本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(207)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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キャッシュレス社会という幻想

現在、「キャッシュレス社会の到来」が、多くの人々に確実視されているようだが、この点には、大きな注意が必要だと感じている。つまり、「通貨」の歴史や本質を考えると、現在の「キャッシュレス社会」については、一時的な「徒花(あだばな)の状態」であり、実際には、昨年の「ビットコイン」と同様に、「金融メルトダウン」が進行する過程での「バブル的な状況」のようにも思われるからである

より詳しく申し上げると、「2008年のリーマン・ショック」以降、世界的な「金融のメルトダウン」が進行し、その過程で、「国債のバブル」や「ビットコインのバブル」などが発生したが、現在の「キャッシュレス社会」については、この点に関する「最終段階の動き」のようにも感じられるのである。つまり、「デリバティブ(金融派生商品)」を始めとした「全ての金融商品」、そして、「株式」や「商品」などの「実物商品」において、「本来の価値以上の価格上昇、あるいは、残高の異常な急増」などが発生することが、典型的な「バブルの状態」とも思われるのである。

具体的には、現在の「デリバティブのバブル」や「世界的な国債バブル」などのことであり、この点については、現在の「キャッシュレス社会」という理解にも、「クレジット残高の増加」などの症状が現れているものと感じている。そのために、これから注意すべき点としては、「金利」が急騰し、「紙幣の大増刷」が始まった時に、「通貨の流通コスト」という「決済費用」が急増する可能性、すなわち、「紙幣の運搬コスト」や「保険費用」などの増加だと考えている。

つまり、これから想定される「大インフレの時代」においては、今までとは違い、「中央銀行」が大量の紙幣を増刷し、「人々は、紙幣を使わざるを得なくなる状況」が想定されるのである。しかも、最後の段階では、10年ほど前の「ジンバブエ」などと同様に、「100兆ドル」などのような「高額紙幣」までもが発行される可能性もあるようだが、基本的に言えることは、「通貨や国家に対する信頼感が強くなる時には、通貨の質が落ちる」ということである。

換言すると、現在の「キャッシュレス社会」は、「通貨の質が最も劣化した状態」となっており、今後は、反対に、「通貨の質」が高まる状況も予想されるのである。そのために、私自身としては、「将来的に、人類が進化し、より信用度の高い社会が実現した時に、本当のキャッシュレス社会が到来する」ものと考えている。(2018.10.2)

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9月相場を振り返って

「2018年の9月」は「時間とエネルギーの左右対称理論」により、歴史的な転換期になるものと考えていたが、この理由としては、「2008年9月」の「リーマン・ショック」を中心線にして「1998年9月」の「LTCM事件」を対比させることにより、「2018年9月」というタイミングが浮かび上がってきたからである。しかも、この裏側には、「オフバランス(簿外取引)による、デリバティブの大膨張」が隠されており、実際には、「1998年」に「約5000兆円」という規模だったものが、その後、「2008年前後」には「約8京円」という規模にまで大膨張したことが理解できるのである。

また、その後の「量的緩和(QE)」については、「デリバティブの大膨張」が産み出した「コンピューターマネー」を使い、「先進各国の中央銀行が、金利を中心にして金融市場の価格操作を行った状況」でもあったようだ。しかし、現在では、「市場は国家よりも大きい」という言葉が使われるとともに、「国家や中央銀行は、自分よりも大きな金融市場をコントロールし続けることは不可能である」という認識が増えているのである。

つまり、どこかの時点で、必ず、「金融抑圧」、あるいは、「金融のコントロール」が効かなくなり、本格的な「インフレ」が訪れる状況を想定しているが、現在では、「やはり、9月が正解だったのではないか?」とも感じている。具体的には、「世界的な金利上昇」の原因として、「コンピューターマネー」の枯渇が、裏側に存在する「デリバティブ」の問題を再燃させ始めた状況が想定できるからである。

別の言葉では、「超低金利状態を維持するためには、中央銀行のバランスシートを拡大し続けなければいけない」という運命を背負った「先進各国の中央銀行」が、現在、逆の動きを取り始めているのである。また、多くの人々は、「トランプ大統領」が仕掛けた「貿易戦争」に注目し、「景気の悪化が、株安を引き起こす」と理解しているようにも思われるが、実際には、「実体経済」よりも数倍の規模にまで膨れ上がった「マネー経済」が崩壊すると、まったく逆の動きになることも想定されるのである。

つまり、今回、最も注目すべき点は、「過去20年間、常に、世界的な金融政策の先頭を走ってきた日銀」が、「いつ、本格的な紙幣の大増刷を実施するのか?」ということである。そして、現在の「世界的な株安」については、この点に関する「催促相場」のようにも思われるが、実際のところ、「日銀」が、本格的な「インフレ政策」を実施した時には、急激な「円安、株高、そして、金利上昇」が始まるものと考えている。(2018.10.2)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion8124:181031〕