橋下徹大阪府知事が就任前に弁護士として出演したテレビ番組で、山口県光市の母子殺害事件の被告弁護団への懲戒請求を呼びかけたことが業務を妨害されたことになるのかどうかが問われた事件で、最高裁が、第一審・第二審の判決を破棄し知事勝訴としたことは、国旗・国歌等が関わる一連の事件と一線を画し、一般市民に保障された弁護士への懲戒請求権の実質的保障の内容をどう理解するかに関わる事案であり、最高裁が知事への賠償請求を排したことは評価されるべきものと思います。
私見では、知事への賠償請求を容易に認めることは、法曹への懲戒請求を一般市民に逡巡させるに充分な事由になり、一種の治外法権を認めるに等しいと思われます。 知事の発言は、弁護士の業務に関連して、不服がある一般市民に認められている法的権利の内容を周知せしめたものであり弁護士業務に就いておられる方の発言として却って当然と思われます。
この事案に関わらず、特定団体や個人の言動に関して、現今の世情に屈せずに予断と偏見を排して理解し判断することが、憲法上で保証された国民の権利を擁護し発展させる土壌になると信じております。 知事には、弁護士への懲戒請求権の行使に関して、自己に不利益が齎されるかも知れない環境の中で勇気のある発言をされた今回の事案を他山の石とされ、不必要で性急な反動的条例の制定等を反省して欲しいものです。