安倍晋三政権は「積極的平和主義」推進に、熱を上げてきた。国際紛争が続く時代を乗り切るため、「普通の国」を目指している意図が明らかである。
「武器輸出3原則」の姿勢が崩れる
政府は、新たな武器輸出管理3原則の素案をまとめ、3月中に閣議決定する方針だ。戦後69年、「平和憲法」を守り続けてきた日本国家改造につながる大問題である。そもそも「武器輸出3原則」は、佐藤栄作内閣が1967年に決めた方針で、①共産圏②国連安保理決議により武器輸出が禁止されている国③国際紛争の当事国またはその恐れがある国――への武器輸出は認められていない。さらに三木武夫内閣が76年、対象地域以外も原則禁止の縛りをかけた。しかし、83年の中曽根康弘内閣が米国への武器技術供与を認めて以来、当初の原則はかなり緩和されてきた。それでも歴代内閣は「武器輸出3原則堅持」の姿勢を表明し続けてきたのである。
新たな3原則は①国際的な平和や安全の維持を妨げることが明らかな場合は輸出しない②輸出を認める場合を限定し、厳格審査する③目的外使用や第三国移転について適正管理が確保される場合に限定する――としているが、複雑怪奇な国際紛争は激化するばかりで、武器禁輸の手段としては余りにも手ぬるい改正ではないか。
拡大解釈の余地が大きい
毎日新聞2月27日付社説は、「見直しの背景には、先端技術を要する武器は国際共同開発・生産が主流になっており、参加によりコストを減らしたり、防衛産業強化につなげたい狙いがある。新原則のうち『輸出を認める場合』は、拡大解釈の余地が大きい。目的外第三国移転は、原則として日本政府の事前同意を相手国に義務づけているが、日本側がチェックする仕組みはない。輸出した武器が紛争に使われ、日本への反感を生んだり、日本の安全保障に不利益をもたらす可能性も否定できない。安倍政権は、集団的自衛権の議論が本格化する前の3月中に新原則を閣議決定する方針。スケジュールありきでなく、国民の納得が得られるような議論が必要だ」(要旨)と、強引な政府の姿勢に警告を発した。
琉球新報・京都新聞・神戸新聞・信濃毎日も27日付社説で、「歯止めなき新原則」に同様な危機感を指摘、政府の〝抜き打ち〟的暴挙を厳しく批判していた。
「ベトナム」に学ばぬ傲慢な判断
また東京新聞2月17日付社説は、「積極的平和主義は安倍首相の外交・安全保障の看板政策。そこに軍事による平和の傲りが潜んでいないか、深く憂慮している。安倍首相は施政方針演説で『日本は米国と手を携え世界の平和と安定のために、より一層積極的な役割を果たす』と表明したが、平和憲法9条の歯止めがなくなれば、米国の同盟国の韓国、タイ、フィリピンがベトナム戦争に派兵したように、日本の派兵拒否は難しくなる。それでいいのか。(中略)ベトナム戦争の愚行につき、米国のジャーナリスト、デービッド・ハルバースタム氏は『能力や軍事力、経済力への過信が傲慢を生み、判断を誤らないための道徳的信念も欠いていた』と仮借ない筆致で糾弾した」と指摘していた。安倍首相の積極的平和主義は「戦争のできる国家」を目指しているとの危惧を一層感じるのである。
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