金融緩和の副作用
最近、「金融緩和の副作用」という言葉が頻繁に使われるようになったが、この点には、注意が必要だと感じている。つまり、日経新聞によると、「日銀による株式の買い付けが、株価形成に歪みを生じるような事態」が副作用の一例として指摘されているが、現在、大きな問題となっているのは、「地銀」を中心にして、「金融機関が、どのようにして収益を確保するのか?」という「ビジネスモデルの問題」とも言えるからである。
つまり、「超低金利」や「マイナス金利」の状態が、長く続いたために、「金融機関の収益構造」が、大きく変化したわけだが、この点については、実際のところ、「日銀の当座預金」が諸悪の根源とも考えられるようである。具体的には、「約390兆円」もの資金を金融市場から吸い上げて、「国債の買い付け」に使われたからだが、この点については、典型的な「金融抑圧(ファイナンシャル・サプレッション)」でもあったようだ。
より詳しく申し上げると、「日銀が、国債のみならず、株式などを買い付けた事実」については、一種の「価格操作」のような状況でもあったようだ。つまり、「金利」のみならず、「株価」までもが、日銀が指摘するとおりに、「きわめて異常な水準にまで歪められた状況」となっているからだが、実際には、「オーバープレゼンス」という言葉のとおりに、「日銀の存在」が金融市場で目立ちすぎている状況であり、今後、想定される「最も重大な副作用」は、このことが、根本的な原因になるものと考えている。
つまり、大膨張した「日銀のバランスシート」について、「今後、どのような方法で正常化や出口戦略が実施されるのか?」が、まったく見えず、実際には、「デフレの存在」を理由にして、「時間稼ぎ」を行っている状況とも思われるのである。そのために、今後の注目点は、「限界点に行き着いた時に、どのような副作用が発生するのか?」ということだと考えているが、過去の歴史が教えることは、現在の「アルゼンチン」や「ベネズエラ」のように、「ハイパーインフレ」と「高金利」に見舞われる事態である。
しかし、現時点で、不思議な点は、「いまだに、ほとんどの日本人が、この事態を憂慮していない」という事実であり、「日大のタックル事件」や「ボクシング協会の告発事件」などと同様に、「水面下で問題が山積していながらも、かろうじて、実際の事件になっていない状態」のようにも思われるのである。そのために、今後の注目点は、「事件が発覚した時に、マスコミや国民が、どのような対応を取るのか?」であり、実際には、「日本人に特有のパニック状態が引き起こされる可能性」が危惧される状況でもあるようだ。(2018.8.3)
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経済成長と自然災害
「2018年」については、将来的に、「世界的な異常気象の年だった」と言われる可能性が出てきたようだが、この原因としては、やはり、「化石燃料の大量消費による地球温暖化」が指摘できるようである。つまり、現代人が求めた「便利さ」や「快適さ」の代償、あるいは、コストとして、「環境破壊」が進展したものと思われるが、この点を、「コストパフォーマンス」の観点から考えると、すでに、「コスト」の方が「パフォーマンス」を上回り始めた可能性も存在するようである。
具体的には、「2011年の3・11事件」で崩壊した「福島原発」についても、「これから、どれほどの費用が掛かるのか?」が、まったく見えない状況であり、実際には、「今までに被った恩恵よりも、今後のコストが、はるかに上回る可能性」が出てきたようにも思われるのである。そして、この時に考えなければいけないことは、「今後の費用を、誰が負担するのか?」ということでもあるが、実際には、「資本の論理」で説明が付かなくなる状況も想定されるのである。
つまり、「お金の切れ目が縁の切れ目」というような状況が、今後、世界の到る所で発生する可能性が存在するようにも感じているが、この点については、「過去数十年間の反動」とも考えている。具体的には、「1971年のニクソンショック」以降、世界全体に、有り余るほどの資金が溢れた結果として、「非効率、かつ、不要不急のビジネスが、大量に実施された可能性」が存在するのである。
その結果として、「地球環境の破壊」にまで進展し、現在では、数多くの自然災害が、世界全体で発生しているものと思われるが、このような状況下で、「金利の急騰」や「マネーの縮小」、そして、「利益率の減少」などが発生した場合には、より一層、「コストパフォーマンスが悪化する事態」が予想されるのである。つまり、数多くの既存ビジネスで、儲からない事態が発生する可能性のことだが、今までは、大量に存在した「コンピューターマネー」、あるいは、世界的な「超低金利状態」により、真実が隠されていた状況のようにも感じている。
そして、このことがはっきりするのは、「金利のスナップバック」という、世界的な金利急騰が発生した時だと思われるが、実際には、このことが、「金融緩和の副作用」であり、また、行き着く先は、現在の「ベネズエラ」や「アルゼンチン」のように、「ハイパーインフレ」と「高金利」という「国家の体力」が完全喪失した状況だと考えている。(2018.8.3)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion7956:180831〕