少子高齢化社会に加えて、コミュニティの衰退が進むなかで、近年、消防団の在り方が問題になることが多い。
一つは、消防団員の減少と高齢化が進み、後継者の確保が困難になっているが、ざっくり言えば1950年前後200万人いた消防団員が1980年代には100万に、2022年4月1日現在、78万3578人までに激減している。消防団の担い手の確保が困難なっていることである。また近年は、消防団の任務自体も消防活動よりも災害出動の方に重点が移りつつあることである。
私が消防団に関心を持ったのは、7・8年前に、順番に回って来る自治会の班長になって、自治会の決算書をよくよく見てみると、いつのまにか、消防団協賛金2万円という支出が続いているのを知って驚いたからである。
というのも、もう四半世紀も前になるが、私たちの自治会では、当たり前のように、日赤の社資、社協会員、共同募金等にかかる「寄付金」を、班長がそれぞれ500円の領収書をもって集金していた。いずれへの拠出金は、寄付であって、強制的に集めるものではなく、自由じゃないのか、と疑問視する会員も多かったのだろう。私を含め主婦たちが、自治会の役員10人の半分ほどを占めることになって、集金をやめて、自由意志によるものとする提案をしたところ、班長の負担軽減にもなるというので、班長会ではすんなり承認された。ただ、自由な寄付金をどう集めるかが問題となったが、A4の茶封筒に小さめの切れ目を入れて、そこへお金を入れてもらい、手渡しで、回してもらうことになった。二十数年たった現在もその方法は踏襲されている。
なのに、消防団協賛金という名目で、支出されていたのである。2017年になるが、佐倉市の自治推進課と危機管理課と何回か電話や文書でやり取りしたことは、以下のブログでも書いている。
消防団・社協・日赤などへの寄付を強制されていませんか~自治会の自治とは(1) »
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/04/post-8f66.html
消防団・社協・日赤などへの寄付を強制されていませんか~自治会の自治とは(2) »
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/04/post-7804.html
そこでわかったことは、消防団員は、非常勤地方公務員なので、消防団は寄付金を求めてはいけないが、協賛金、後援会費などは、自治会と消防団との間のことであり、佐倉市は関知しないとの一点張り。また、自治会支出の消防団協賛金は、地域の商店会・自治会連合体共催の夏祭りの警備のための謝礼とわかった。
そこで、危機管理課に、祭りのときに制服を着て警備にあたっている以上、地方公務員として謝礼を受け取っているのは寄付にあたりませんか、の質問には、地域住民による自治会が、警備等のお礼の「お気持ち」であって寄付とは言えないとの説明だった。
この見解は、今でも変わらず、以下の「自治会等役員の手引き」では、「労をねぎらうために支援をされているもの」「消防団を支援しようという地域の厚意による任意のもの」との説明がされている。
(Q)消防団の後援会費というのはどういうものなのですか
(A)後援会費につきましては、地域の方が、同じ地域の中で、仕事を持ちながら消防団活動に従事されている方々の労をね ぎらうために支援をされているものと考えます。
(Q)消防団の後援会費は絶対に支払わなければならないのですか
(A)あくまでも消防団活動を支援しようという地域の厚意による任意のもので強制・義務的なものではありません。 また、消防団は市内の全地区を管轄しており、後援会費支払いの有無に関わらず、火災発生時には、必ず出動いたします。
<佐倉市の消防体制>令和5年度自治会等役員の手引き(自治会活動Q&)
https://www.city.sakura.lg.jp/material/files/group/16/yakuintebiki.pdf 42-43頁
佐倉市の見解では、地方公務員はその業務について、地域住民から「労をねぎらうため」「厚意による任意」の金銭を受け取ってもなんら問題もない、ということになる。
一方で、以下の「自治会等問題解決の手引き」では、「募金を自治会費にあらかじめ上乗せして集めること」について「募金の一律収集は注意が必要です」の見出しで「募金を自治会費に上乗せして集める場合は注意が必要です。募金を自治会費に上乗せして強制的に徴収するとした決議は無効であるとした裁判例があります。」と注意を促している。この文言は、令和3年度の手引きには「自治会費からの寄付金や募金等を出すことは危険です」と言って裁判例の説明が続いていた。「危険」から「注意」への変更は何を意味するのか。私には、寄付金等の一律徴収の違法性からの一歩後退にしか思えなかった。
いま、私にとって、自治会は遠い存在になってはいるが、消防団協賛金、夏祭り参加費、防犯活動をしているNPO法人の会費が自治会財政からの一括納入になっている件ついて、会員の自由意思にゆだねるべきもので、こうした種類の募金・寄付は拡大する危惧があるので見直しをと、何回か自治会執行部に要望書を提出してはいる。しかし、なしのつぶてだったり、近隣自治会、地域住民との関係上必要との回答だったりしている。
皆さんの自治会では、どうなっていますか。
<募金の収集で悩んだら>自治会等問題解決の手引き(事例方式による問題解決の参考)
https://www.city.sakura.lg.jp/material/files/group/16/tebiki_mondai_2022.pdf 28頁
その裁判例というのは、自治会決議による募金及び寄付金の徴収は「会員の生活上不可欠な存在である地縁団体により、会員の意思、決定とは関係なく一律に、事実上の強制をもってなされるものであり、その強制は社会的に許容される限度を超えるものというべきである。したがって、このような内容を有する本件決議は、被控訴人の会員の思想、信条の自由を侵害するものであって、公序良俗に反し無効というべきである。」(大阪高裁平成 19 年 8 月 24 日、最高裁上告棄却)
さらに、最近は、消防団内部の運営・会計における不正、脱法が問題になっている。(続く)
きのう、買い物帰りに、一本違う道を抜けようとすると、広い庭のお宅の門近くの樹にハシゴをかけてを剪定しているのに出会った。見上げると黄色い花をいっぱいつけていた。「立派ですね、なんの木ですか」と尋ねると「ミモザ」という。ミモザってこんな大きな木になるのか、とびっくりしてしまった。灌木のイメージが強かったのだが。道に落ちた枝を拾って「いい香りもしますね」「お持ちになりますか、どうぞ」ということで一枝いただいた。
初出:「内野光子のブログ」2024.3.4より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2024/03/post-4eaec8.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion13590:240305〕