気がかりな「アベノミクス」の動向

為替変動、金利操作などが複雑に絡む景気動向の判断は極めて難しい。エコノミストの見方もまちまちで、素人は戸惑うばかりだ。

 

黒田東彦日銀総裁の金融緩和政策に注目

安倍晋三首相は昨年3月、アジア開発銀行総裁の黒田東彦氏を日銀総裁に起用した。アベノミクス推進のためと観測されている。日銀には総裁と2人の副総裁のほか政策委員が6人いる。

 

        政策委員の一人が、先行きを懸念

日経新聞21日付朝刊に掲載された「日銀政策委員インタビュー」は興味深かった。日銀の木内登英委員がインタビューに応え、消費税率引き上げを控え市場でくすぶる追加緩和について「経済や物価が多少下振れする程度では、追加策による副作用が効果を上回る」と慎重な姿勢を示した。また昨年4月に導入した量的・質的金融緩和は、2015年春をメドに「緩和継続や縮小の是非を慎重に判断すべきだ」と語った。

木内委員の提案は日銀内では少数意見のようだが、黒田総裁ら中心メンバーも追加緩和はひとまず不要との認識を示しつつも、2年過ぎても物価上昇率が2%で安定するのに必要な時点まで緩和を続けたい考えという。

 

        米国の経済政策が世界に影響

真壁昭夫信州大教授は講談社の電子書籍「現代ビジネス」(1月23日号)で、「黒田総裁が追加緩和策は不要と言い切った背景には、追加策というカードを温存しておきたいとの意図がありそうだ。4月に消費税率が引き上げられて、景気が大きく落ち込むようなケースで、そのカードを切らざるを得ないとの読みも考えられる。あるいは、中国や欧州などの海外経済のリスク要因が顕在化して、金融市場全体がリスクオフに傾き、円高が進むときにも、日銀は追加緩和策を求められることは明らかだ。その時、日銀は追加緩和策を切り札として使うことができる。もう一つ気になるのは、米国のルー財務長官が、円安傾向の進展に懸念を表明したことがある。米国が、円安・ドル高を真剣に懸念する段階ではないと見られるものの、財務長官とすれば、ドル高のスピード調整をしておきたいと考えていることだろう」と分析している。

 

       消費税アップ後の庶民の生活は?……

米国のサジ加減が、世界の経済に大きな影響を与えていることは、まぎれもない事実。この変化をどう読み取るか、金融当局にとって難しい局面が当分続きそうだ。今のところ円安誘導の効果もあって株価上昇など景気は上向きだ。4月からの消費税3%アップ前の駆け込み需要がかなり認められる。しかし、各企業・商店は4月からの対応に腐心している。特に庶民の生活がどうなるか先行きが心配だ。政府の適切なカジ取りが望まれる。

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