海と海産物の放射能汚染はこうして測れ,今から60年も前に見本はあった(NHK-ETV特集 「海の放射能に立ち向かった日本人~ビキニ事件と俊鶻丸(しゅんこつまる)~」より)

NHK教育TVのETV特集で,久しぶりに素晴らしいドキュメンタリーが放送され

ました。

2013年9月28日(土)午後10時からの「海の放射能に立ち向かった日本人~ビキニ事

件と俊鶻丸(しゅんこつまる)~」です。

再放送は10月5日(土)の午前0時45分(金曜日深夜)~ のようです。ぜひ,お見逃

しなくご覧下さい。

1954年3月のビキニ水爆実験と,第五福竜丸をはじめ,多くの日本のカツオマグロ漁

船が放射線被曝させられた直後の同年5月,気象研究所の三宅泰雄氏他,日本の若き

科学者達が俊鶻丸(しゅんこつまる)という調査船に乗り,放射線被曝や米軍による

内密の撃沈の危険性を覚悟の上で,海と海産物の放射能汚染の実態調査に命がけで乗

り出し,すぐれた報告書をまとめました。私は今の今までこの話を知らないままでし

たので,まことに自分の無知を恥じずにはおれません。

ところで,そこには,1950年代の半ばにおいて,早くも,核実験に伴う海の放射能汚

染の広がりや,魚(この場合はマグロを中心に,その餌となる海洋生物)の放射能汚

染の状況が明らかにされていたのでした。マグロの放射能汚染は,その部位や内臓に

よって大きく汚染の状況が違っていた他,いわゆる食物連鎖によって,プランクトン

の汚染がだんだんとマグロに至るにつれて濃縮・滞留して高くなっていくことも明ら

かにされました。

また,三宅泰雄氏は,その後日本において原発が増えて行く中で海洋の放射能汚染の

可能性を危惧し,多くの分野の専門家や科学者が総合的に放射能汚染の実態とその影

響を研究・実証できる「環境放射能研究所」の設立を提言されていました。

私は,当時の少なくない科学者や研究者達が,科学という営みにおいて真実を真摯に

求め,核兵器や放射能汚染に対して断固として立ち向かう気概と誇りを持った,立派

な人間の集団であったことを,このフィルムは証しているのだと強く感じます。そし

てそれは,今日のように,科学も科学者も,大資本を含む支配権力に完全包摂され,

恥ずかしくもみすぼらしくも,完璧なニセモノ=似非科学と化してしまった時代とは

決定的に違うのだな,ということを,同時に残念に思う次第です。

番組の最後の方で,福島第1原発沖合で海や海産物の汚染状況を調べる岡野真治氏

は,今と昔の汚染調査の違いに言及し,「今と昔を比べると,各分野の科学者・研究

者が協力して,継続的かつ本格的・総合的に海洋汚染を調査をする組織や体制が今は

ない,つくれていないという点が大きく違う」と指摘されていました。海洋環境の放

射能汚染と食品の放射能汚染について,やる気さえあればできる総合的で本格的な調

査研究体制が,福島第1原発事故後,いつまでたっても創られる様子はありません。

この事態を,自らの恥であると受け止めている科学者は,いかほど,この日本に存在

しているのでしょう。

それどころか,水産庁を筆頭に,多くの似非科学者達は,魚は放射性セシウムを体内

にため込まないだの,福島第1原発沖を含む日本の太平洋近海の海産物は心配無用・

危険性はない,などと,ろくすっぽ海産物検査をしなければ,海洋汚染の調査もしな

いで,日々「安全・安心キャンペーン」の無内容の宣伝PRを繰り返しているので

す。たとえば,俊鶻丸が当時やったような,マグロなど,大型の魚の内臓や部位の違

いによる放射能汚染の状態の違い,あるいは放射性核種による汚染状況の違い,ある

いは食物連鎖の状況などなど,調べるべきことは山のようにあるはずですが,およそ

科学者と名刺に書かれている人間達が,これについて多くを語ることは,まずありま

せん。

こうした日本と科学の危機の中で,大学や研究所において御用学をいそしむ腐った自

称「科学者」たちに,私は「恥を知れ」と申し上げたい。ビキニ事件後に俊鶻丸

(しゅんこつまる)が残した偉業は,逆に,福島第1原発事故後の今の日本のあまり

のみじめさと,悲しさと,情けなさを浮き彫りにしているような気がしてならないの

です。

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*NHK【ETV特集】海の放射能に立ち向かった日本人 ~ビキニ事件と俊鶻丸~

2013年9-28(土)夜11時、再放送:2013年10-5(土)午前0時45分(金曜深夜)

http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2013/0928.html

(以下,上記サイトから引用)

1954年3月1日、アメリカが太平洋ビキニ環礁で行った水爆実験で、日本のマグ

ロはえ縄漁船・第五福竜丸が被ばくしました。被害は水産物にも及び、日本各地の港

では放射性物質に汚染されたマグロが相次いで水揚げされます。しかし、核実験を

行ったアメリカは、放射性物質は海水で薄まるためすぐに無害になる、と主張しまし

た。

このとき、日本独自に海の放射能汚染の実態を解明しようという一大プロジェクトが

始動します。水産庁が呼びかけて、海洋や大気、放射線の分野で活躍する第一線の専

門家が結集、「顧問団」と呼ばれる科学者たちのチームが作られました。

そして水爆実験から2か月後、顧問団が選んだ若き科学者22人を乗せた調査船・俊

鶻丸がビキニの実験場に向けて出発します。2か月に渡る調査の結果、海の放射能汚

染はそう簡単には薄まらないこと、放射性物質が食物連鎖を通じてマグロの体内に蓄

積されることが世界で初めて明らかになりました。

俊鶻丸「顧問団」の中心的な存在だった気象研究所の三宅泰雄さんは、その後も大気

や海洋の放射能汚染の調査・研究を続けます。原子力発電所が次々と作られていく中

で、三宅さんをはじめとする科学者たちは、大きな原発事故にも対応できる環境放射

能の横断的な研究体制を作るべきだと声を上げます。

しかし、それは実現しないまま、2011年3月11日、福島第一原発の事故によ

り、再び放射性物質で海が汚染されました。

ビキニ事件当時、日本の科学者たちが行った調査から、今私たちは何を学ぶことがで

きるのでしょうか。俊鶻丸に乗り込んだ科学者の証言や、調査を記録した映像などか

ら描きます。

<参考サイト>

*岩波新書(青版)『死の灰と闘う科学者』三宅泰雄/著

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000000694191&Acti

on_id=121&Sza_id=E1

*NHK【ETV特集】海の放射能に立ち向かった日本人 ~ビキニ事件と俊鶻丸

~:ロボット人間の散歩道:So-netブログ

http://robotic-person.blog.so-net.ne.jp/2013-09-29

<海の放射能に立ち向かった日本人 – Dailymotion動画>

*(録画1)

http://www.dailymotion.com/video/x15bioi_%E6%B5%B7%E3%81%AE%E6%94%BE%E5%B0%8

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*(録画2)

http://www.dailymotion.com/video/x15av8j_etv-uminohousyanounitachimukattanip

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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion4627:131002〕