①革命の党と軍の問題がある。しかし、②プロレタリア階級の大分裂を考えさせられた。先進国社会主義革命の敗北と不発は、②の問題が第一だろう。ロシア革命や中国革命の変質=官僚制国家資本主義の問題と並んで、20世紀が残した大きな問題だろう。
(1)強いられた決戦に敗北
どうしても、ロシア革命の2月~10月、二重権力→自然発生的な7月武装蜂起の失敗→だがボルシェヴィキはエスエル(農民が基盤)とメンシェヴィキを圧倒してソヴィエトの多数派となり武装蜂起に勝利、この推移と対比してしまう。
・二重権力
1918.11.3 キールで水兵・労働者・兵士の蜂起
11.9 ベルリンでゼネストと武装デモ 民衆が全市を制圧 帝政崩壊
11.10 ベルリン労兵評議会(レーテ)の全体会議
ここで「労兵評議会執行評議会」と「人民代理委員評議会」(臨時政府)を任命したが、その2つの間に二重権力が出現した。筆者は対立を「深刻」「決定的」と強調している。
スパルタクス団や革命的オプロイテ、それを含んでいたUSPD=独立社民党は、「レーテ革命」であった。「すべての立法権、行政権、司法権はレーテのもとに置かれねばならぬ」(リープクネヒト)。SPD=社民党は、表面的には議会制民主主義と社会改良主義、実際は「既存の行政機関や官僚機構を温存」した「平穏と秩序」つまり資本主義社会の護持であった。それどころか、「陸軍最高司令部が多数派社会民主党と同盟」、と筆者は強調している。
11.16 ベルリン労兵評議会執行評議会 「国民議会」選挙を容認
12.16~21 ドイツ労働者・兵士評議会第一回総会 「国民議会」選挙を決定
ベルリン労兵評議会執行評議会で、オプロイテ・スパルタクス・USPDは、①「赤衛軍創設」、②「国民議会反対」、③「行政機関に対する管理統制」を目指した。しかし、全て阻止され、逆に、多数派のSPDによって「レーテ革命」と対立する「国民議会」を決定された。
・反革命
1919.1.6 ベルリン「1月闘争」開始 市街戦展開(~1.12)
臨時政府=SPDが旧帝政の軍を動員して闘争を武力せん滅
1.15 ローザとリープクネヒトの虐殺
1.19 戒厳令と軍による首都占領下で「国民議会」選挙を実施
2.6 ヴァイマルで憲法制定の「国民議会」開会
12月にベルリンでの軍のクーデターと近衛師団の「人民海兵師団」(蜂起した海軍水兵がベルリンに移動して結成)攻撃、1月にベルリン警視総監(USPD)罷免など、これに対する反撃が「一月闘争」であった。オプロイテとUSPDとKPD=共産党(スパルタクス団)が共同で呼びかけた大規模なデモであったが、自然発生的な武装蜂起となった。
こう筆者は総括している。「予期してなかった厖大な数の民衆」の決起で、「状況判断を誤まり」「革命的状況が熟した」と権力奪取を呼びかけた。臨時政府=SPDは、「最大で最後の機会」として、KPDに狙いを絞って、「レーテ革命」に対する反革命を実行した。
こう総括したい。決戦は不可避。「指導部は機能不全」(ローザ絶筆)だが、決戦したからこそ、敗北後も、KPDは壊滅せず、勢力を拡大した(後にナチスに敗北し壊滅したが)。
臨時政府=SPDは、独占資本の資金援助で旧帝政の軍隊を「フライコール(義勇軍)」に組織し動員した。ベルリンに続きバイエルンなど全国の「レーテ革命」を圧殺し、ワイマール体制を成立させ、政権を担った。まさにブルジョア民主主義はブルジョア階級独裁である。
・まずは革命の党と軍隊の問題だが
プロレタリア階級のしっかりした革命党が必要である。革命の軍隊も必要である。しかも、それは、中国革命やベトナム革命の経験から、革命党の軍隊である(勝利後にプロレタリア階級独裁国家となったソヴィエト・レーテの軍隊に再編されるとしても)。
(2)しかしプロレタリア階級の大分裂が第一の問題
ボルシェヴィキとは対照的に、KPDは革命的危機の中でも多数派になれなかった。SPDはレーテの多数派であり続けた。これが指導の動揺と決戦での敗北を決定したと思う。
・帝国主義の社会的支柱
SPDは、社会主義の「精華」であったが、同時に帝国主義の社会的支柱となっていた。ロシアは絶対主義の封建的帝国主義、ドイツはボナパルティズムの資本主義的帝国主義。資本主義的帝国主義は、プロレタリア階級を分裂させ、その上層を基盤とする労働組合とその代理政党を社会的支柱とする。戦争と危機の時期に突然に出現したのではない。
社会改良主義が資本主義と癒着する。帝国主義が本国の労働者階級の相当部分を買収し上層として分化させる。平和と安定の時期からの、この相互関係の長い過程があった。だから、危機の時期に、プロレタリア階級の主流を社会革命に結集するには、平時からの、社会改良主義に対する批判と闘争の長い過程が必要であったと思う。
帝国主義の社会的支柱を突き崩す。この観点で、SPDにおける修正主義論争やマッセン・ストライキ論争、およびKPDにおける統一戦線戦術と社会ファシズム論、さらにはグラムシの「ヘゲモニー論」「陣地戦論」などを考え総括していきたいと思う。
・日本の現実
橋本健二『新・日本の階級社会』が示す被雇用者の現実(最新データは2016年)。
①新中間階級 専門・管理・事務に従事(女性と非正規事務を除外) 約1285万人
②労働者階級 専門・管理・事務以外に従事(女性と非正規事務を含める) 約3906万人
1.正規=約2192万 2.パート主婦=約785万 3.非正規(パート主婦以外)=約929万
新中間階級は、被雇用=賃労働だが、資本の代理の地位にある。非正規は、隔絶した格差の下にある(低賃金・不安定雇用・社会保障から除外・結婚と家族ができないなど)。相対的過剰人口=産業予備軍から制度化された新しい身分差別と言える。今後は外国人労働者が大量に加わる(すでにヨーロッパの現実)。
プロレタリア階級が、政治とイデオロギーの前に、すでに社会的経済的存在で、上層と中層と下層へ大分裂している。この差別分断支配によって、資本への労働者階級の隷属、資本主義の賃金奴隷制が強められ、かつ覆い隠されている。
・現実から考えると
こう言えるのではないか。パート主婦を含めた下層=非正規に依拠して闘争し、中層=正規を引き込み共闘の中で変革し、上層=新中間階級を再分解させる。経済闘争は下層の利益を中心とする(生活できる賃金・安定的な正規雇用と社会保障の完全適用など)。政治闘争は日米安保反対・憲法改訂阻止など全人民的課題。このような経済闘争と政治闘争の結合が資本と帝国主義に対して、労働者階級と人民の対立を鮮明にし、統一を促進する。
このような人民民主主義が社会主義革命を準備する、と言えるのではないか。(おわり)
2019.4.4
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〔opinion8548:190407〕