韓国通信NO768
<大統領の弾劾>
韓国憲法裁判所が全員一致で大統領を罷免した。非常戒厳宣言から123日を経た結論だった。判決を出したのは裁判所だが、憲法違反に怒った市民たちが判決を引き出したと言うべきだ。市民たちは厳冬のなか、団結して民主化運動の歴史に新たなページを加えた。
裁判官全員一致の判決は不可欠だった。大統領と政権与党、勢いを増した極右勢力に裁判所が忖度したら不可能である。自民党と財界の顔色を窺うわが国の最高裁とは大違いだ。国の将来を見据えて臆することなく憲法違反を指摘した立派な判決だった。
日本のメディアには、弾劾支持派と反対派の争いに裁判所が支持派に軍配を上げた程度の報道が目立った。日本には大統領もいなければ憲法裁判所もないが、憲法違反で大統領が辞めさせられた重大さに気づいていないのは不思議だった。
<トランプは資本主義の「壊し屋」>
近所の桜の名所へ花見に出かけた。満開の桜を楽しんだ後、トランプ遊びをした。「トランプという名前が不愉快だ」と子供みたいに僕がつぶやくと、一緒にいた小学6年生が怪訝そうに「じゃあ、何ていうの?」。「トランプのジジ抜き~」と娘が話を混ぜ返して皆を笑わせた。「今だけ自分だけお金だけ」のトランプ大統領を知らない人がいないほど有名になった。
今や「トランプ・オンステージ」になりつつあるが、気づかせてくれることがある。株価の暴落を始め、世界経済に赤信号がつき始めた。これまでアメリカの言うとおりにしてきたので甘い期待をした政財界の姿は滑稽というほかないが、トランプによって世界経済不況、さらなる所得格差の拡大、地球環境の破壊と資本主義経済の崩壊が現実味を帯び始めた。自己チュウで天真爛漫なトランプが、図らずも資本主義の「壊し屋」になった。
ジェイソン・ヒッケルの最新の著作『資本主義の次に来る世界』、斎藤幸平の『人新世の「資本論」』を読んだ方も多いはず。
経済成長が地球と人類を滅ぼすという両者に共通する主張は、これまでの資本主義対社会主義という議論とは異なる人類文明崩壊への警告である。「国が豊かになれば国民も豊かになる」という単純な発想がトランプによって崩れようとしている。経済成長にしがみつく限り破綻せざるを得ない資本主義。トランプはその破綻を加速させる。「NOトランプ!」と叫んでも資本主義には未来はない。だが、地球と人類には無限の可能性があるのも事実だ。
二人の学者は共通して、自然環境が破壊される前に人間が生き方を変えることを求める。資本主義に未来はないと公言する人は少ないが、彼らを支持する人は着実に増えつつある。
「脱成長が意味するのは、惨めな生活をしたり、人間の可能性に厳しい限界を設けたりすることではない。むしろ正反対で、豊かに生き、自分たちの行動とその理由について、より高いレベルの意識に到達することなのだ。民主主義の力を信ずることだ」
ジェイソン・ピッケル
「人類が環境危機を乗り切り、『持続可能で公正な社会』を実現するための唯一の選択肢が『脱成長コミュニズム」だ』
斎藤幸平
初出:「リベラル21」2025.04.08より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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