本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(198)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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金利のスナップバック

「6月24日」に「BIS(国際決済銀行)の年次総会」が開催され、私自身は、新たに総支配人に任命された「カルステンス氏」のコメントに注目したが、内容としては、単なる「精神論」に終始したようにも感じられた。しかし、一方で、「実務担当者の危機意識」が昨年以上に感じられる状況であり、実際に、頻繁に使われたのが「スナップバック(SNAPBACK)」という言葉だった。直訳すると、「パチンとはじき戻る」、あるいは、「急速に元の状態に戻る」という意味になるが、今回は、「過去数十年間の金利低下」、あるいは、「過去数年間の異常な超低金利状態」に関して、「金利が急速に上昇するリスク」を想定しているものと思われた。

別の言葉では、私と同様に、「国債価格の暴落が、世界的な金融システムや通貨制度を崩壊に陥れる可能性」を危惧しているようにも感じられたが、「これから、どのようなリスクが存在するのか?」については、私とは違い、「大恐慌シナリオ」を想定しているようでもあった。具体的には、「ノンバンク」に関する「流動性のリスク」や「解約のリスク」などが、大きく取り上げられており、実際には、「金利の急騰」が、さまざまな資産価格の下落を引き起こし、結果として、「1929年の大恐慌的な状態に陥る可能性」までもが、暗に示唆されていたようにも感じられた。

ただし、私自身としては、この点が「実務担当者の勇み足」のようにも思われたが、さすがに、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれるように、「BIS(国際決済銀行)」については、「世界の金融」について、全ての資料が整っていることには、間違いがないようである。つまり、「巨大なノンバンクの破綻」については、何らかの根拠が存在する可能性もあり、実際に破たんすると、当然のことながら、巨大な「リスク」が伴うのが当然のことであるが、この時に注意すべき点は、「最後の貸し手」である「中央銀行」が、「どのような手段を取るのか?」という点である。

具体的には、「中央銀行」が「紙幣の増刷」を実施し、市中に資金供給する可能性である。そして、「BIS」としては、この点を熟知しており、「今後、金利が世界的に急騰した時に、どのような事態が発生するのか?」も、よく議論されたものと思われるが、今回の年次総会では、驚いたことに、この点が、ほとんど、言及されていなかったのである。そのために、何らかの意図が隠されているようにも思われたが、結局は、「BIS」と「各国中央銀行」との間で、「責任のなすり合い」が行われ始めた可能性が存在するようにも感じた次第である。(2018.7.4)

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トランプ大統領の勘違い

現在、世界の金融市場は、トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争で、混乱状態に陥っているが、今後の注目点は、「いつ、トランプ大統領が、自分の勘違いに気付くのか?」だと考えている。つまり、「トランプ大統領」としては、「米国の金融力と軍事力を頼りにして、他国から、貿易面での譲歩を引き出そうとしている状況」とも言えるようだが、このことは、過去の推移を無視した暴挙のようにも感じられるのである。

具体的には、「1990年代の前半」に発生した「米国における国家財政の破綻危機」を忘れている可能性のことでもあるが、当時は、「国家の財政問題」に加え、「民間金融機関の破綻危機」、そして、「巨額の貿易赤字」などで大騒ぎの状況となり、この危機を救ったのが、「デリバティブの大膨張」だったのである。つまり、「1990年代の後半」から、急激に残高を拡大した結果として、「民間金融機関」のみならず、「米国の国家財政」までもが、危機的な状況を脱することができたのだった。

しかし、現在では、「喉元過ぎれば、熱さ忘れる」という言葉のとおりに、「米国の金融力と軍事力は、かつての力を取り戻した」と錯覚されているようだ。具体的には、「張り子のトラ」のような「金融の力」を頼りにして、今回、「貿易戦争」が仕掛けられたようだが、実際には、「世界的な信用」を失うことにより、「米国の金融そのものが、根本的な力を失う可能性」が存在するようにも感じられるのである。つまり、今回の「貿易戦争」が、結果として、世界の「金融システム」や「通貨制度」を、全面的に崩壊させる可能性が存在するものと想定されるのである。

このように、現在の「米国の強さ」が「砂上の楼閣」というべき状態にありながら、「トランプ大統領」は、まったく気づいていない状況のようにも思われるが、実際には、過去20年間に発生した「デリバティブの大膨張」、そして、その余力として発生した「量的緩和」が、間もなく、限界点に達するとともに、反動的な力が発生する可能性が、今回の「BISの年次総会」で、大々的に警告され始めたのである。

具体的には、「金利のスナップバック」のことだが、今までの推移を考えると、「今後、どれほどの金融大混乱が発生するのか?」については、全く予断を許さない状況とも言えるようだ。つまり、トランプ大統領が、自分の勘違いに気付くときが、実際の崩壊が始まった時であり、この前後から、本格的なインフレがスタートし、世界的な株高が始まるものと想定している。(2018.7.4)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion7878:180801〕