参議院選挙の結果が、色々と取り沙汰されています。なかでも、消費税増税についての民意を、与野党を問わず黒白正反対に受け取られる向きがあることは興味深いことです。
例えば、菅首相は、選挙前に増税を言い出したことを悔やんでおられるようで、国民は増税を望まず、これが直接の敗因になったと分析されているようですが、それは私のような支持政党無しで個人主義の人間にとっては的外れも良いところです。
(これについては別稿を参照。)
https://chikyuza.net/archives/1541
鳩山政権の破綻の理由
ただ、私は、この投稿時点とは違い、熟考した挙句に衆議院と参議院の構成が「ねじれ現象」のために、何事をも決しえないデッド・ロックに乗り上げることは避けるべきだと考えて民主党に投票をしましたが…。
流石に専門家は、この顛末を見抜いておられます。 本日(18日)付けの日経新聞は、田中愛治早大教授のコメントを掲載しています。 最初に「民主党だけでなく、自民党も比例区で得票を減らしており、勝者はいなかった。 民主党も自民党も物質的な恩恵を与えれば有権者が投票してくれるとの認識がいまだ強く、有権者がそれを見透かした結果ではないか。」と喝破され「一連の「「バラマキ政治」」に有権者が拒否感を持ち始めている。」とされるところなどは、我が意を得たりの思いです。
増税についての首相の中途半端な煮え切らない態度を有権者は嫌ったのです。 増税そのものでは無いのです。 教授は、「今回の選挙で首相がやるべきだったのは、消費税発言に党内で反発が出れば「「従えないならば公認を与えない」」とでも言うくらいの覚悟を持った対応だった。」と指摘されています。 正にそのとおり。 リーダーシップ不在の人物では、この国難の時代にあって不適当の烙印を押されるのです。
もとより現在の日本の国家財政は、消費税10%の増税ぐらいの小手先の策では、如何ともし難い危機にあることは専門家で無くても明白に認識出来るものです(IMFは15%と言っていますね)。 他の税目についても根本的な改革が必要です。 例えば、法人税ですが、租税特別措置法でいくら減税しても、衰退する一方の産業を国民の負担において延命するだけの効果しか無いようなものは廃止するしかありません。 経営者も「日本経済停滞の基本的な原因は企業の側にある。 需要の減少にもかかわらず、高度成長期のビジネスモデルから脱却しようとせず、需要の拡張だけを追い求めたことが問題なのだ。」(野口悠紀雄「世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか」)との指摘を受け止める必要があるでしょう。 経営者の団体にも、いい加減に「おんぶにだっこ」を国に求めるのはやめて、世界の荒波に自力で立ち向かう気概を持ってもらわねばなりません。
国民の側では、社会福祉制度の改革も必要でしょう。数十年の労働の末に受け取る年金よりも生活保護の金額が多いような不公正は直ちに是正するべきでしょう。 つまり消費税増税分を新たな「バラマキ」に使うことはならないのです。 子ども手当などの金銭の給付よりも、所得減税で対応する方が公正であるでしょう。
そもそも金銭を貰えるから子どもを産むのではありません。 昭和二十年代の貧しい時代にあっても、国民に希望があれば「団塊の世代」(この言葉は嫌いですが)のように一家に三人も四人もの子どもが居ることが普通の時代もあったのです。
菅首相と民主党は、考え違いをされておられるようです。