新着情報No.31 2017年6月21日 東北大学本調査委員会調査報告書(2016年12月16日付け)を批判した解説記事(「東北大学調査報告書(2016年12月16日)の井上明久東北大前総長らに『研究不正は無かった』という結論は著しく科学的合理性を欠く」)を公表します。 図1は,東北大学本調査委員会が2014年2月21日付けで日野秀逸氏(フォーラム代表)らに送った調査協力依頼文書からの再掲です.元図は図中に記した通りで,赤の楕円及び四角の枠囲いは引用者,試料直径同定のための付箋(幅1,3,4,5,7mm)は東北大学本調査委員会のもの.JIM96論文は,Nd(ネオジウム)基バルクアモルファス(以下,BAと表記)の磁気的性質を扱い,JIM97,JIM99論文は,Zr(ジルコニウム)基BAの機械的性質を扱っています.
研究対象は前者と後二者とでは全く異なります。しかし図1の赤の楕円で囲った3本の製作試料外観写真は,形状の類似や,写真に写り込んだスケールと製作試料との位置関係,そして試料直径同定に用いられた付箋から,同一の被写体(試料)を撮影していることは明白です。ここから,JIM97,JIM99年論文には次の3つの客観的不正行為事実が存在することに疑いの余地はありません.(1) 井上氏らは,JIM96論文Fig.2と同時期に撮影していたと思われる被写体3本の写真をJIM97,JIM99論文で,無断流用したこと.JIM99論文で無断流用したJIM97論文Fig.2の写真の被写体はNd基BAと断定されたので,井上氏らは,一度ならず二度までも,Nd基BAの試料外観写真を,Zr基BAの試料外観写真であると偽って掲載したこと. (2) JIM96論文Fig.2で,赤丸で囲った3本の試料の直径は3,5,7mmだが,これが,JIM97論文Fig.2では,1,3,5mm,JIM99論文Fig.1では,3,4,5mmと記されている.JIM96論文のキャプション表記が正しいので,井上氏らは,JIM97,99論文でキャプションに改ざん数値を表記したこと. (3) JIM99論文Fig.1では,別の試料写真をJIM97論文Fig.2で用いた写真に貼り付けたものを撮影してJIM99論文Fig.1とし,JIM97論文Fig.2との関係を何も示さずに,新たに試料が作製されたことを装っていること. こうした客観的不正行為事実のうち、(1)及び(3)を中心に日野氏らは2013年1~3月期に、またこれとは独自に齋藤文良(東北大学名誉教授、多元物質科学研究所 元所長)、矢野雅文(東北大学名誉教授、電気通信研究所 元所長)の両氏が、2013年9月に、井上氏ら関係論文の著者らを研究不正で東北大学に告発しました。東北大学は、昨年(2017年12月16日)、この日野氏らと齋藤氏らの告発に対する調査報告書を公式ホームページで公表しました。東北大学本調査委員会は,JIM97,JIM99論文における(1)の製作試料外観写真の無断流用を事実だと認定したが,不正とは認めず,(2)は告発に含まれていなかったことを理由に不問に付し,(3)は記載の不備であって,不正ではない,と結論づけたのでした.既に日野氏ら、齋藤氏らはこうした東北大学の調査委員会報告書に対して根本的な疑義を提示しておられますが,今回公表する頭記記事では,こうした東北大学の結論が自ら行った調査結果に相反するものであることを明確にしています。詳細は記事をご覧下さい。 解説記事は下記をクリック: |