世界平和アピール七人委員会は4月20日「今夏の東京オリンピック・パラリンピックは開催すべきではない」というアピールを発表した。
アピールは、まず、新型コロナウイルス感染症が拡大し続けているのに、政府による科学の軽視・無視によりワクチン接種が遅れ、国内の医療体制もすでに限界を超えていると指摘。そして、このままオリンピック・パラリンピックを開催すれば国内の医療従事者にいっそうの過重負担を強いることになり、人命を犠牲にした開催にとなる可能性が十分にあるとして、「今夏の東京オリンピック・パラリンピックを行わないという決定を速やかに下せ」と求めている。
世界平和アピール七人委は、1955年、ノーベル賞を受賞した物理学者・湯川秀樹らにより、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の知識人の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決してはならない、を原則に日本国憲法擁護、核兵器禁止、世界平和実現などを目指して内外に向けアピールを発してきた。今回のアピールは146回目。
現在の委員は大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学者)、池内了(宇宙物理学者)、池辺晋一郎(作曲家)、髙村薫(作家)、島薗進(上智大学教授・宗教学)の6氏。
アピールの全文は次の通り。
今夏の東京オリンピック・パラリンピックは開催すべきでない
世界平和アピール七人委員会
開会式まで100日以内になり、オリンピック・パラリンピックの日本代表選手全員の最終的な決定をすべき時期となり、聖火リレーも始まった。ところが代表選考ができていない種目では、代表を過去の成績で決めるという異例のことが起きている。聖火リレーでは公道でない場所で関係者だけで形ばかりを行ったことにする府県が出始めている。
これは、新型コロナウイルス感染症COVID-19とその変異種の感染まん延が急速に広がっているためである。政府は、「まん延防止等重点措置」を次々に指定しているが、感染拡大に歯止めがかかっていない。政府が委嘱した専門家が科学的データに基づいて第4波到来とみているのに、政府は科学の軽視・無視を繰り返している。ワクチン接種は遅れていて、変異種に対する効果も解明中で結論に達していない。検査体制も広げられないままである。
国内の医療体制は、すでに限界を超えた地域がではじめており、必要不可欠な病床・医療関係者の確保もできていない。世界の感染状況を見ても、ワクチン接種は進んでいるものの、依然として各地で感染拡大が続いていて収束に向かっていない。
1万5000人という選手、その他審判、役員、スポンサーが世界の感染まん延地からまん延状態が急速に拡大している日本に集まり、非常に多くの大会ボランティアを動員する渦中において、市民と接触させないでオリンピック・パラリンピックを安全に行える実効案は何ら示されていない。オリンピックを開催するとすれば多くの医療関係の人員や資源をさかなくてはならないが、それが国内の医療従事者のいっそうの過重負担を招くことは明らかである。そうなれば人命を犠牲にした開催となる可能性が十分にあるが、それは言うまでもなく平和の祭典であるはずのオリンピック・パラリンピック開催の趣旨に合致しない。
リスクが否定できない以上、安全の側にたって、今夏の東京オリンピック・パラリンピックを行わないという決定を速やかに下すのが当然である。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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