東洋の時代」に移行するとともに、「AI(人工知能)」の活用などにより、全く新たな社会が形成されるものと考えているからだ。

そして、この時の必要条件として、「自然科学」の更なる進化に加えて、「社会科学」の飛躍的な発展が指摘できるようだが、実際には、「経済学」を始めとして「人間の行動を解明する学問」が急速に進化する可能性である。別の言葉では、「技術の進化」に対応する「道徳的、かつ、倫理的な向上」のことだが、実際には、「戦争などの奪い合い」ではなく、「共同体的な助け合いの社会」が形成される可能性でもある。

また、「パンゲアの扉」については、かつての「パンゲア大陸」のように、世界全体が物理的に結びつくのではなく、「精神的な融合」を意味しているようにも感じられた。具体的には、「唯識論」が教える「阿頼耶識」や「ユング理論」が教える「深層心理」のことであり、また、「般若心経」にある「阿弥陀の智慧」のことでもあるが、この点については、今後、急速に、人々の認識や理解が深まっていく状況を想定している。

具体的には、「脳科学者」などが「心の発見」などの著書により、真剣に、「心の問題」を追求し始めているからだが、この時に、大きな役割を果たすのが、これから想定される「金融大混乱」でもあるようだ。つまり、「現代の神」となった「お金」が、今後、「神から紙へ」変化する状況が発生した時に、戦後の日本人が味わったような「大きなショック」を、世界中の人々が味わう可能性である。

より具体的には、「軍国主義」から「民主主義」への大転換が、かつて、日本人が味わった大変化でもあったが、今回は、当時よりも、はるかに大きな規模での「ショック」が襲うものと想定されるのである。そして、この時に、「人類の覚醒」が起き、「パンゲアの扉」が開くものと思われるが、実際には、このことが、「人類が、絶えざる進化と創造を繰り返すメカニズム」とも言えるようである。つまり、20世紀における最高の歴史学者と言われた「アーノルド・トインビー」が述べた「チャレンジ」と「レスポンス」のことだが、今回の「チャレンジ」と「レスポンス」は、数百年に一度の規模であり、また、タイミングも、きわめて近くなった段階のようにも感じている。(2018.5.2)

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日本の財政健全化

5月2日の日経新聞で、「財政黒字化が5年先送り」という記事が掲載された。具体的には、「国と地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化する目標時期を25年度とする検討に入った」というものだが、この点については、「まだ、このような記事が掲載されているのか」という「憤り」の感情が湧き出してきたのが実情だった。つまり、「座して死を待つ日本人」という言葉のとおりに、現在の日本人は、いまだに、「財政の健全化が、既存の方法で、政府によって実施される可能性」を信じ込んでいるからだ。

具体的には、「税収を増やし、歳出を減らす方法」のことだが、実際には、この記事で説明されているように、「日本の国家債務残高が増え続けている状況」であり、また、「日銀による国債の大量買い付けにより、超低金利状態が維持されている状況」とも言えるのである。しかも、現在では、「ステルス・テーパリング」という言葉のとおりに、「日銀による国債の買い付け金額が、急激に減少している状況」であり、実際には、「年初からの4ヶ月間で約14兆円、年間換算で約42兆円」という金額となっているのである。

そのために、間もなく、本格的な「円安」と「金利上昇」が、日本を襲うものと推測されるが、実際には、「いまだに、個人資金が預金に留まっている状況」となっている。具体的には、「2017年末」の段階で、「個人金融資産が約1880兆円」、そして、この内の「約961兆円」が「現金や預金で保有されている状況」のことである。つまり、多くの日本人は、「国家や通貨に対する信用」を強く持っており、その結果として、「預金を持っていれば安全だ」という考えに、依然として、囚われているのである。

そして、この点については、「戦争直後の日本人」に、想いを至らせざるを得ないが、実際には、当時も、同じような状況だったことが見て取れるのである。つまり、「日本は神の国であり、戦争に負けることは有り得ない」という誤った信念を抱き、結果として、保有していた「預金」や「保険」などが、実質的に、「紙切れの状態」となったのである。そのために、今回は、同じ過ちを繰り返さないことを望んでいたが、現在では、すでに、難しくなった状況とも言えるようである。

具体的には、今回も、「日本の財政健全化」が、「紙幣の大増刷」という、典型的な「インフレ政策」により計られる可能性が、きわめて高くなっており、また、時間的な余裕も、ほとんどなくなった状態のようにも感じられるのだが、実際には、「2018年の後半」にも、このことが始まる可能性を憂慮している次第である。(2018.5.2)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion7693:180531〕